ビールがうめぇ


20歳、酒が飲めるようになったとはしゃいで飲んだビールはやっぱり苦かった。幼少期は幼心に「何がそんなにいいんだろう」と、両親が酒屋でケースのビールを買ってる間に考えたりした。


人の顔を伺って生きる私は「乾杯はビール」という日本文化にもなりえない風習に従順であった。
大学生のうちは新歓でも打ち上げでも、まずはビールを何食わぬ顔で飲んでいた。全然飲めます、みたいな顔して。

本音を言うと、早く甘い飲み物が飲みたかった。
次のジュースのためにただただ苦いビールを飲み干す時間はタスクでしかなかった。
カシオレとかがいい。お金払ってんだから甘くてうまいジュースを飲ませてほしい。もっというとカルーアミルクとかがいい。コーヒー牛乳好きだから。ていうかコーヒー牛乳でいい。ずっと。時々ココアと、ジンジャエールとコーラくれれば。たまにはファンタも飲みたい。エナジー注入しなくていいからモンスターとか毎日飲みたい。エナジー注入するから毎日飲むわけにはいかないんだけど。あの味好きなのよ。

ていう価値観で大学を卒業。
ポケモンも好きだし、デジモンも好きだし、女遊びはしないし、私はこのままクソガキで死ぬのか。棺桶にキャラクターばっかりだったら恥ずかしいな。途中から大喜利されちゃうよ。ナゲキとか入れられちゃうよ。

だが、そんな私24歳、革命が起きる。
今でも鮮明に覚えてる。
事務所ライブのネタ見せのあとだ。
パープルナンバーのこーたさんが飲みにでも行こうや、と誘ってくれた。なんの気なしにってやつ。そのままシロクマズのコーダイさんとドリルフィンフィンズの高橋と、四人で中目黒にある中国人のおばちゃんが店員の居酒屋に入った。二階だった。さんまが出てた時期だから秋かなぁ。
いつもの流れでまずはビール。
いつもの気持ちでしれっと飲んだ。

このビールがなんでか、愕然とするほどうまかった。

別にプレモルとか、エクストラコールドとかでもないのに!ものすごく運動をしたわけでもないのに!何の変哲もない居酒屋なのに!
あ!これが!!ビールのうまさか!!!って。感動した。
やっぱそのあとも楽しかった。
なんだったんだろう。あれ以来行ってないからわからないけど。
これが私と本当のビールとの初めての出会い。

そして、先日二回目の出会いがあった。

いや、これはもはや出会い系といってもいいぐらい出会える手法なんだが。

銭湯の登場だ。

(すみません。今回実は銭湯の話でした。)

武蔵境駅でもみあげ(風呂仲間)と合流。
21時もすぎていたので土着のお店はラストオーダーも終わりがち。チェーン店ばっかり手招きしてくる。致し方なく飯を食わずにまずは風呂へ。こうなったらもう汗を死ぬほど流して、安いものをうまく感じるコンディションを作るしかない。知恵とは恐ろしいものだ。

「境南浴場」
と、でかでか看板を掲げた銭湯へ。ビル型のようだが煙突もある、珍しい形。
白めのロッカーを通り、浴室へ。
壁画は変わったタイルの絵。鳳凰かなぁ。
ゼルダの伝説みたい。

お風呂の種類は薬湯、座湯、普通風呂、水風呂、サウナ。

ここ半年ですっかりサウナ―、交互浴ァーになったので、水風呂があるとこでは交互浴をしないとね。
交互浴のみの時は18度くらいの水風呂がちょうどいい。
お風呂は40度と42度を用意しといてくれたら最高。
境南浴場はその点うむ、ちょうどいいのかもしれない。いいぞ。みるみるチェーン店を迎える舌になってきてる。

2セットやってカラッと搾られた私ともみあげは、コントで使った白いバスタオルで体を拭に外へ。ちょうどコントでバスタオルを使ってよかった。というか、水風呂のコントをやったんだった。この日はもう12時間以上風呂のことばっかやってたんだな。


チェーン店まみれの武蔵境に一瞥をくれて、チェーン店の日高屋へ。
大丈夫俺の喉はもうからっからだ。

実は銭湯好きを歌っていた私だが、聖番組「昼のセント酒」を試したことがない。昼から風呂にはいって、風呂上りのコーヒー牛乳を我慢して、近くの渋めな居酒屋でビールとおつまみを食らう。これがいわゆる昼のセント酒。
既出の通りビールに執着のない私には縁のない話だった。

しかし、さぁ、今日はもうビールの体勢になっている。
一回やってみたいと思ってた。
チゲラーメンとビールを頼む。やっすいビールさ。全部がでがらしみたいなもんだ。

きた。
体ができあがっているとビールも金色に見えるもんだ。

飲む。

久しぶり、ビール。

再会だよ。

中目黒以来。

快感だった。えげつない。
これがセント酒。こりゃうまいわ。だって日高屋のビールでこんなにうまいんだよ。ちょっとこだわったら昇天しちゃうんじゃないの。いやぁすごい。
これはやっちゃうな。
一度知ったらもう戻れないかもしれない。
460円に290円のビール、計750円で最高。たまらない。
次は昼やろう。

だいぶスピンオフしたが、これが私の二回目のビール。
かつて嫌悪感を抱きながら飲んでたビール。今や私はもう一度ビールに会うためにビールを飲む、そんな段階に入った。ガチャと一緒だ。飲んでみたら素敵な出会いがあるかもしれない。ハードルが上がっているだけに再会は難しいが価値のあるものに違いない。
こんなになるとは思わなかった。たった5年で嫌いだったビールを好きになるなんて。

ビールはうめぇ。
将来子供ができたとして、その子の初ビールは、カラッカラに絞ってから中国人のおばちゃんに出してもらったビールにしよう。

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