ひどい酔っ払いに会った話


昨夜、新橋のとある居酒屋で、ここまでひどいのはなかなかいないってレベルの、クソみたいな酔っ払いに出会ってしまいました。

そこはテレビなどで何度か「激狭の名店」って紹介されたこともあるような、カウンターだけの小さなお店で、おじさんが2人で働いています。先客はなし。

店内はBGMもなく、すごく穏やかな気持ちで飲んでいたら、いきなりガラッと戸が開き、

「ここ安い? なんか高そうだな〜。おじさん顔が怖いもん!」

と、あきらかに酔っ払った、40代くらいのサラリーマンがひとり入ってきました。
小太りで、身長は意外と高く、メガネをかけていて天然パーマ。
どでかい旅行用キャリーバッグを持っています。

この時点で、怖いと言われた(実際はとても優しい人だった)店員さんはちょっと不機嫌そう。
しかしもうひとりの店員さんはめちゃくちゃ人が良く、ニコニコしながら「そんなことないですよ。メニューを見てくださいよ」とフォローしてあげてました。

席に着くと、そのメニューも見ずに「一番安い酒くれ!安い酒」と最悪の注文。

熱燗を出してもらい、次にナマコを頼んだんだけど、なんと一口食って

「まずい!」

とカウンターに突き返した。

「俺はまずい時ははっきり言うからね」

だって。
こりゃあひどすぎる。

僕はお通しのあん肝や、お刺身なんかを頂いてましたが、どれもびっくりするくらい美味しく、ナマコだけがまずいなんてありえません。
きっと自分の知らない味付けだったとか、「まずい時ははっきり言う」って言いたかっただけとか、そんな感じでしょう。

「なぜここまで無礼で店員さんの気持ちを考えない行動が取れるんだろう?」という大変腹立たしい気持ち9割、「こんなひどい酔っ払いはなかなかいないので、ニヤニヤと最後まで見守りたい」という気持ち1割。
この1割に押される形で、僕はそいつが帰るまでここにいようと決めました。

その後は無難な煎り銀杏を頼んで、店じゅうに響きわたるほどクチャクチャいわせながら食う。

キャリーバッグが店員さんの動線にあり「ちょっと移動させてもらっていいですか?」と聞かれると「勝手にやって。なに? 俺がやると思った? 俺はなにもやらないよ!」と悪態をつく。

もちろんこっちにもちょこちょこ絡んできて、そのたびに人のいい店員さんに気を使わせる。

など、はっきり言って、悪酔いのデパートです。

お会計の時も「高いな〜」と文句を言いながら払ってましたが、酒は残してる、ナマコは食ってない、ほとんど銀杏しか食ってないんだからそりゃそうだろ!って感じ。

余計なお世話ですが、こんな調子じゃ友達もあまり一緒に飲みたがってくれないだろうし、生きてて楽しくないことも多いだろうし、なんだかかわいそうにさえ思えてきました。

最後は「俺は左遷されて出張で東京に来てるんだ。“左遷の福島”と覚えてくれ!」と捨て台詞を吐き、夜の街へと消えていったんですが、いいよ名乗らなくて!

その後、店内に妙な一体感が生まれたのは言うまでもありません。


左遷の福島……。

覚えたくもないのに一生忘れられないワードが、ひとつ増えてしまったよ。

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