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❿ おいしい雑念 『とんとん亭』 秋葉原

パークギャラリーに暮らして4年半になる。食事したりテレビを見たりするのは2階。さらに屋根裏部屋みたいな小さな部屋があってそこに部屋の半分を占める大きなデスクを置いて、仕事をしたりデスクの下で寝たりしてる。もうすぐ40になるのに何してるんだろうと思うけれど、秘密基地にいるみたいで気に入ってる。

住所は千代田区。23区で1番人口が少ない町。家の目の前は THE・秋葉原なのでスーパーに向かう途中メイドの客引きに合うという特異なエリア。町はいつも観光客であふれかえっていて、引っ越してくる前はすごく憂鬱だったけれど、いざ引っ越してみるとアクセスはいいし、いろいろな飲食店、しかも人気店がたくさんあるし、ヨドバシもドンキもある。そして何より近くにある日本三大祭でもおなじみ神田明神の氏子としての町会(末広町会)のつながりもあって、派手な町だけれど昔ながらの小さなコミュニティによる世代をこえた近所付き合いもあるので、みんなで神輿も担げば飲みにも行くし、旅行に行ったり、馬鹿話したり、楽しく暮らしてる。こういうのは世田谷に住んでる時にはなかったからうれしい。

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神輿係として舵を取る俺
(写真:熊谷 義朋)

おいしい定食が食べれる店ないですか?

カレー、ラーメン、寿司、イタリアン、フレンチ、焼肉、そば、うどん etc... 人気店がひしめき合う秋葉原エリアだれけれど、「おいしい定食」となるとなかなかの難題。しかもこの場合の『定食』はいわゆる『定食』ではなく、昭和の風情漂う、人情味あふれる『町の定食屋』のこと。例えばテレビがついてて、新聞や漫画本が並んでて、メニューも豊富で、昼間から地元のおじさんが瓶ビールを飲んでるような、そんな定食屋さん。

秋葉原駅は大きいので、反対側に行こうと思うと10分くらい歩くことになる。パーク側は電気街と呼ばれるがヨドバシカメラを挟んで反対側はオフィス街になる。飲食店が多く、よく足を伸ばす。中でも上記の条件をしっかりと満たしてくれる老舗の定食屋『とんとん亭』は外せない。

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おいしい雑念
定食屋『とんとん亭』(秋葉原・岩本町)
パークから徒歩15分
★★★☆☆

この外観で、入ろうか、やめようか、ふるいにかけられる人もいると思うけれど、迷わず選んでいいと思います。

組み合わせで悩む幸せ

「いらっしゃい」という明るい店員さんたちの声。案内されるがままに席に着く。大きなテレビの前は特等席。ランチはこんな感じで、組み合わせを楽しむ。

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店内のメニューがさらに迷わせる。
組み合わせで悩む幸せ! 

頼んだ後でさえ「あっちだったかもしれないな…」「隣のひとはアジフライだな…」と、おいしい雑念 が頭の中をぐるぐるまわる。南無ッ。


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この日は不思議と迷いなく『焼肉+メンチ+目玉焼き』。1つ悩んだことがあるとすれば「ごはんを少なめ」にして「瓶ビールを頼む」かどうかだけれど、今日は天気もいいし白米に集中することにした。うしろのおっさんがとんかつをアテにビールをおいしそうに飲んでる(ちなみにとんとん亭、夜は居酒屋になります)。

コロナの感染者数が急激に増えたというニュースを見ながら、ぼうっと待つ。スマホをいじったりはしない。


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焼肉+メンチ+目玉焼き

焼肉は豚の生姜焼き。定食には酒好きに優しいしじみの味噌汁。小鉢は日替わりで肉じゃが。そして無限しば漬けが出てくる。ひたすら濃い味付けでごはんを進ませるだけの生姜焼きが多い中、とんとん亭の生姜焼きはどこか上品。豚の香りがしっかりと引き立つような、噛めば噛むほど脂の甘さが伝わってくるようなつくり。疲れないように、食べ飽きないようにという常連客への思いやりさえ感じる。そして割り箸が折れてしまうんじゃないかと思うほどサクサクに揚がったメンチ。肉がたっぷり詰まってるのでソースをたっぷりかけていただく。ソースの強い味にまったく負けない肉が白米と絡み合う。複雑になった口の中を、味噌汁で洗い流す。

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目玉焼きは迷わずオンザライス

夢中のまま食べて、食べて、そして食べ終わる頃にはコロナ感染者数のニュースがいつの間にか新潟の大雪を知らせる中継になってた。

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ぼくがこうして定食を食べている間に、誰かがコロナに感染して苦しんでる。誰かが雪かきをしてる。でも案外どうでもいいと思ってる自分もいる。きれいごと抜けば、多くのことは他人事だ。おばさんがついでくれた水を一気に飲み干す。店を出ると犬に吠えられた。

思えば『とんとん亭』は、この町に引っ越してきてはじめてみんなで行った店だった。昼間から飲める店を探して、秋葉原をウロウロしていた。チェーン店じゃあ納得しない連中だから、『とんとん亭』の前を通った時に、みんなで目を合わせた。「ここだ」と。

アジフライに肉じゃが、鯖の塩焼きなんかを頼んで、テレビにヤジを飛ばしながらみんなでビールを片手にいろいろな料理をつつき合った。こういう店があるなら、秋葉原に住むのも別に悪くないな。と思ったのだ。


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おわり

パークギャラリーに居るひと
加藤淳也(insutagram

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