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失われた森を9,000年間持続する森へ再生させる「春の植樹祭」


内装設計、インテリアデザイン、外構、ランドスケープを中心に、室内緑化を強みとしているわたしたちparkERs(パーカーズ)。場づくりをするわたしたちにとって、プロデューサー、空間デザイナー、設計監理、メンテナンス、バックオフィスのメンバー含め欠かせない重要なメンバーばかりですが、parkERsならではの特徴的なチームというとプランツコーディネートチームです。

都市生活者に植物の文化を運び伝えたい」という想いを掲げ、空間づくりの際のデザインコンセプト、植栽の品種提案や配置はもちろんですが、植物以外にも他の自然の様々な要素をデザインに取り込んでデザイン提案をしています。
さらに、産地さんの開拓をはじめとした様々な植物の専門家とのネットワークを広げてその専門的な知識を深め、そのつながりを活かして都市と森をつなげるフィールドワークを企画するなど、幅広い活動をしているチームです。

プランツコーディネートチームの仕事や活動についてはこちらから。


2022年はそのチームの強みをさらに磨き、より広い知識を身につけ空間デザインの深掘りし、植物やランドスケープについて多角的な視点から学び、都市と森における植物のあり方を探る全6回のフィールドワークを計画しています。

どの取り組みも、

1. わたしたちparkERsの魅力をお伝えし、ファンを増やしていくこと
2. parkERsがデザインする時に大切にしている「公園のような心地よさ」
   を探求すること
3. 都市と森をつなげること

につながる活動になっています。
第一回目となった「植生管理士の西野さんと見る都市のランドスケープ」の様子はこちら。


一度は人の手によって壊された森を、人の手で再生する

第二回目となるフィールドワークは「春の植樹祭・森林再生活動」です。

2009年から13年間続いている神奈川県・湘南国際村めぐりの森の植樹活動「第22回湘南国際村めぐりの森植樹祭~宮脇昭先生 追悼植樹式~」が2022年5月8日に開催され、植樹祭グループリーダーを務めるプランツコーディネートチームとparkERs有志メンバーが参加してきました。

今回はプロデューサー、デザイナー、設計監理、植栽のメンテナンスなどを担当してくれているグリーンライフチーム、とそれぞれ担当も業務も異なるメンバーが揃いました。さらに、わたしたちparkERsの活動と植樹祭にご賛同いただいたparkERsのお客さまもご参加いただきました。

parkERsメンバーは家族や友人たちを誘って参加
500人を超える参加者が集まり、開会式がスタート

開会式では、主催団体理事、環境省自然環境局局長や協力企業の代表のみなさまのご紹介とご挨拶などが終わった後、主催団体であり、グループ長の非営利型一般社団法人Silva(シルワ)代表理事・植生管理士 川下都志子(かわした としこ)さんからこの日の植樹方法についての説明があり、閉式後はグループに分かれて、それぞれが担当する植樹エリアへ移動しました。

いざ、今回の植樹地へ
今年の植樹地はなかなか立派な急勾配でしたが
子どもたちは元気に駆け登っていきました
作業に比較的慣れているはずのparkERsメンバーも
急勾配を登りながらの苗運びはさすがにきつかった模様
親子で参加された方も多くいらっしゃいました。
子供たちが大人になる頃にはこの森もかなり育っているはず。

この植樹祭では、生態学の権威・宮脇昭先生が考案された混植・密植植樹方式で植樹しています。

この植樹方式では、植樹地を事前に調査し、その土地にある植物「自然潜在植生種」を数種類(今回は30種類)を選定。成長した時に原生林に近い植生を植えていきます。そして、通常の植樹のようにある程度成長した樹木ではなく、遺伝子撹乱を防ぐために関東圏内で育てた苗木を使用するので、運搬が楽になるだけでなく、根を痛めることも少ないので植樹地の環境に順応しやすくなるメリットもあります。さらに、この苗木たちをあえてランダムに密集させて植えます。自然に近い状態に近づけることができ、通常よりも早く土地本来の森林を再生することが可能になります。

成長した時の生態系が強く豊かで持続可能なものとなることや育成・運搬コストのカットなどメリットは色々ありますが、この植樹方式の最大の利点は成長の早さ。通常、土地本来の森林が育つまで200〜300年はかかると言われていますが、混植・密植植樹方式ではわずか20〜30年で森林を形成することができるそうです。

同じ種類が隣合わせにならないよう気をつけながら
   1平米に6〜8本程度の苗を植えていきます

最後に、苗木を保湿保温し、分解後は栄養となる藁(わら)をマルチングとして敷いて植樹は完了。

木札に「森になれ」という想いを込めて

今回の植樹祭ではタブノキ、トベラなどこの土地本来の植物(潜在自然植生種)30種類の苗木2,511本が植樹ボランティア529名の手で植樹されました。

520名を超える参加者全員での集合写真は圧巻!


この苗木たちが自然に再生していくまでの数年間は人の手によって再生のお手伝いが必要ですが、その後は人の手を介する必要のない、持続可能な森へと育っていきます。

2019年春の植樹地。
数年間は人が手助けする必要がありますが、3年間でここまで成長します。
2017年春の植樹地。
5年経過した植樹地はとどこが植樹されたのかわからないほどに成長していました。


森の再生をお手伝いし、都市と森の距離を縮める森レンジャー

植樹ボランティアのみなさんの手によって春の植樹祭は無事終わりましたが、グループリーダーのみなさん含め、裏では多くのボランティアのみなさんが事前準備から後片付けまでしてくださいました。

植生景観の復元のスペシャリストである「森林再生指導員」の資格を持ち
今回グループリーダーも務めたプランツコーディネーターの森大祐さんと花田美晴さん

「森林再生指導員」とは、植生景観の復元のスペシャリストのこと。Silvaさんが認定している緑化対象地の地形・地脈を把握し、土地本来の植生を理解し、開発により失われた古来の森を再生指導する事の出来るアドバイザーです。詳しくはこちらから

早朝の準備から最後の片付けまでしてくださったチームSilvaボランティア、森林再生指導員の
みなさま、parkERsプランツコーディネートチーム。本当にお疲れさまでした!


実は、春と秋の植樹祭以外にもparkERsではプランツコーディネートチームを中心とした有志メンバーは2018年から月に一度、湘南国際村めぐりの森の再生のお手伝いを「森レンジャー」と命名して活動してます。

「そだ」を作るために落ちた枝を拾い集めるメンバー

Silva代表の川下さんのご指導のもと、春と秋の植樹祭を開催するための下準備、 過去に植樹した苗の成長を促す作業などを行なっています。これは年に二度の植樹をイベントに終わらせることなく、森の再生を促し、数年後には人の手を介さなくても未来へと続く、持続可能な森へと成長するための大切な活動です。

拾った枝を麻紐で縛って「そだ」が完成。これを敷いて植樹祭のための山道を作ります。
炭を植樹地に撒き、フォークで土を起こしながら土となじませる作業。
同時に固い土壌もほぐれるので、植樹しやすくなります。

parkERsはどうして森の再生活動をするのか」という熱い想い、具体的に行なっている作業についてはこちらから。

もちろん、森の再生活動に参加しているのはparkERsだけではありません。

Silvaさんでは、こうした森の再生をサポートする「Silvaボランティア隊」を募集しています。ご興味のある方は参加してみませんか?
ボランティア募集についてはこちらから


parkERsのプランツコーディネートチームは、森レンジャーとしての活動を通して植物や森について学ぶだけではなく、植物をはじめとした自然の要素を取り入れた空間とその空間で生まれる豊かな時間をご提案・ご提供するparkERsとして、未来につながる森を作っていくことの大切さを多くの方に広め、都市と森の距離を近づけていくことも大切なミッションだと考えています。



次回のフィールドワークは少し先になってしまいますが、パートナー企業さんの温室へお邪魔して、観葉植物の生産地訪問を予定しています。生産地訪問はいつも多くの学びや予想もしていない気づきがあるので、いまから楽しみにしています。