見出し画像

新・<人工知能>開発ロマン Vol.1

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

はじめに

フリーマン・ダイソンは、彼が著した<多様化世界>において、生命体であることの定義を次の通りに記述している。「生細胞には二つの基本的な機能がある、それは代謝と複製である」、と。私は、この定義こそが人工知能を創造するうえにおいて、最も重要なキーテクノロジーになると直感している。つまり、人間をはじめとする、あらゆる生命体の日常活動そのものが知識的で神秘的であるとするのは、我々人間が勝手に決めつけているだけの事柄であり、その事柄自体には知識性も、まして神秘性も存在してはいない。ただ、そこには種の存続や継続を担うための機械的な営みが存在しているだけではないかとする直感である。

続けて代謝を定義したい。代謝は摂食と消化と排泄を意味することである。つまり代謝は、化学的部品を絶えず更新することによって細胞を保全していく働きであり、細胞外から取り入れた原材料を細胞の存続に必要な物質に変換する作業の継続である。また、複製の定義として、複製は細胞が自己増殖できるように分子の正確な複製をつくることであると定義している。さらにこの定義は続く。『生命を持つということと複製するということは、事実上同じ意味である』と。つまり、自己増殖は細胞レベルで行われる事柄であり、複製は分子レベルで行われる事柄なのである。違いは一つである。細胞レベルで行われる自己増殖は、正確な複製能力を持つことにより発生する事柄ではなく、成長し分裂して統計的な仕方で近似値的に自己増殖することであり、複製は、細胞が自己増殖できるように分子の正確な複製をつくることである。自己増殖と複製とは同じ意味を持つ言葉ではない。複製が分子レベルで行われたうえで細胞が自己増殖している状態と、複製が分子レベルで行わることなく細胞が自己増殖している状態とは、見かけは同じでも、その真実は、あきらかに異なる状態なのである。

この点については、さらに後述したい。私の新・<人工知能>開発のロマンは、この代謝機能をコンピュータにおける電力消費とし、複製機能を磁気認識と定義したうえで、統合的な生体アルゴリズムを展開してみたいと考えているのである。あくまで生物機械論、及び人間機械論の実証システムの構築である。当然のことであるが、生命体は、この生体アルゴリズムを忠実に実行している。代謝機能を実現するものとして、エネルギー運搬体として機能するATPが存在し、複製機能を実現するものとして、遺伝子情報の記号体として機能するAMPが存在し、さらに自己増殖機能として、AMPの構成体であるRNAがヌクレオチド集合体として存在している。

これらの事実を、コンピュータに置き換えてみると次のように仮定できる。ATPを電力とすればいい。もちろん、この場合は主に駆動系に使われる電力である。AMPは、その電力によって生成されるプラスマイナス状態(磁力)である。そして最期のRNAはAMPの構成体であり、プラスマイナス状態を集合化(磁気認識)させた状態であるとする。コンピュータにおけるATPとAMPとRNAの違いは、ごくわずかなものである。すべて電力の利用形態の違いにしかすぎない。それは生命体におけるATPとAMPとRNAの違いのようなものである。ちなみに生命体におけるATPとAMPの違いは、AMPは、ATPからリン酸イオンが2個取り除かれた以外は、同じ構成要素を同じ配列で含んだ化合物であると定義されている。RNAはAMPの集合化物でしかない。

(つづく)


・・・・・・・・・・

【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等


この記事は素晴らしい!面白い!と感じましたら、サポートをいただけますと幸いです。いただいたサポートはParoleの活動費に充てさせていただきます。