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"スロートレーニング”で若年者の脳機能も鍛えられる

▼ 文献情報 と 抄録和訳

健康な若年成人を対象とした、ゆっくりとした動作と緊張性のある力の発生を伴う低強度レジスタンス運動と高強度レジスタンス運動の後の認知抑制制御の類似した改善:予備的研究

K Dora, T Suga, K Tomoo, et al.: Similar improvements in cognitive inhibitory control following low-intensity resistance exercise with slow movement and tonic force generation and high-intensity resistance exercise in healthy young adults: a preliminary study. J Physiol Sci. 2021;71(1):22.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar

[目的] 本研究では、ゆっくりとした動きと緊張感のある力の発生を伴う低強度レジスタンス運動(ST-LRE)と高強度レジスタンス運動(HRE)が、運動後の認知的抑制制御(IC)の改善に及ぼす効果を比較した。

[方法] 16名の若い男性が、クロスオーバーデザインでST-LREとHREのセッションを受けた。両側の膝伸展筋のST-LREとHRE(8回/セット、6セット)は、それぞれ1回の最大収縮速度の50%の遅い収縮速度で、1回の最大収縮速度の80%の通常の収縮速度で行った。ICは、ベースライン、運動前、運動直後、および運動後30分の回復期間中の10分ごとの6つの時点で、カラーワード・ストループ課題を用いて評価した。

[結果] 実験期間中の血中乳酸値は、ST-LREとHREの間で差がなかった(条件と時間の交互作用P = 0.396:例:運動直後はそれぞれ8.1±0.5 vs. 8.1±0.5 mM,P = 0.983,d = 0.00)。ICが向上したことを示す逆Stroop干渉スコアは、ST-LREおよびHREともに、運動後30分の回復期間中、運動前(すなわちベースラインおよび運動前)に比べて大きく減少した(減少率≧38.8%および41.4%、いずれもds≧0.95)。運動後のIC改善の程度は、2つのプロトコル間で同様であった(条件と時間の交互作用 P = 0.998)。

[結論] 健康な若年成人では,より低い運動負荷をかけているにもかかわらず、ST-LREはHREと同様に運動後のICを改善することが示唆された。これは、2つのプロトコル間で血中乳酸反応が同等であることに起因すると考えられる。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

ICの説明も含めて、本研究のintroductionを一部抜粋する。

認知機能には、実行機能を含む様々な能力がある。実行機能は、主に抑制、シフト、更新などの認知的下位要素によって特徴づけられる高度な認知機能である。抑制性制御(IC)は、特定の実行機能であり、内的または外的な刺激に反応して行動を抑制することと定義される。抑制性制御は,認知処理中に要求されていない行動が実行されるのを防ぐために必要である[11]。したがって,ICはすべての認知処理に重要である[12]。
これまでの研究では、複数の種目(レッグプレス,ベンチプレス,ラットプルダウンなどの組み合わせ)を含む全身レジスタンス運動の急性発作が、健康な若年者だけでなく、高齢者や慢性疾患患者(軽度認知障害など)においても、運動後のICを向上させることが報告されている。~中略~ 一方、単関節の動きで行われる局所的なレジスタンス運動(例えば、膝伸展のみ)では、限られた筋群しか使われない。そのため、全身のレジスタンス運動と比較して、局所的なレジスタンス運動は、レジスタンス運動による特異的な筋刺激が運動後の認知機能に及ぼす根本的な影響についての理解を深めるのに役立つと考えられる。

まず改めて、若年者も高齢者も、「脳を鍛えるなら運動しかない!」である。

また、ST-LREは「スロー法」や「スロートレーニング」とも呼ばれ、昨今様々が研究がなされている。私たちはなんとなく、「ゆっくり運動してください」と指導してしまうことがあるが、何故ゆっくり行った方がよいのか、どの程度の頻度・負荷がよいのか、スロー法を通して学んでみると面白いかもしれない。

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