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ちむぐりさ

あらためて、安倍晋三元首相の死に哀悼の意を表し、ご遺族の上に主よりの 慰めを祈ります。事件から一週間経ち、事件の背景が明らかになってきました。これはいち宗教者として書いておかねばならないことがあると思いました。皆さんご存じのとおり容疑者の40代の男性の母親が、宗教団体「統一協会」の信者であり億を越える金額を拠出した結果、家庭が崩壊してしまった。その恨みによる犯行だと供述しているようです。

統一協会による被害がどれほど悪質であるかは、他に詳しく書かれている方がおられますから、ここで詳しくは触れません。私の友人にはこうしたカルト宗教からの脱会や家族からの相談のために奔走している牧師たちがいます。そして先日会見を開いた全国霊感商法対策弁護士連絡会の先生方も戦い続けてこられた方です。しかしこうした民間の草の根レベルだけでどうにもならないほど、敵は強力すぎるのです。

同連絡会の川井康雄弁護士は「山上容疑者の母親が旧統一教会に多額の献金をし、家庭を崩壊させられたことへの恨みが今回の事件の動機であるという報道が事実だとすれば、(山上)容疑者の母親の常軌を逸した旧統一教会への献金を始めとした忠実すぎる活動のために、どんなに苦しんできたことでしょうか。当会としては、かねてよりこのような実情について心から憂えてきたこと。その意味で、山上容疑者の苦悩や教会に対する憤りも理解できる」かつてこの連絡会では、安倍元総理に統一協会との接触を慎むように要請しましたが、安倍さんは要請書を受け取らなかったそうです。

統一協会と安倍さんとの関りは、お祖父さんの岸信介さんがかなり深く関わっていたようです。しかし日本国民をターゲットにして財産をむしり取るような団体のイベントに祝辞を贈るなどは「詳しく知らなかった」で済まされることではないでしょう。
安倍さんは「美しい国」づくりを目指して「国民の安全と平和を守る」ことをよく口にされていました。ならばこのような団体の存在を看過しておくべきではなかったでしょう。統一協会との戦いの最前線に自ら立つ姿勢を見せていただきたかった。それが自分の政党にここまで深く染み込んでいたとは…(私も聞いたことはありましたけれど)。

沖縄には「ちむぐりさ」という言葉があります。あなたが悲しいと私も悲しい、そういう魂の共感を意味する言葉です。イエス・キリストという方はこの「ちむぐりさ」に生きた方だったと思います。この世界の片隅で地獄のようなところに追いやられている人々のもとに駆け寄りともに涙を流される…それがイエス・キリストです。「お前は罪にまみれている!」と脅しにかかる怪しげな宗教とは明確に異なります。

安倍さんにとって、国民が財産を、生活を奪われ、家族が崩壊してしまう…そんな悲惨な状況に「ちむぐりさ」の思いに至らなかったのでしょうか。国民の命や暮らし以上に総理として守るべきものがあるのでしょうか。弁護士たちの呼びかけを無視しても安倍さんが「守りたかったもの」とは何だったのでしょうか。殺人という暴挙はどう考えても容認できません。ですが、安倍さんがカルトの被害を受けた人の声に真摯に向き合っていれば、この事件は起きなかったのではないか…そう思えてなりません。

いま国会がやるべきことは「弔い合戦としての憲法改正」でもなければ「国葬」でもありません。今回の殺人の発端となった統一協会との政治の決別です。すべてはそれからです。


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