今年読んでよかった本2023

こんにちは、しろです。
早いもので12月。今年もAdvent Calendarの季節がやってきました。
いつもどおり何を書こうか決めずにエントリーしたのですが、今回はベタに今年読んだ本を振り返ってみようと思います。


特許部門

特許法における進歩性要件

「進歩性」に関する日本・米国・欧州・ドイツ・中国の審判決例約2400件を分析した超労作。
ボリューミーすぎて実はまだ読み切れていません(汗)

本書は、理論(法理論に基づく考察)と実務(審判決例の分析)の両側面から「進歩性」についてガッツリ論じています。
特に分析編で取り上げられている「確かに誰もがなかなか容易に思い付かないのであるが何の役に立っているのかよく分からない発明の取り扱い」という論点が非常に興味深かったです。
これは実務でもよく気になるところで、現在広く使われている進歩性判断フローに沿ってロジックのみで判断した場合、上記のような発明の進歩性を否定することは容易でないように思います。
本書では、進歩性の本質を、引用発明から本願発明に容易に思い付くかという「非容易推考説」と、先行技術に対する発明の貢献を評価する「技術的貢献説」の両方に求める仮説を提示しており、この視点で各国の裁判例を体系的に分析しています。
この整理は、自分が何となく感じていたことをズバリ言語化してもらえた感があり、非常にしっくりきました。

統計分析の日本編(第II部第2章)と日本法への提言(第III部第2章)を読むだけでも日本実務的には十分に有益ですし、国ごとの考え方の違いもめちゃめちゃ面白いです。
進歩性の深淵を覗きたい皆さまは、冬休みの課題図書としてぜひぜひ!(高いけど)

知財戦略部門

「見えない資産」が利益を生む GAFAMも実践する世界基準の知財ミックス

デロイト出身で、知財コンサルティング会社を経営されている鈴木さんの本。
文章はめちゃめちゃ読みやすいんですが、提案されている「知財ミックス×ビジョン経営」はかなり高度なコンセプトだと思います。
その点、実例をたくさん挙げつつ、第5章では具体的な手法論を説明してくれているので、とても助かります。
また、これまで詳細が知られていなかったと思われるApple社の知財部隊の組織構造についての解説も必見です。

ちなみに、初読時は「知財ミックス」のイメージを正しく掴めないまま読み進めてしまったのですが、本書でいう「知財ミックス」とは、単に複数の知財を掛け合わせることではなく、p.23に定義されているように「先読み」「持続可能な価値」「仕組み化」といった概念を含む言葉と理解するのが良さそうです。

ビジネス部門

The Art of Marketing マーケティングの技法 パーセプションフロー・モデル全解説

中小規模のお客さんの相談に乗るときは、個々の発明の話だけでなくビジネス全体の話になることも少なくありません。
たとえば、知財予算も限られているので、特許出願もビジネス上重要なポイントに絞る必要があり、その辺りをアドバイスするためにはお客さんのビジネスモデルの全体像を把握する必要があります。
また、自社製品を広めようとするときや、新規事業を立ち上げるときには、マーケティングの視点も欠かせません。
今年は、そうしたビジネス系の本をいくつか購入して、少しずつ勉強し始めた年でした。

その中で一番よかった本がこちらです。
「自社ブランドを誰にどうやって届けるのか?」を考えるために役に立つ本として紹介してもらいました。

この本で解説されている「パーセプションフローモデル」は、顧客が自社製品を認知してからファンになるまでを示したフローを書いて、各段階から次の段階に移行するための知覚刺激を考え、その知覚刺激を引き起こすのに最適なメディアを選択する、というものです。
モデルの使い方をめっちゃ実践的に説明してくれるので、読みながらモデルを書き上げることができます。
また、単にモデルの書き方を解説するだけではなく、マーケティング活動におけるポイントやノウハウが詰め込まれていたので、「マーケティング」そのものの理解も捗りました。超オススメ!

小説部門

正体

ここからはもう知財もお仕事も関係ない、ただの趣味のお話です。でも今年は全然小説読めてないんだよなあ。。。
そんな中で印象に残ってるのがこちら。

一家惨殺事件の犯人として死刑が確定した青年死刑囚が脱獄したというニュースから物語は始まります。
その後は、いかにも「それ」っぽい正体不明の青年のエピソードが、いろんな土地、いろんな人の視点から語られていきます。半ば連作短編小説のようで、文体もとても読みやすいのでサクサク読んでしまいました。
そして次第に明らかになっていく青年の正体と目的。

読後は実に情緒が乱され、とても良き。

漫画部門

山田くんとLv. 999の恋をする

2023年は個人的に恋愛漫画に盛り上がった年でした。
中でも一番撃ち抜かれた作品がこちら。
アニメの最終話で気絶して、気がついたら全巻ポチってました。

最近恋してない人、イケメンが好きな人、塩対応の男子高校生が好きな人、男子高校生×女子大生が好きな人には超おすすめ!!!!!
ネタバレを踏む前に読みましょう。

なお、題材はネトゲですが、そこはあまり重要ではないです。


ということで、しろさんに今年刺さった本の紹介でした。
明日はじゅんぬさんです!

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