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カーネーションのリビラビ再現ライブを観た

2023年5月21日。
大阪・梅田TRADにてカーネーションの『LIVING/LOVING』再現ライブを観てきた。
このアルバム『LIVING/LOVING』(2003年リリース。以下、リビラビ)は、カーネーションが5人組から3人組になった最初のアルバムであった。

カーネーションは1997年のアルバム『Booby』の頃からリアルタイムで聴いていた。楽曲・歌・演奏がいいのはもちろん、大人のカッコよさと遊び心が同居した同アルバムにハマり、それ以降は過去のアルバムも聴きつつ新譜が出るのを楽しみにしていた。5人編成時の代表曲に「イッツ・ア・ビューティフル・デイ」(1995年)がある。


2000年の『LOVE SCULPTURE』以降、ヴォーカル/ギターの直枝さんのソロアルバムが出たがバンドの次のアルバムのアナウンスはなく、2002年にギターの鳥羽さんとキーボードの棚谷さんが脱退したことも知らなかった。盤石の5人だと思っていたので、かなりびっくりしたのを覚えている(この頃はまだパソコンも持っておらず、ネット環境が貧弱だったのが大きい。『リビラビ』が出るというのもメンバーの脱退も多分音楽雑誌かフリーペーパーの類で知ったと思う。)。



東京公演の方が先だったので、なるべくTwitterでもそのレポの類を見ずに臨んだ(曲順通りにやらない、というのは公式のツイートを見て知ってたけど)。
1曲目は何かな?と思ったら、アルバム終盤に置かれたバラードナンバー「Used Car」のインストversion(メロディはチェロで奏でられている)。
意表を突かれた所にエモい(と敢えて言う)オープニングナンバー「やるせなく果てしなく」が来て、早くも感極まる。。

この曲を初めて聴いたときは、骨格むき出しの演奏と歌に心が震えた。
3人での再出発を誓って乾杯してるシーンがいいなぁ…。


その後は都度メンバー(後述)が入れ替わり、曲間には当時のエピソードなども話されつつライブは進んだ。

アルバム未収録で性急な曲展開の「放課後の屋上で」なども組み込まれ、当時新しい編成になってバンドが試行錯誤していた様子が窺える。
「愚か者、走る」で綴られる直枝さんの覚悟(「ギターを捨てたら他に何が残るのだろう」など)にまた男泣き。

本編最後に来たのは「Used Car」の歌入りversion 。こう来たか…そして思った。
「Used Car」、つまり中古車とはカーネーションのことだったのかな、と。長年突っ走ってきてパーツが欠けたり少しガタがきてるけどまだ続けるよ、と。その車の傷ひとつにもバンドが歩んできた歴史が刻まれている。

ちなみにこの曲の作詞は直枝さん、作曲は今回残念ながら出演が叶わなかった当時のドラムス矢部浩志さん。
矢部さんの曲はアルバムごとに2〜3曲ほど収められていて、直枝さんとはまた違う複雑なポップさを持った楽曲を作る人で、そのバランスもとても良かったのだ。

そして第二部は最新作『Turntable Overture』からの曲達が演奏された。あれから早20年経ってまた形が変わったけど、直枝さんの声は益々調子良く伸びていて圧巻だった。


カーネーションの現在の正式メンバーは、ボーカル/ギターでリーダーの直枝政広さん、ベース/コーラスの大田譲さん。
直枝さんは唯一のオリジナルメンバー。大田さんは4th『天国と地獄』の録音から30年以上在籍されている。

そして今回のサポートメンバーも素晴らしかった。
ドラムにキンモクセイの張替智弘さん。パワフルなプレイで見事に矢部さんの代役を務められた。
ギターに松江潤さん。ソロ作(彼のデビューアルバムは直枝さんのプロデュース)も出されている。見た目はとても若いけれど、硬軟自在のギタープレイは見事。
キーボードは伊藤隆博さん。バッキングにソロに、曲によってはトロンボーンもプレイされたり大活躍されていた。

お馴染みのメンバー(上のお三方)に加えて初参加?チェロの橋本さんは時に寄り添い時にアグレッシブで、コーラスの重住さんは楽しげに踊りながらハーモニーをつけていた。

アンコールは直枝さんのギターと歌に大田さんのハモリ、プラス橋本さんのチェロで「霧のスーべニール」。
これでしっとりと終わる…事はなく、大阪の観客のアンコールの嵐に応えて「夜の煙突」でブチ上がって終了。本当は前の曲で終わるつもりだったのか、出てきたとき少し笑ってらしたような(笑)

終演後、記念に『リビラビ』のジャケットを江口寿史さんがイラスト化したTシャツとトートバッグを購入。これは買うでしょ!


開演前と終演後には、直枝さんが『リビラビ』制作当時によく聴いていて参考にされたという、Alex Chiltonがトリオ編成で録音した『Loose Shoes and Tight Pussy』というアルバムが流されていた。
そして制作された『リビラビ』は、曲調も3人のグルーヴが前面に出たソリッドでかつ隙間を生かしたものになっている。

いつかのインタビューで、トリオになってからライブをよくやるようになってライブバンドとして鍛えられたというような話をされていた。一からバンドを作り替えざるを得なかったというその時から20年もの月日が流れ、カーネーションは今年で結成40年である。

このアルバムが出た頃、長く勤めたアルバイト先を辞めることになり、これからどうしようと考えながら電車の中CDウォークマンで聴いてたな。そんな事を思い出した。それから20年経ち、自分もそれなりにやってきたよな、と思ったりした。

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