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病理学総論のはじまり

本日から少しずつ、病理学総論のお話をしようと思います。僕は高校の生物(あるいは生物基礎)で、病理学総論を教えるとよいと考えています。そのとき、これくらいの内容を教えるべきと思うことを書いていくつもりです。もちろん、どんな方が読んでもよいように、かみ砕いて、できる限り分かりやすく話します。

病理学総論とは何か
 いきなり病理学って言われてもなんだかピンとこないですね。そこでまずは病理学とは何かという話からいきましょう。病理学とは次の4つのことを主に調べる学問です。

要は、病気について知りたいことを何でも調べまくる学問です。私たちは、誰でも必ず病気になります。いや、自分は強いから絶対病気になんかならない、と思っていても必ず病気になります。百歩譲ってあなたは病気にならないとしても、あなたの周りには必ず病気の人がいます。病気になるのは怖いことですよね。誰だって病気になったら心配になります。でも、怖いからこそ少し病気のことを知ってみませんか。病気のことを少し知るだけでも怖さは半減します。周りの人にちょっとした助言もできるようになるかもしれません。何より知らないことを知ることはそれだけできっと楽しいですよ。

では、どのように病気のことを知っていきましょうか。病気は体の色々な場所におきますね。それをひとつずつ調べていくという手もありなのですが、大変そうです。そこで、次のように考えます。

病気は体の色々な場所に起きるが、実はそれは共通の現象が色々な場所で起きているに過ぎない。その共通の現象を知れば、体の場所に関係なく、病気を統一的にとらえることができる

魅力的な考え方でしょう? 別に病気をひとつずつ調べていく必要はないのです。すべての病気に共通する考え方を少し学ぶだけで、病気というものを見通し良く眺めることができるようになります。これは病理学の中で、「病理学総論」と言われる考え方です。この魅力的な「病理学総論」を、今から僕はできるかぎりかみ砕いて、話してみようと思っています。

しかし、本当に共通の現象なんてあるんでしょうか。

あるんです。というよりも僕らの身体の作り上、そういうものがあると考えることができるのです。僕らの身体は細胞という小さな部屋のようなものからできています。ヒトではそれが60兆個くらい集まって身体が作られています。そして、すべての生命現象は細胞によって営まれています。病気によって、細胞はダメージを受け、変化します。だから、細胞レベルの変化を調べれば、逆に、病気のことがわかるというわけです。細胞レベルで生じる変化にはそれほど種類はありません。このマガジンでは、それを5つに集約します。① 炎症・免疫、② 循環障害、③ 代謝障害、④ 先天異常(奇形)、⑤ 腫瘍。ひとつひとつの言葉の意味は今は置いておきます。今日は、とにかく細胞レベルで見た場合、病気によって生じる変化はたった5つしかないということを知ってもらうだけで十分です。これからこの5つについて、それぞれお話をしていきます。

ちなみに、この、すべてを細胞レベルで考えればうまくいくんじゃないかという考え方を提唱したのは、ウィルヒョウという病理学者です。彼はそれを「すべての生物は細胞から」という実に簡潔な言葉で表現しました。本当に素晴らしい言葉だと思います。

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