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ソフビ製作実務編:成型の話

ソフビ製作にはいくつかの作業に分担され、それぞれがそれぞれのエキスパートが作業をします。
今回はその中でも

『成型』

というものに触れていこうと思います。
実務的にどんなことが行われているか?
一体どんな作られ方をしているのか?

ということが少しでもお分かりいただけるかと思います。

いかにしてソフビというものが人の手によって作られているか。
なるほどこれは製品が一定に上がらないな、ということが少しでもご理解いただけますと無理難題で工場が疲弊することが少なくなるのではないか?
と思います。

では、順を追って解説していきます。

大まかに成型には

・金型に材料(ゾル)を注入
・脱泡機にかける(遠心脱泡機、真空脱泡機)
・熱を加え焼き上げる
・余計な材料を流し出す
・固まるまでもう一度焼く
・抜く

という作業になります。

まず金型はどういうものか。


実際の金型です。

これに材料を入れてオイルバスというものに入れて熱で焼いていきます。


このオイルバスに材料を入れた金型を入れ、一度表面を焼きます。

まずは材料を入れた状態。


ゾルはある程度の粘度があるのでどうしても細かいところに気泡が出てしまいます。
そのために脱泡機にかけます。


これが遠心脱泡機


これが真空脱泡機です。
今回は真空脱泡機で気泡を抜いていきます。


すいません、画像がボケてしまっていますが、材料が泡立っているのが分かります。
これを数分かけて材料から気泡を抜いていきます。

気泡が抜けたらいよいよオイルバスに金型を入れます。



オイルバスに金型を入れ高温で表面を焼きます。
この時の時間によって出来上がったソフビの厚みが決まります。

適切な時間になったら金型をひっくり返して生の状態のゾルを流し出します。


画像のように表面だけ焼き上がったものが残ります。

まだ中心が半焼けなので今度は蓋をして完全に硬化するまで焼き上げます。



焼き上がった状態のものです。



これを一気に型から引っこ抜きます。



これで成形品の完成です。



伝わりずらいと思いますが、焼き加減でソフビの厚みが決まるのは職人の勘にかかってます。
例えば複雑な形になると

『抜けない』
『千切れてしまう』
『伸びてしまう』

ということがザラに起きます。
こういうことが起こらないよう、厚みを調整し(つまり焼き時間を調整する)成形をしていく訳です。
ご覧の通りですが、全て人の手で作業されています。
これらの工程を何度も繰り返しすることによって量産が出来上がります。
以前にも書きましたが、ソフビは最小限のコストで出来上がるように作られたものです。
なので、機材も非常に簡素化されています。
その部分を人の手によって、勘によって作られているのがお分かりになると思います。

100%自分の思い通りの成型品を作るのであればそれだけ多くのロス(成型のやり直し)が生じるためにその分の価格を上乗せされます。
工場のミスでない限りは作家のこだわりなので場合によっては多額の請求がされる、ということもあります。
できないことを100%やるように、ということであればそのロスの分の料金を支払うか、ソフビ以外の素材を選ぶしかありません。
10個に1個、とても良いものができました。
全部その最高の1個の状態で100個納品して下さい。
となれば1000個分の請求が来るかもしれません。
いつも言うソフビは『偶然の産物』というのはこういうところにかかっている訳です。

かなりの高温の中、1日中この作業を繰り返されている工場の方々には本当に頭が下がりますし感謝の気持ちでいっぱいです。
全ての工場の方がこのように大変な思いをされて製品を作ってます。
わがままを言って工場の方々が疲弊しないように十分に関係者の方々のご意見を聞き、できないことは素直に受け止める。
そのことで全てがスムーズに動くのだと信じております。

今回、この記事を書くにあたってコロナ前にいつもお世話になっている工場で成型体験をさせていておりました。
だいぶ時間が経ってしまいましたが快く取材させていただいた工場様、ありがとうございました!

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