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世界史漫才再構築版06:ユリウス=カエサル編(後編)

 微苦:カエサル編、再開します。後半です。
 微:視聴率を稼ぐために、わざといいところで切って引っ張ったわけじゃありませんからね。
 苦:別に言わなくていいよ! ポンペイウスとの戦いの続きですが、ヒスパニアを平定したカエサルは、前49年にギリシア上陸、数で劣っていましたが翌年にポンペイウス軍に圧勝します。
 微:ポンペイウス軍には雑魚しかいなかったんかいな。
 苦:一心同体感の差かな。ポンペイウスはエジプトに逃亡しますが、アレクサンドリア上陸の際、プトレマイオス13世側近によって殺されました。
 微:そこでクレオパトラと落ち合うわけだな。ピラミッド前で待ち合わせして。
 苦:んなわけねえよ!
 微:でもお互いにLINEのアイコンを盛りすぎてたんで気づかなかったと。
 苦:それはキミの失敗だろ!! ポンペイウス追討のためカエサル軍はエジプトに向かいますが、カエサルがそこに着いたのは殺害の数日後でした。
 微:カエサルからすれば手間が省けたわけだな。感謝状くらいは渡してやってもいいだろ。
 苦:しかし公式ルートで、パスカルに「その鼻がもう少し低かったら、世界は変わっていただろう」と言わしめたプトレマオイス朝の女王クレオパトラ7世と対面したのではなかったんです。
 微:なんでもすぐに欲しがるお前は、さしずめ「クレクレタコラ」だな。
 苦:そんな白黒テレビ時代の番組を21世紀の高校生が知っているわけねえだろ! お前みたいなのが出てこないよう、エジプト王家の婚姻を復習しておきます。
 微:本当は2回分やれるだけのネタがないくせに。
 苦:まあまあ。プトレマオイス朝はギリシア系でしたが、エジプトの伝統に従い、兄弟結婚でファラオの地位を継承しました。
 微:ギリシア人でも、やっぱエジプトではそうなるのか・・・。
 苦:前51年、クレオパトラが18歳の時に父プトレマイオス12世は死去します。
 苦:父の遺言及びプトレマイオス朝の慣例に則って、最も年長のクレオパトラが弟のプトレマイオス13世と結婚して共同でファラオに就きました。
 苦:しかし能力に差のある二人の間では、権力を巡る骨肉の争いが常態化していました。
 微:夫婦喧嘩なのか、姉弟喧嘩なのか、どっちなんだよ!
 苦:つっこむ所はそこじゃねえだろ! でも彼女は父プトレマイオス12世には忠実だったようです。ちなみにクレオパトラはギリシア語で「父の栄光」を意味します。
 微:ついでながら安倍晋三は日本語で「祖父の栄光」を意味します。
 苦:最初から日本語だよ! 前48年9月、ポンペイウスの後を追ってきたカエサルがアレクサンドリアに着いたのは、ポンペイウスがプトレマイオス13世の計略によって殺された数日後でした。
 微:「なぜプトレマイオス13世はポンペイウスを殺したのか?」と質問して欲しいんだろ?
 苦:はい。というのも、クレオパトラは弟であり夫でもあるプトレマイオス13世への対抗上、ポンペイウスに協力を要請し、その見返りに兵員と食料提供を約束していました。
 微:姉が憎ければその協力者も憎い。民主活動家が憎ければその弁護士も憎いというご近所論理だな。
 苦:クレオパトラもなかなかで、ポンペイウスの息子とまで情交関係を持ってしまいました。
 微:まさに全方位情交、いや外交だな。
 苦:前48年の春、これらクレオパトラの動きに不信を募らせたプトレマイオス13世派はアレクサンドリア住民がクレオパトラに対して起した反乱に乗じて彼女をパレスティナへと追放したんです。
 微:クレオパトラはガザ地区からロケット弾を発射して抵抗したそうです。
 苦:それはハマスだよ!! エジプト到着後すぐにカエサルはアレクサンドリアに姉弟というか夫妻を招集します。
 微:二人を呼び出すことで権力者が誰だか示す。昔の「小沢面接」を思い出したわ。
 苦:プルタルコス「カエサル伝」ではクレオパトラは自らを寝具袋にくるませ、カエサルのもとへ贈り物として届けさせたとなってます。
 微:カエサルが開けてくれなかったらどうするつもりだったんだ?
 苦:映画とかでも、絨毯に包んで届けさせたと説明されることが多いんですが、史料では確認できません。
 微:この時、「ちわーす、カエサルさん、宅配便でーす」ってドア越しに聞こえたんで、用心深いカエサルもハンコ持って「はい、ども、ごくろうさんです」ってドアをあっさり開けたんだよな。
 苦:この時代に黒ネコが営業してるわけねーだろ! こうしてクレオパトラはカエサルの愛人となったものの、カエサルは二人の和解に尽力しました。
 微:両刀使いだったから姉と弟の両方を狙ってんだな。
 苦:どんだけ鬼畜なんだよ!! しかしプトレマイオス13世はクレオパトラがカエサルの愛人になったと知ると「怒り心頭に発し、王冠をはずし、地面に叩きつけた」と伝えられます。
 微:デーモン閣下のライブパフォーマンスを参考にしたそうです。
 苦:それならキングギドラが出てくるよ!! プトレマイオス側がカエサル軍を攻撃したため、カエサル軍も応戦し、プトレマイオス13世派を制圧します。
 微:プトレマイオス13世は「呼吸ができない」と何度も懇願したそうです。
 苦:どこの白人警官だよ!! これがアレクサンドリア戦役で、不運にもムセイオン附属の大図書館も灰燼に帰します。
 微:残念な気持ちと、でも古典作品が全部残っていたら古典学者も大変だっただろうなあが半々。
 苦:バスカヴィルのウィリアムのような人間はいくらでもいます。なお、この戦いで溺死したプトレマイオス13世に代わって、プトレマイオス14世がクレオパトラと共同ファラオの地位に就きます。
 微:それって本当に溺死か? 舌は黒くなっていなかったか?
 苦:『薔薇の名前』から離れなさい! そしてカエサルは戦争後の愛人付き休暇を楽しみます。
 微:今も昔も地中海は金持ちが愛人と過ごすリゾート地だな。パパラッチもいないし。
 苦:しかし、優雅な日々は続きません。小アジアのポントス王国のファルナケス2世が反乱を起こし、カエサル軍が敗北したという報せが届きます。
 微:東方属州だから放置できないよな、残念だけど。
 苦:前47年6月、カエサルはエジプトを発ち、ゼラの戦いでファルナケスを破ります。この時、ローマの腹心マティウスに送った戦勝報告が「来た、見た、勝った(Veni, vidi, vici.)」です。
 微:それ、「来た、見た、買うたの喜多商店!」じゃなかったっけ?
 苦:そんなCMネタ、50才以上のオッサン、しかも「♪京橋は ええとこだっせ グランシャトーがおまっせ」って歌えるようなオッサンしか知らねえよ!
 微:キミは「たよし」の歌も歌えるだろ。
 苦:話を戻すと、前47年後半にローマに短期間滞在し、1年間の独裁官に任命されます。前46年4月、北アフリカで抵抗を続けていた小カトーなど元老院派を撃破、夏にローマへ帰還しました。
 微:たまには顔を出して睨みを利かさないとな。
 苦:その目的は10年間の独裁官任命です。ローマでは市民の熱狂的な歓呼に迎えられ、壮麗な凱旋式を挙行しました。
 微:任期がある時点で金正日総書記、金正恩委員長に負けているな、終身の独裁者だからな。
 苦:意味が全然違うだろ!
 微:人民民主主義って、要は共和政だろ。その共和政の枠を食い破って世襲で終身独裁者となった将軍様の方が上だよ。しかも愛人一杯だし、美女軍団も持っているし。
 苦:確かに形だけなら一緒かも。話を戻すと、カエサルは凱旋式にクレオパトラを招いております。
 微:公式行事に愛人を招くより、愛人を美女軍団として国際大会に派遣する方が上だな、やっぱり。
 苦:しかもクレオパトラはカエサルとの間の息子とされるカエサリオンを伴っており、その上カエサルの妻カルプルニアとも対面しています。
 微:カルプルニアも3人目の妻でポジションは五十歩百歩だけど正式な妻だから緊張するな。
 苦:でもカルプルニアはクレオパトラが美人でなかったので気分が良かったそうです。
 微:そこじゃねえだろ!
 苦:別の文脈での発言だけど、「始めたときは、それがどれほど善意から発したことであったとしても、時が経てば、そうではなくなる」というのは意味深ですね。
 微:生徒に手を出す教師みたいな名言だな。
 苦:ついでなんで、妻と愛人の一覧を挙げますね。

 コルネリア:ルキウス・コルネリウス・キンナの娘。最初の妻
ポンペイア:二番目の妻、紀元前62年離婚
カルプルニア:ルキウス・カルプルニウス・ピソ・カエソニヌスの娘。最後の妻
セルウィリア:愛人。マルクス・ユニウス・ブルートゥスの母
ポストゥミア:セルウィウス・スルピキウスの妻。愛人
ロリア:アウルス・ガビヌスの妻。愛人
テルトゥラ:マルクス・クラッススの妻。愛人
ムニキア:グナエウス・ポンペイウスの妻。愛人
クレオパトラ7世:プトレマイオス朝エジプトの女王。愛人

 微:これを見てナザレのイエスが「カイサルのものはカイサルに」とつぶやいたんだな。
 苦:それはパリサイ派との問答だよ!
 微:そのくせ、「カエサルの妻たる者は、疑われることさえもあってはならない」とほざいているんだから、大した奴だよ。
 苦:分かっているだけでカエサルには上記の愛人がおり、「ハゲの女たらし」の異名があり、彼の軍団兵たちも凱旋式の際に「妻を隠せ」と呼びかけたと伝えられています。
 微:一瞬、キミののことかと思ったぜ。
 苦:濡れ衣を着せるな! 前44年3月15日、ポンペイウス劇場で開かれる元老院へ出席する途上、カエサルは劇場に隣接する列柱廊でブルートゥスやカッシウスらよって暗殺されます。
 微:場所がライオン奥様劇場だったら、ソープオペラだったな。いや、そっちの方が面白いかも。
 苦:検死の結果、23の刺し傷の内、2つ目の刺し傷が致命傷となったそうです。
 微:2つ目の刺し傷を与えたのはカルプルニアだったそうです。
 苦:どんだけ本妻に嫌われているんだよ! でもそれも仕方ないか、ウソだけど。
 苦:カエサルが暗殺されると、クレオパトラはカエサリオンを連れてエジプトに帰国しました。カエサルの遺言書は養子オクタウィアヌスを後継者と定めていたためです。
 微:エジプトでは同情を買うため、「カエサルのDVに耐えかねて」と事情聴取で答えたそうです。
 苦:カエサリオンをエジプトのファラオにするため、クレオパトラはカエサルの部下で、東方属州に睨みを利かすアントニウスに接近します。
 微:どんだけ女であることを武器にするんだ。でもそれだけの魅力と魔力があったのか?
 苦:二人が正式な夫婦だったかどうかはわかりませんが、夫婦同然の関係に陥りました。
 微:実はアントニウスは心は女性、ドラアグ・クインというオチか?
 苦:違いますが、雌雄を決するため、前31年のアクティウムの海戦に到ります。勝ったのはオクタウィアヌス側でした。アントニウスは戦死し、遺体はエジプトに送られました。
 苦:生き残ったクレオパトラはオクタウィアヌスに接近します。
 微:節操がないけど、見境がない訳ではない。眼力はあるな。
 苦:前30年にコブラに手首を咬ませて自殺したクレオパトラは遺言で、アントニウスと一緒に埋葬するよう言い残しています。
 微:一緒に埋葬した瞬間、二人は手を取り合ったそうです。
 苦:それじゃ生きてるだろ!! ところで色んなことがなんでわかるかというと、古代ギリシア人同様、大事なことは石碑や銅板に刻んで、人目に付く所に掲示していたからです。
 微:財務省や法務省もそうすれば疑惑を持たれないのにな。
苦:法律、都市の特権、多額の寄付ですね。ポンペイで発見された壁の落書きも貴重な情報源です。
 微:クレオパトラはピラミッドの全壁面に刻んだけど、都合が悪くなったのでオクタウィアヌスが表面の石を剥がしたんだな。
 苦:表面を剥がしたのは7世紀のイスラーム教徒です。証拠隠滅ではありませんから。
 微:で、クレオパトラは本当に頭が良くて美人だったのか?
 苦:美人だったかどうかはわかりませんが、ギリシア系ですからエジプト人とは違っていたでしょうね。頭が良かったのは確かで、男遍歴を見ても政治的才覚はあったと言えます。
 微:どうしても大コケ大作映画『クレオパトラ』のエリザベス・テイラーという、美人だけど下品でバカな女優のイメージが強烈すぎて。
 苦:あれのコケ方が凄すぎて配給会社も倒産しかけましたし。でも傾かせ方にも格の違いが出てますよ。エリザベス・テイラーで身を滅ぼすのはホワイトトラッシュと呼ばれるバカ白人ですから。
 微:ああ、ヨゴレ嗜好ね。
 苦:本物は実の弟、ポンペイウスの息子、ユリウス・カエサル、アントニウスと錚々たるローマ史を彩る男たちを手玉に取ってるんです。
 微:でも、関係を持ったやつ、全員不幸な死を迎えているね。歩く「デスノート」だな。
 苦:「後妻業の女」とか木村被告よりはいいでしょ、殺されておしまいより。
 微:・・・これ、カエサルの回だってこと、忘れてないか?
 苦:あっ・・・

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