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世界史漫才再構築版63:蒋介石編

苦:今回は蒋介石です。中華民国の軍人にして国家指導者で、1943年の米英中のカイロ会談にも参加、1945年のポツダム宣言ではスターリンのダミーとして名前だけが使用されました。
 微:名義貸しは、詐欺やトラブルの元だぞ、おい。
 苦:気安すぎんだよ、お前! 蒋介石は第二次世界大戦勝利後は戦勝国中華民国の総統となります。国連安保理の常任理事国の「中」は中華民国のことでした。
 微:「ソ」はソマリアだったな(遠い目)。
 苦:まだイタリアから独立してねえよ!! ソ連だよ、ソ連。
 微:ああ、そんな国もあったな(遠い目)。
 苦:ブルーベリーでも食べとけよな。日本やドイツにとっては1945年が敗戦という形で第二次世界大戦はきれいに終わるんですが、そんなにきれいには終わらない国も多かったです。
 微:それは「日本固有の本土」にいた人間限定だな。
 苦:おっしゃる通りです。ポツダム宣言受諾にソ連軍は千島列島に侵攻して併合していますし、沖縄は1972年までアメリカの信託統治名目の軍政下にありました。
 微:オレの曾祖父は8月15日に曾祖母にプロポーズしたら「無条件降伏するわ」と言ってくれて結婚したそうです。
 苦:意味が全然違うよ!! それってオマエの曾祖父はどっかに女性を監禁でもしてたのかよ。
 微:いえ、巣鴨プリズンに入っていたそうです。
 苦:そっちかよ!! 話を戻すと、日本軍の敗戦と撤退後も中国では国共内戦が始まりました。
 微:ええ、国民民主党と日本共産党は仲が悪いですから。
 苦:そこまでの力は国民民主党にはねえよ!! 1949年に毛沢東の中国共産党に敗れ、蒋介石と中華民国を構成する国民党は台湾に逃亡します。
 微:中国4000年の歴史ではよくあることだな。北方の遊牧民に本土を奪われるのは。
 苦:それがギャグにならないのが中国の中国たる所以です。それでも、アメリカのゴリ押しで国連代表権が中華民国から中華人民共和国にようやく移ったのは1971年でした。
 微:まあ、それもベトナム戦争から撤退するには毛沢東と話をつける必要があったから切った訳で。
 苦:それでも1975年に死去するまで蒋介石はずっと「反攻大陸」をあきらめませんでした。
 微:失ったのが大陸ではなく女性だったら、絶対ストーカーになるタイプだな。
 苦:出た、変な譬え! 大陸の選挙区で選出されて台湾に逃亡してきた国民党議員らは「大陸奪還までは改選できない」という名目で永世議員となりましたから、中国国民党全体が迷惑な団体でした。
 微:それで無能国会議員が熱心にテレビの『日本沈没』を観ていたんだな、心の中で「オレの選挙区、沈没しろ! 永世国会議員だ!」って叫びながら。
 苦:まあ比例区専属はそうですね。なお蒋介石は台湾では蒋中正で通っています。台湾にある中正紀念堂、中正国際空港、国立中正大学はいずれも蒋介石の名前を取ったものです。
 微:孫文と孫中山の関係だな。日本に「宗男大学」「角栄大学」があったら誰も行かんだろうが。
 苦:ジョン・ホプキンス大学ならいいですがね。今でも200元紙幣は蔣介石の肖像です。
 微:金日成大学とか、個人名が大学に付く国って、要するに独裁国家というか革命国家だろ? トルコ共和国なんか全部の紙幣もコインもアタテュルだもんな。
 苦:はい、1949年12月から台湾に国民党独裁政治を敷き、翌年に総統に就任してから自作自演の総統選挙で5回当選するなどして、1975年に死去するまで中華民国総統の地位に居座りました。
 微:30年以上同じことをやったスハルトやムバラクには負けているな。
 苦:はい、同じように「開発独裁」「アメリカ傀儡政権」としてものすごく印象が悪かったです。ですが、孫文も蒋介石も毛沢東も「党が国家を指導する」という考えは同じでした。
 微:セメントで砂を固めるようにしないと、何億もの中国人民をまとめられないのは確かだな。
 苦:また、同時期の韓国も李承晩や朴正熙など、アメリカべったりの独裁政治家が続き、とても民主国家とは言えない状況にありました。
 微:「クーデタで大統領が殺されて政権交代する国よりはいいだろ」と開き直ったそうです。
 苦:またデタラメを。毛沢東の中国革命・社会主義化が崇められていた頃は、どうしようもない強権的保守政治家と低く扱われていました。
 微:冷戦期だからサラザールもフランコも見逃してもらった上に援助受けてたもんな。
 苦:というのも当時の日本の社会主義陣営では、遅れていると侮っていた中国が日本より先に社会主義革命に成功したことに衝撃を受けたからです。そこから「封建遺制」探しが始まりました。
 微:大塚久雄とか丸山真男が輝いていた時代だな。
 苦:「産業革命をアジアで最初に実現したのに、なぜ政治での社会主義革命を阻止あるいは遅らせている要因は何だ?」という問題意識です。
 微:それは、中国や帝政ロシアほど貧しくなかった、人の命が安くなかった、ってだけだろ? 労働者でも失うものができたら社会民主主義化するか、保守体制との妥協に走るよ。
 苦:その通りでレーニンたちが一番期待したドイツの革命は社会民主主義路線に食われましたしね。その伝で行くと21世紀日本の労働者のプロレタリア化はすごい勢いで進んでるんで有望です。
 微:いや、日本で唯一革命を唱えておりのは日本維新の会だけど、あれは本気なのかギャグなのか?
 苦:独裁したいだけでしょ。古い腐敗から新しい腐敗へ。本来はイギリス史の用語だけど。
 微:カジノに大阪の未来を賭けるという博打を打つなんて革命的に斬新だが。
 苦:話を戻しますと、実際のところかつての台湾は北朝鮮と五十歩百歩でした。
 微:笑ってはいけないけど、今でも孫文と蒋介石の像の衛兵は笑ってはいけないもんな。
 苦:「ガキつか」は終わりました。戒厳令時代には、蒋介石は中華民国の指導者、中国4000年の道徳の体現者として尊敬の対象とされました。彼の銅像が中華民国のあちこちに建立されました。
 微:お前は二宮金次郎か!
 苦:また偉そうにつっこむ。金次郎さんは、地元の名士が小学生に勉学に励み世のために尽くすよう、自費で寄付したことから始まったもの。税金では作られていませんが、蒋介石銅像は税金です。
 微:しかし「中国4000年の道徳の体現者」とは大きく出たな。
 苦:さらに台湾の学校の教室には孫文と蒋介石の肖像画が必ず並べて飾られていたんです。
 微:朝鮮学校かよ! まあ大阪の小学校の音楽室にはキダタローの肖像が掲げられてるけど。
 苦:まさに昔の台湾は北朝鮮と五十歩百歩だったんです。しかも白色テロによる支配を行ったため、「アメリカは、日本に原爆を落とし、台湾に蒋介石を落とした」という言葉さえあります。
 微:金日成も満州で抗日ゲリラ部隊を指揮していた英雄としてソ連が落とした、いや送り込んだんだよな。いやあ、大国からのプレゼントには気をつけないといけんなあ。
 苦:二・二八事件を補足すると、1945年に中華民国側が台湾の日本軍を武装解除しようとしたんだけど、国民党関係者の強姦・強盗・殺人事件が絶えず、本省人との緊張が高まっていました。
 微:どっちが日本兵かわからないほどでした。
 苦:そんな中1947年2月27日に闇タバコを売っていた女性が役人に暴行され、それがきっかけになって翌日から起きた暴動事件です。以後、1967年まで台湾には戒厳令が敷かれました。
 微:これを今の台湾の教科書では「華寇」って呼んいます。倭寇も本拠は福建省だったし。
 苦:微妙なウソを混ぜるな!! まあ、余りの国民党の腐敗にアメリカが援助を打ち切ったことが毛沢東に敗れる原因だったくらいですから、そりゃ幹部の酷さは筋金入りです。
 微:それで本土みたいにマンションが建設途中でこけたり潰れたりしないんだな。
 苦:それは筋金じゃなくて鉄筋だろ! しかも蒋介石は、生前から息子蒋経国への中華民国支配権の世襲を準備し、冷静に実現します。共和国で権力の「世襲」ですからね。
 微:ツッコミがボケるな。しかし、これが金日成に決断させたのかもしれんな。でも両国の運命はどこで狂った、いや分かれたんだ? 息子の出来不出来の差か?
 苦:それもありますが、在地権力か亡命・征服権力かの差でしょう。また北朝鮮の場合は、この30年間のミサイル開発と核兵器開発に国力を浪費したことが大きいでしょう。
 微:国民が反政府デモすらできないくらい栄養失調に陥るとは誰も予想できないわな。
 苦:それだけ1949年以降のアメリカからの援助が大きいと思います。またアジア間交易に乗っかった工業・電子産業サプライチェーンに乗ってNIEsに入ったことも大きいです。
 微:話は変わるけど、ノドンで日本語に直すと「労働」なんだろ。なんかヘルメットかぶったオッサンらがミサイル抱えて突っ込んでくるイメージが湧いちゃって、笑えるぞ。
 苦:話を戻します。最後まで「反攻大陸」を望んでいた父親とは異なり、総統となった蒋経国は父とは全く別の道を歩みました。
 微:中国縦貫道路の吹田ジャンクションで間違えたそうです。
 苦:キミとは違います。蒋経国は特務機関や秘密警察を使って過酷な支配を続ける一方で、「私も台湾人だ」と発言し、台湾の経済復興・民主化政策、本省人登用政策など進めました。
 微:東ドイツやソ連のように秘密警察があったのか。
 苦:また若い頃、人質同然でモスクワへ送られていましたから、計画経済の運営はお手の物でした。軍事費の負担も小さく、彼の時代に台湾の富は台湾のために使われるようになったのです。
 微:モスクワ留学中はKGBのプーチンが行動を監視したそうです。
 苦:してねえよ!! 韓国の朴正煕も戦前に日本留学経験があり、共産党との関係が指摘されています。計画経済は高度経済成長と親和性があるのです。住民立ち退きも強権で一発です。
 微:開発の進め方は泉明石市長に習ったそうです、「火を付けてもやれえ!!」と。
 苦:総統としての評判は良くないんですが、台湾人の李登輝を副総統に据え、台湾民主化、つまり「訓政」から「憲政」への道筋をつくったのは紛れもなく蒋経国なのです。
 微:なるほど、そう考えると『じゃりんこチエ』のテツとチエちゃんだな、親の不始末を子が処理。
 苦:さて時間が前後しますが、日本との関係は個人レベルでも深いものがあります。蒋介石は日本の東京振武学校へ留学して軍事学を学んでいます。
 微:科挙廃止後には留学が出世への早道だもんな。軍人が国家元首になる道は袁世凱が開いたし。
 苦:やはり日本留学が彼の政治家への道を拓きました。陳独秀、魯迅、周恩来など明治から昭和にかけて、中国近代化を担った若者たちは日本に留学しています。
 微:最終的に中国大陸を手中にしたのは留学経験のない毛沢東だけどな。田舎者の根性か。
 苦:また辛亥革命後に日本で亡命生活を送っていた頃には、犬養毅、右翼の大物頭山満らに庇護されるなど、日本通でもありました。
 微:なるほど、儒学の教養と日本国民受けするしゃべり方を知っていたと。
 苦:実際、第二次世界大戦後に焦点になっていた天皇制の扱いについてもF=ローズヴェルトからの質問にも答え、天皇制存続と昭和天皇を訴追すべきでないことを書簡で何度も訴えています。
 微:そうしないと朝貢してくる東夷の君主がいなくなるもんな。
 苦:いつの時代だよ! 戦勝国となり、対日報復世論が沸き立つ中、蒋介石は「以徳報怨」、つまり徳を以って怨みを報ずと称して日本兵の中国大陸からの復員に最大限の便を図りました。
 微:周恩来の「中国人民も日本国民もファシズムの被害者です」には勝てないけどな。
 苦:彼の絶頂期だったでしょう。逆に日本に一定の愛着と信頼を持っていたことが1928年の満州某重大事件以後の関東軍・日本軍の動きを放置してしまうことにつながったと言えます。
 微:いや、あの事件で張学良が国民政府に参加してくれたから、北伐もすぐに終わるわ、南京国民政府をイギリス・アメリカが即承認してくれたんだから「ごっつぁんゴール」だろ?
 苦:北伐を担った国民革命軍は彼の弟子たちですしね。ただ、各地の軍閥のボスは力を消耗する前に投降して国民政府内で地位を得る道を選びましたから、がっちりした統一でもなかったです。
 微:中国乱世の得意技「名ばかり服従」だな。
 苦:まあ、それは鎌倉幕府ができる時や関ヶ原の合戦後でもありましたから普遍的でしょう。
 微:それよりも中国共産党が嫌いだったし、本気で壊滅させたかったんだろ?
 苦:上海クーデタ以降は毛沢東や周恩来と顔を合わせるのも嫌だったでしょうね。蒋介石は1925年に設立された黄埔軍官学校校長で、副校長が周恩来、政治教育担当面接委員が毛沢東でした。
 微:メチャクチャ濃い学校だな。それで、満州事変も国際連盟に丸投げしたんだな。
 苦:手続きを踏んだ提訴で外交戦術です。共産党に目がいったのは彼の儒学的素養というか中華帝国の論理でしょうね。清朝から中華民国へ「国統」は移った故にそれを否定する共産党は認めない。
 微:黒糖かりんとうはボリス・ジョンソンに任せればいいのに。
 苦:天命の移動です!! 毛沢東の「中華ソヴィエト共和国」が承認されたら国統の論理では中華民国は消えたことになります。
 微:それで中華人民共和国は台湾が中華民国を名乗ることに神経を尖らせるのか。
 苦:1935年には英米の援助で通貨統一も実現し、別に駄目な政治家ではありません。でも共産党との提携は拒み続けたので、1936年の西安事件が勃発するわけです。
 微:部下に拉致されるわ、監禁されるわ、「軟禁国民政府」といじられるわ、と散々でした。
 苦:文字化しないとわからないギャグは禁止ですから。そして運命の1937年、日中全面戦争です。
 微:心の傷が癒えない時に南京が陥落したんで「自分を見つめ直してきます」って書き置き残して重慶に引き籠もった、いや撤退したんだな。
 苦:長期戦に備え、かつ日本軍の補給線を伸びきらせるための戦略だってば。
 微:四川省の蒋介石を毛沢東が「いつまでも引きこもってんじゃねえぞ! コラ!」って挑発して。
 苦:それじゃ昭和のラッシャー木村だよ。
 微:でも体を張って日本軍と戦ってたのは蒋介石の方で、毛沢東たちは「形だけゲリラ戦」で勢力を温存してたよな。「お前たちこそ満州で戦えよ!」って言えばいいのに。
 苦:そこは中国共産党延安派の触れて欲しくないところですから、「そっ閉じ」しておきましょう。
 微:アニソンから始まったことを黒歴史として隠したがる森口博子みたいなもんだな。
 苦:いや、水木一郎をマネして自分からアピールしてますわ、あの恥知らずな元アイドル。

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