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「魅惑の心理」マガジンvol.122(危険に鈍感になりやすい傾向)

 災害や大惨事など突然の異常事態に立ち向かう人々を描くディザスター映画。異常気象、地震、津波、火山噴火など様々な作品があります。子どもの頃、最初に観た記憶があるのが高層ビルでの火災を描いた『タワーリング・インフェルノ』だったと思います。それからたくさんのディザスター映画を観てきました。『2012』『ディープ・インパクト』『デイ・アフター・トゥモロー』『イン・トゥー・ザ・ストーム』。ここで描かれる市民は、災害には無力で、逃げ惑いパニックを引き起こしています。災害とパニックはセットで描かれます。古典的な心理学でも人々は災害に直面すると、パニックになると信じられていて、どうしたらパニックにならないかを研究されていました。しかし、しかし、実際の人は、「まあ、大丈夫だろう」と避難をしない人が多く、逃げ遅れになることのほうがパニックになることよりもはるかに多いのです。

 危険に敏感に接していると、精神的に負担になります。そこで人は心を平穏に保とうと、鈍感になる心の働きがあります。私たちの危険に対して鈍感に考える傾向、こうした思考の偏りを正常化バイアスといいます。東日本大震災でも町中に津波の警報が鳴り響きましたが、非難せずに実際に津波を目視してから避難をした人が多く、行動が遅れたことが明らかになっています。テレビや気象庁からの呼びかけも「落ち着いてください」よりも、「命を守る行動を」と行動を促進する声が増えたのはそのためです。今回の「魅惑の心理」マガジンでは、こうした危険に鈍感な人の心理を詳しく見ていきながら、危険に直面した時、する前の心構えを解説していきたいと思います。

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