見出し画像

「魅惑の心理」マガジンvol.106(共感力と想像力が低下する社会)

前回のマガジンvol.105(他人から攻撃されない防衛術)で、攻撃をしてくる人の特徴のひとつとして共感力と想像力が低い人を取り上げましたところ、共感力と想像力が低い人の傾向やこうした人がいる背景を知りたいという話をいただきましたので、今回はこの人が共感力や想像力が低下してきた背景やについて話をしたいと思います。

○共感能力が低下する現代人

過去の「魅惑の心理」マガジンでは「共感力の磨き方」として、共感ができない人が増えていることと、人の心がわかるメカニズムについてセロトニンとベガス神経の簡単な解説をしています。また、共感能力を上げるトレーニングとして、5つの方法を解説しています。

対人関係における顕著な傾向のひとつに、共感力が低下する人が増えていることがあります。みなさんが実際の人間関係やネットを通してみる人の発言からも感じているものかもしれません。わかりやすくするために「低下」という言葉を使っていますが、正確には「変化」しているといえます。共感する必要がない、共感できないという方向に人の認知傾向、価値観が変化しているのです。

他人が何を考えているのか、気にしないで発言する人が増え、結果的に相手の感情を考えることなく、自分の言いたいこと、自分の利益や考えを主張するのです。

背景には、いくつかの理由があります。原因のひとつはセロトニン神経の不活性化であり、コロナ禍ではその影響は大きいと考えられます。セロトニン神経が不活性化し、セロトニンという脳内物質の分泌量が減ると、共感力が低下します。このセロトニンは睡眠にも悪影響を及ぼし、イライラが増します。ひどくなると鬱になることもあります。食事、ツール、行動、生活習慣などの影響を受けて、セロトニンがうまく分泌、機能できなくなっているのです。

また、もうひとつ大きな原因は人の「損失回避」の高まりです。「え? 損失回避?」と思う人がいるかもしれません。損失回避はポーポーのnoteの中でもよく出てくる言葉ですが、経済の視点だけでなく、人の様々な判断に大きく影響を与えています。損失回避は人の基本性質で、得をしようと行動するよりも、損を回避する傾向に強く働くものです。1万円をもらう喜びよりも、1万円を失う痛みのほうが人はダメージを強く受ける性質です。

この損失回避は面白い性質があり、人の心にある「嫉妬心」と同じように、心に強くある人ほどその存在を否定する傾向があります。ではなぜ損を回避する性質と共感力が関係あるかを詳しく見ていきましょう。


ここから先は

3,662字

¥ 250

いつも応援ありがとうございます。 みなさまからいただいたサポートは研究や調査、そしてコンテンツ開発に活かしていきます。 ミホンザルにはバナナになります。