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「魅惑の心理」マガジンvol.19(いじめられるほうが悪いと思っている君へ)無料

いじめが問題になると、「いじめられるほうも悪い」「いじめられるほうが悪い」という意見が出てきます。これに対して賞賛したり、反発したりする意見がSNSでも飛び交います。結論を先に言うと「いじめられるほうも悪い」「いじめられるほうが悪い」と言うのは全くの幻想です。100%いじめる人間が悪いんです。何でもそうですど、「騙されるほうも悪い」「暴力を受けるほうも悪い」とかも同じ論法です。いじめられている人が「自分も悪いのか」なんて考えることは微塵もありません。

実は私もいじめられっ子でした。今では背は平均やや高く、体重は平均以上ありますが、小学校の高学年までは小さく細いほうでした。近所にはジャイアンみたいな大男がいて、子どもたちのボス的な存在で、私は彼に良く殴られて泣かされていました。名前も少し変わっていたので、良くからかわれたものです。お腹をよくこわしていた私は、小学校で大きなトイレに入るだけで、いじめられるという体験もしました。いじめのきっかけはそんなものです。トイレに行ったことが、「いじめられるほうも悪い」という論法なら。それはちょっと切なすぎます。

ではなぜ「いじめられるほうも悪い」「いじめられるほうが悪い」と言った論法がまかり通るのか、そんなことを唱える人が出てきたのか考えてみましょう。

○加害者のすり替わり(得する人がいる)

それには人の心の奥を知ると見えてきます。「いじめられるほうも悪い」と言うのは本来は準備の話。いじめてくる相手に隙を見せないで、いじめられる要素を握られるのを避けようとする啓蒙的な話です。本当に近しい相手、たとえば親が子どに対していじめられないようにするための準備をしなさいという意味で使うような言葉です。いじめられている人に使う言葉ではありません。

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これが論点というか加害者がすり替わり、「いじめられるほうも悪い」が「いじめられるほうが悪い」に変わっていったと考えられます。では誰が変えたのか? それはいじめをしている人、人をいじめる要素を持つ人が正当化のために広げていったと考えられます。また、いじめ構造を面白いと思っている無責任な人が、「いじめられるほうも悪い」と言うことで己の好奇心を満足させている力がそれを後押ししています。自分にとって「いじめられるほうが悪」とするほうが物理的に得をする人(いじめ加害者)、精神的に得をする(無責任傍観者)がいるのです。ですから、いじめられているあなたは全く悪くありません。

○嫉妬心の高まり

最近、嫉妬心が高まっています。とにもかくにも誰かと比較してすぐに得だ損だと比較するのです。人の損失回避性(損をしたくないという感情)が高まっているので、損に対しては敏感です。この嫉妬心が極めて高い人は「かわいそう」という感情がいじめられる人に向かうことも許しません。被害者に対する嫉妬というわけのわからない感情が生まれてしまいます。こうした人たちが「いじめられるほうが悪いのさ」と言って、いじめ被害者を不幸にすることで快楽を得ようとしています。この人たちはいじめ加害者よりも残酷になることがあり、罪悪感のない行為をします。

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ネットの掲示板やSNSで匿名性が加わると人はさらに残酷になる心理が働きます。個人の意識が希薄になり、モラルを失いがちです。これを心理学では没個性化と呼んでいます。恐ろしいのはこうした行為には罪悪感を伴いにくいということです。そしてこの行動は次第にエスカレートする傾向があります。こんな人が「いじめられるほうが悪い」と言っているのです。ですから、いじめられているあなたは全く悪くありません。

○共感能力の低下

この発言の裏には共感能力が低下している背景もあります。相手の感情を汲み取って想像する能力は、ツールの変化によって著しく進んでいます。対面が電話になり、メールになると相手の感情を考えないで、自分の思ったことをぶつければよくなるからです。こうした行動は習慣化し、そして性格まで変えてしまいます。顕著なのは共感能力の二極化で、多くの人が共感能力が低下する一方で、ごく一部の人に過度に共感してしまいます。

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共感能力が低下した人が増えるといじめられている辛さが想像できません。そして痛みを理解することなく、「私だったらこう言って、いじめた奴を攻撃してやるわ」と言った自慢を入れてきます。こうした人が「いじめられるほうが悪い」と言っているのです。ですから、いじめられているあなたは全く悪くありません。


このようにいじめの被害者側の視点に寄れない人と行動が増えてきたことがわかります。また変に共感能力が高い人が、こうした論法に共感してしまい「うん、私が悪いかもしれない」と共感してしまうこともあります。「いじめたほうが悪い」ということを言っていかないといけません。問題の本質を見誤ってしまいます。

冒頭に話をしましたように、いじめの理由は「トイレに行った」という理由や「ちょっと調子に乗っている」「空気が読めない」のような些細なことです。全員が口をきかなくなるような悪いことをしたわけではありません。仮に悪いことをしたら注意をすることが大事であり、いじめに向かってはいけません。いじめの多くは何かの理由をつけて、後からいじめを正当化するためにもっともらしい理由がつけられます。いじめられる側が強くならなくてという論方も間違っています。トイレは誰でもが行くものですし、子どもはみんな調子に乗るものです。強くなるというのはトイレを我慢することなら、私はそれは間違っていると思います。ですから、いじめられているあなたは全く悪くありません。本当に悪くないのです。


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