帰宅願望ってなんだ①

認知症特有の症状。夕暮れ症候群なんて言われ方もするけど、さっきまで笑顔で場を楽しんでいた入所者が突如顔が変わり「じゃあそろそろ失礼します」なんて足早に出口を探し始める。大抵そういう人がいるところには電子ロックがあり外に出れないような仕組みになっている為、声掛けを間違えたり、出られないということが知れた時にはもうOUT!!!
第二段階に移行する。悲しみ嘆く人もいれば、怒り狂って物や人にあったる人もいる。もう、人によっては症状の出方は計り知れない。総じてこういう状態を業界では不穏なんて言う。絶対の対処法なんていつでもないのだ。何年働いていてもいつだって地雷を踏む。踏まずには対処法なんて見つからないからだ。
だから、地雷を積極的に踏んでその人がどこにいるかいつでも探りを入れなければ、お互いいつまでも別世界でぶつかり合うだけなのだ。私はこと認知症対応については一つプライドと自信を持っている。それは経験年数だけでは編み出せない情報や想像のセンスが問われるのだが、つまりそういう面において自信を持っている。
じゃあこの帰宅願望の場合、不穏じゃなかった方法より、一般的対処法より、ただ相手を受け入れることが一番の得策であると考えている。
例えば帰宅願望一つにしたってなぜ帰りたいかにスポットを当てなければならない。彼女たちには帰る理由が必ずある。でも、誰にだって本音は出さない。認知症だからではなく人間だから。こちら(介助者)の言葉が通らないんじゃない、私達が現実にいる場所と認知症の人がいる次元が違うのだ。純粋に言葉を信じて欲しい。「こどもがお腹をすかして待っているのよ」「早く帰らなきゃお父さんに怒られちゃう」「母親が危篤状態なんです」、彼女たちがいる世界は本当にこういう世界なんです。認知症的パラレルワールド、つまり場所も時間も現実とは違う世界にいるのだ。どこにいるか探してあげなきゃ掛ける言葉も違ってくる。想像する、想像する、そしてただ想像する。

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