訥々と。

ガラスのような季節の変わり目の空をスルスルと烏が泳いでゆく。
公園に差し込む日差しは三十五度の斜面。
朝っぱらからコンビニの缶チューハイを流し込む様子はあなたのその控えめな様相も合間って、逸脱を感じない。
その華奢で白い指と指の隙間から見える過度なアルミのデザインが陽の光を明後日の方向に跳ね返している。
工事現場で従業員が準備体操をする声が聞こえる。
街の余白が徐々に埋められてゆく。
吐く息の白であなたが呼吸していることがわかる。
アルコールを孕んだ呼気が美しさの均衡を乱している。
マフラーにたわむ髪の毛は陽の光で茶色く透き通っている。


それはなんだかとても、どこにでもあるようで、それでいて
もう二度と、どこにもないようだった。
ただ、その光景を焼き付けたいはずなのに
まだ見ぬ空想のエンドロールばかりを目で追ってしまう。

もう二度と、どこにもないだろうに。
今、僕はそこにいることすらできずにいた。