気になる業界の入り口。

17歳のころ、閃光ライオットというイベントに出て準グランプリをもらった。
当時、TOKYO FMとソニーミュージックが合同で閃光ライオットを運営していて、それはそれはちゃんとしたイベントでした。
スクールオブロックという伝説的ラジオ番組から生まれたそのイベント。
音楽をやっていきたいなぁ、いけるのかなぁ。くらいしか思ってなかった俺たちにはまるで灯台の明かりのように道筋を示してくれたイベントでした。

まだ世間知らずの俺は「よくわからんがすごそうな感じがするなぁ。」
なんて呑気なことを思いながら決勝の舞台に挑んだわけなんだけども、出演者も企画側ももうそれはそれはピュアな人とピュアな志で満ちていて、なんとも素晴らしいイベントでした。

で、決勝に出場する、となってくるとソニーのSD(新人開発)の部署の人からもちろんお声がかかるんです。
けど、やっぱりそこには賛否両論みたいなことがあって
「あんまり何もわかってないうちにレコードレーベルに所属すると飼い殺されるよ!」
なんて物騒なことをいう人もいたり
その逆で
「レコード会社から声かかったん?すげーやん売れてまえ売れてまえ」
みたいな楽観的なことをいう人もいたり
正直な話、子供の俺らからしたらなんもわからんのです。
挑戦せずに、その世界を見ずに断るのもなんか違う気もするし
ただ、乗っかるのも違う気がする。
ただ、なんか漠然と警戒心はある。大人とか嫌いだし。みたいな。笑

俺らの担当のSDの人はSさんという人でした。
俺らが関わる初めの業界の人。でした。
当時俺の持ってた業界の人のイメージってアーティストを「型にはめる」人
っていう謎のイメージがあって、売れるためにはこうしないと!だとか、歌詞とか曲調とかに口出しして来たりするんだろうか。とかそういう風に思ってました。
Sさん、ガタイがよくて一見コワモテ。めっちゃ喧嘩強そう。
だけど道筋を順序立ててわかりやすく話そうとしてくれるし、白黒はっきりしてる。多分この人、嘘つくのめっちゃ苦手なんだろうな。顔に出そう。
そして夏が似合う感じの、ナイスなおじさんでした。クセは強め。
一風堂のラーメンみんなで食べにいった時、一人で海苔5人前トッピング注文して、ラーメンのスープ真っ黒になってた時は内心ほんまにやばい人なんちゃうかなと思ったりもしたけど(今思うと1人前につき海苔1枚やと思いはったんかな。)
まぁ、なんせ直球でいつもぶつかってくれるし、正直やし、当時とんがりすぎて自分の世界観の中だけで生きていた俺なんかとよくもまぁ根気強く話をして、聞いてくれたと思います。
結局、結論としてブライアンはSDとは契約しなかったんですけど、理由はバカみたいな理由で、この先例えば上手くいったとして、メジャーが決まりました!ってなったとしてもSさんと仕事できるわけじゃないんでしょ?じゃあやだ!
っていう理由でした。子供か。子供やねんけど笑
知らぬ間に絆みたいなものが芽生えたりしてたんでしょう。

当時Sさんに言われた話で心に残ってて今も大切にしてることは
「俺らも正直なところ何が売れるかとかは確信を持ってわかってるわけじゃないねん。だからお前だけは自信持っといてくれないとあかんねん。音楽はね、いいと強く信じてるやつが強いねん。」
という話でした。
今でも時々思い出します。
ミュージシャンってのは精神世界の住人で
それを物理的なものに変換するのがレーベルや事務所の人の仕事なんだと思います。
じゃあ、俺が、いやぁほんまに自信なくて、、、てなってたらそら誰もそんな船怖くて乗れやせんな。と。
で、この話って何にでも繋がってて。
結局のところ、メジャーがどうとか大人とかそういう話じゃなくて
自分で決めて、自分で進んでいく力がないと
で、自分が進んだ道を正解にするだけの強引さとパワーが必要。ってこと。
本当に自分のことを客観視して、進みたい道を進む理由に「逃げ」が入ってるなら、それはどの道遠回りになるってこと。
間違いを間違いと瞬時に認める瞬発力と、正解に向かって突き進むパワーの両方がめっちゃ大事。

「飼い殺されるから。」とかっていう発想も、一方ではそれを回避して違うやり方をする力強さと、一方では怖いから避けるという弱さがあるし
「レコード会社すげーやんいっとけいっとけ」っていう意見にも
後ろ盾があると思い込んでいることによる自分たちでの頑張りからの逃げと、追い風としていろんな人の力を借りてでかく跳ねたいという前向きな強さがある。
どんな意見にも真反対の要素は含まれていて、自分が選んだ回答のその理由に逃げがあるのならそれは後悔する可能性が上がる回答やし、前向きな力強さの方にかけたいのだとしたらそれは失敗しても後悔しない可能性が高い。

結局、一番あかんのは、選んだ道が間違っていたんだと頭ごなしに決め込むことで道を選んだのが自分やってことと、その道を選んだ理由がなんやったんかを省みないことやと思うな。
失敗が恐ろしいんじゃないねんな。恐ろしいのは、自分の失敗を自分の経験としてフィードバックできるチャンスを何かのせいにしてミスミス逃してしまうことなんやと俺は思うねん。

俺はSさんをソニーの人やからという目で見たことはないし、一人と一人でありたかったし、そうさせてくれたからこそ大事なことが山ほどわかったよね。
だから、そういうタイミングで悩んでるバンドマンがいたら言いたいのは
どの道も間違いじゃないけど、あとで誰かのせいにせんようにだけはせないかんよね。
それを覚悟というのかも知らんし、俺はそんな大げさなことやとは思ってないけど。
Sさんはいつも呆れるほど正直やった。
だから、生きにくそうやったし、俺はその姿がとても美しいなと思ってた。
から、自分もそうありたいと思った。不器用でもいいんやと思った。

なんせ、なんにでも
いい側面と
ちょっとだるい側面
はあるもんです。
でも、どっちかしか信じないでいると栄養偏るよ。
って話やんな。

あと、物事って、点だけで終わることってほとんどないから。
必ずどっかに紐付いてる。
着水した瞬間だけが結果なんじゃなくて、その波紋も、その波紋によって起こるほんの些細な環境の変化さえも結果やから
〜でした、まる。
で終わることなんかほっとんどない。

そう思って自分を生きると、なんだか物語性生まれて楽しいよね。

いつもいつも、そうだけども
選べるんやから人は。
向こうも、選べるし、こっちも選べる。
縁ってのはお互いが選びあってる奇跡のバランスで成り立ってるもんなのだ。
自分だけでも相手だけ、でも成り立たないから
難しくて、素晴らしいのだ。