右手っしょおじさん

ギターを始めたての頃、よく出現するのが
ギターは右手っしょ派のおっさんである。
通称右手っしょおじさんである。
「いい音出したいんだったらストロークを研究してごらん。」
という言葉を右手っしょ。に集約して叩きつけてくるおっさんのことである。
まだストロークもままならない若者をつかまえては
右手っしょ。を吹き込むのである。そして、ジャガジャガと大きな音でストロークをして見せるのだ。
ただでかい音を聴いて「すげっすね!」と息巻いた若者はさらに下の世代に右手っしょ。を吹き込むのだ。そうして右手っしょ派は増えてゆくのだ。
その派生系に
エフェクターはBOSSで充分派
アンプはJC(ジャズコーラス)で充分派
音楽は魂でならせ派
のおっさんがいる。

いや、確かにそのおっさんのいうことは間違ってないし、俺もたまに後輩とかにいう。
右手っしょ、もBOSSっしょ、もJCっしょ、も
何回も口に出している。
知らぬ間にそういうマインドに入ってる時がある。
(あれ、、、おかしいなもしかして俺も右手っしょおじさんだと思われるかも、、、いや、そんなわけはない、、、はずだ)

右手っしょおじさんも、右手っしょおじさんになる前はミュージシャンを志す善良な市民だったのである。

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ある日、バンドの練習をしている最中、音作りがうまくいかないということでメンバーと難しい空気になってしまう。
自分の手持ちの楽器では、どうしてもその音作りからは抜け出せないのだ。
そして、どうすればいいのだろう、、、と赴いた楽器屋で運命の楽器に出会う。
右手っしょおじさんになる前の若者はそこで一念発起するのだ。
「うちのバンドはこっからが大切な時期なんだ、、、とても高い楽器だけどこれは自分への誓いとして買うべきなのかもしれない。」と。
そして、24回払いのローンでギターを購入するのである。
次のスタジオ、その決断と覚悟をみたメンバーも色めき立ち運命の音出しである。
アンプからは楽器屋で聞いた音とはなんかちょっと違うけど、でも確かに前回に比べると間違いなく問題点が改善された音が出ているではないか。
その音を聴いたメンバーは「やっぱすげっすね。高い楽器っていい音するんだーなー」
なんて言いながら、モチベーション高く練習することができて、右手っしょおじさんも「楽器屋で感じた感覚と少し違うな、、、」なんていう不穏な影を忘れて練習に没頭するのである。

しかし、楽器の恐ろしいところはここからで

しばらくするとまた
「なんか、ちょっと今日のライブ音難しかったよねー。」
「右手さんの音ちょっと痛かったっす。」

というタイミングがやってくるのだ。
そしてまた右手っしょおじさんは楽器屋へ足を運び、次はアンプのコーナーの前に立っているのだ。

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とまぁ、右手っしょおじさんはこのように何周も何周もしているので
ある程度の結論に行きついている。
楽器は「良い」「悪い」ではなく
「適材適所」
である。と。

そして、技術によってポテンシャルをしっかり引き出さないと、その適材も適所もわからないのは事実なのだ。

右手っしょおじさんは、経験と前提をすっ飛ばして
まだ20代もそこそこで機材ジプシーをする前の若者たちに
右手っしょ。と言ってしまうから妖怪扱いを受けるのである。

師匠、になるか、右手っしょおじさんになるかの分かれ目はそこである。
「実際すげぇ。」かつ若手の可能性をちゃんとフルで考えれた時、右手っしょおじさんは次のフェーズに入ることができるのだ。





そして何が言いたいというと




私は猛烈に、アコギが欲しい。






全国の右手っしょおじさんに一言いいたいのだが
右手で解決しない問題もある。







この文章を書きながら、心のざわつきを覚えていたのだが
今のフレーズを書いていてそれが確信に変わった。



右手っしょおじさんって俺のことだわ。