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むずい

ヨルシカの「だから僕は音楽を辞めた」という曲を聴きながら、ひとつきほど前に始まったリレー小説の終盤を書いています。

えっと、むずい。

カナという登場人物にしゃべらせる台詞が難しい。感情を同期させるのがとっても難しいです。いやぁ、参ったなぁ、困ったなぁ、でも内心、実は楽しんで悩んでいました。会社の会議室で。一人で。仕事せずに。

すると、会社の事務の子が会議室に入ってきました。

「あ、いたんですか、びっくりした」

「うん。おったよ。」

しばらく沈黙の後、なかなか会議室を出ていかないので、

「どしたの?」と、訊きました。

彼女は少し黙ったあとに、


「えっと、なんか、すごくアンガーマネンジメントが難しいんすよね。」


と、答えました。一人になろうとして会議室に入ったものの、一人で難しい顔をしている僕を見つけてしまい、ポロリと心情を吐露したわけです。ご飯を食べているときに、突然乳歯が抜けるみたいな感じかなぁ、と思っております。

話を聞くと、社内のとある人の物言いが、言葉遣いが、いちいちカチンと来て、我慢することに疲れている、ということでした。

アンガーマネンジメントって、むずい。と、思う。

本当の意味は違うんだろうけど、ちまたに流れているアンガーマネンジメントの雰囲気ってなんだか我慢とか、受け流す、とかってニュアンスが有るような気がする。本当は違うんだろうけど。知らないんだけど。

だからその彼女も、「アンガーマネンジメントが難しいんすよね」というフレーズになったのだと思う。

僕も結婚をしてさんざんイライラすることがたくさん起きてきて、それはまぁお互いさまなんだろうけど。まぁ、いらいらすると、だいたいそれってイライラしている側が損をしてるってことだと思うのです。、だから僕は、イライラする原因の方を考えてみるようにしました。

今までは、イライラすると、そのイライラに支配されて終わりでしたが、今はちょっとそのイライラを感じながら脇にそおっと置いておきます。お湯でいっぱいのマグカップをゆっくりベットサイドに置くように、そおっとです。そして、なんでいらいらするんだろう、と脳の別の部分で考えるようにしました。

そしたらイライラの理由がなんとなくだけどわかるようになってきます。自分はこういうのが嫌なんだな、と、ちいさなポイントが明確になってくるわけです。

結婚していると、タオルのほしかたとか、便座の上げ下げとかそういうことで殺し合いになることってありますよね。なんで便座が上がっていたら、タオルが変な干され方してたらイラっとしてしまうんだろう。

イライラを感じるだけじゃなくて、イライラに何故をぶつけるわけです。イライラは「何故」に弱かったりします。考えているうちにいつのまにかイライラが通りすぎていたり、溶けてしまっていたり。

逆にイライラする自分側の原因がつきとめられた時には、ラッキーだと思うようになりました。だって次からイライラしなくなりますからね。原因がわかれば。イライラさせる相手が悪いのはそうなんだけど、イライラするのは自分の中に原因があるので、そのレセプターをどうにかしましょうかっ、という話ですね。

ほら、パブロンかコンタックかなんか知らんばってん、レセプターブロックが作用してとかなんとかコマーシャルで言いよんしゃあやろ。それたい。ただ、レセプターをブロックしてしまうと、ずっとブロックしなきゃいけなくなるので、ブロックはしないです。

と、いうようなことを話すと、すっきりしたように彼女は部屋を出ていきました。

いやぁ、それにしてもむずい。

◇不確かな約束◇ 第9章 むずい。むずいぜ。むずいから楽しい。



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