滋賀は米原の醒井宿には、湧き水からなる地蔵川という川が流れております。　

ころぽろさらくる
ぽこるところさら

その涼しくしづかな水音は、いまもむかしも街道にちいさく響いております。

そんな地蔵川には、はかなげでかわいらしい水草が、まるで草原の風になびくように、きよらかなつめたい水にたゆたっております。

そしてその水草は、花を、咲かせます。

梅のようなちいさな白い花を、きよいみなもの上や、きらきらとした水中に咲かせ、その花びらを風や水になびかせるのです。

水にふれると、びっくりするほどきりりとしています。　ひんやりとしたやさしい風が、頬や髪をなでてゆきます。

醒める井、という名前に、思わず何度も頷きます。

白い花を咲かせるこの水草の名は、

ばいかも。

梅花藻。

小さな花が、涼をすずやかにおとどけします。