見出し画像

#一日一短歌 2022年6月分

6/1 晴れ渡らないまま揺れる感情を恋と名づける 夏がはじまる
 じわじわじめじめ忍び寄ってくる夏に、せめてもの区切りを設けたい。

6/2 シャンパンの泡は真珠で途切れないものなどないと思い知らされる
 しゅわしゅわしてるのを見るの好き。

6/3 世界ならきっと変わるよ肉体は脆く飛び散り要らなくなって
 早く授業もアバターで受けられるようになるといいよね、とよく生徒と話す。肉体が要らなくなる日はもう近いんだろう。

6/7 くたびれたわたしを映すマルーンの丁寧に磨かれた側面
 阪急電車の車両はいつ見ても本当に美しく磨かれていて惚れ惚れする。

6/7 今日はどの歌から始めよう 音が跳ねる 言葉が降る 揺れ動く
 子どもたちを送り出して、イヤホンをつけるところからわたしの一日が始まる。お気に入りのプレイリストをシャッフルして、どの曲から始まるか、毎日わくわくする。

6/7 どこまでもヒトでしかないだれからも教わらずとも知る愛しかた
 動物としてのヒトと、理性ある存在としての人との違いを考えた。

6/7 薄暗いホームを抜けて地下鉄は青空に噛みつかれてしまう
 地下鉄が地上に出るとき、青空が眩しすぎてまいった。

6/9 何色に染まればいいのレイヤーが重なるトランスペアレントのまま
 トランスペアレント、って単語が強すぎる。なんかもうちょっと上手く言えんのか。

6/13 終末に咲く花の色 数日は痛んでそうな逆剥けの傷
 痛い痛い痛い。

6/14 くだらない嘘もスパイス笑ってるきみのお皿に盛るのは愛だ
 好きだから毒は盛らないで。

6/14 羊水で満ちた世界だ生ぬるい嘘に浸した身体が重い
 羊水の中で生き続けることはできないから、どこかで抜け出さなきゃいけない。

6/14 押し黙るきみが怖くてほんとうのことを知らずにいたい 星屑
 この最後に名詞をもってくるの、時々自分の中でブームがくるね。

6/14 永遠の星になったねそんなにも瞬かないで 目を奪われる
 叶わない恋を星にする癖があることに気づいた2022年だったんだけど、こんな歌をいくつも詠んでいます。

6/15 選ばれたい誰かひとりの星でなくみんなの星になってもみたい
 誰かひとりの星であり続けることもとても稀有なことだと分かってるんだけどさ。

6/16 非暴力非服従では立ち上がれないよ何かに縋りつきたい
 そういう思いになるたびに、ガンジーってすげえなって思う。

6/17 知らないとしても許されない 月が綺麗だなんてなんで言ったの
 知らないなら余計許されんよな。

6/20 続くのは日常だから溶けそうな朝にパステルカラーの輪郭
 だいぶ暑くなってきた頃、朝の熱がひんやりしたビルをぼやかしてたような記憶。

6/20 繋がらない電波を掴むために手を振り続けてるそういう世代
 携帯を掲げて振ってたよね、みんな。あれって意味あったんだろうか。

6/20 その歌は言葉を花に変え淡い色のリボンでそっと束ねる
 素敵な短歌や歌詞に出会ったとき、その言葉の連なりはまるで自分に贈られた花束みたいに思う。優しくぎゅっと抱きしめたい気持ち。

6/21 きみだけを失くしてしまう日本橋駅名標のmの発音
 日本橋も難波も上本町も、なんでmが入ってしまうのか。

この"m"のことですよ、わかりますか これが少し苛立つという歌でした

6/22 人生はまるいおにぎり何もかもうまいぐあいに転がっていけ
 急な雨で幼稚園の登園手段を変えざるを得なくなったので、子が軽く登園拒否状態になった。それでも余裕ある態度で接することができたのは、多少親として成長してるんだろうな。

6/23 今よりも好きになったら心から身体が剥がれて歩き出せそう
 なんかそういう哲学のジャンルあったな……

6/24 建前を剥く強い風もしかしてここだけ低くなってる気圧
 風は気圧が高い場所から低い場所に向かって吹きます(地理)

6/27 ぼくたちはみんな原石 磨かれずそのまま朽ちていくこともある
 単なる石として生きていく覚悟もしないといけないのかなあ。

6/27 みちみちに詰まったいのち眩しくて眠るふりする通勤電車
 確か幼稚園児か小学生の集団に出会った朝だったんじゃないかな。電車で遠足、都会っ子の特権ですね。

6/27 ポルノグラフィティ「アゲハ蝶」のリリース日だったので、『アゲハ蝶』をモチーフにした短歌を詠みました。

いつまで経っても最高に名曲 だいすき

6/28 乗り換えがうまくできない感情は梅田の駅のどこかで迷子
 もうさすがに梅田駅で迷子にはならない。いろんな意味で。

6/29 あなたにはわたしの痛みは分からないのに押しつけていたいの、いたい
 そういうことするとこっちもあっちも痛くなっちゃうからやめた方がいい。

6/30 誰にでも好かれるきみがたまに言う悪口 わるいくちがかわいい
 夫は結構文句言いなので、これはフィクションです。いつまでも小さなことに怒れるのは、メンタルが若いゆえのことだと言い聞かせてる。


 半年前に何を考えていたかなんて、短歌がなければ忘れていたと思うので、短歌詠んでてよかったなあってつくづく思う。まあ、詠んだ短歌がすべてその時の感情をもとにしたものではないけど、その日の何かがきっかけになって詠んでることは確かなので、「なんとなくこんなことを考えてたなあ」「こういうものを見かけたんだろうなあ」っていうのを思い出せる。主戦場であるTwitterは様変わりしちゃったけど、この頃と変わらずまだ一日一短歌やってるよ。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?