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#一日一短歌 2022年9月分

9/1 小さめの石をいくつか積む きみが死なない今日であってほしくて
 一年で一番子どもの自殺が多い日だという。きれいごとかもしれないけど、悲しい気持ちになることから少しでも遠ざかってほしいと思った。

9/2 生ぬるい世界の風に満たされて止まらぬ汗を拭えもせずに
 9月の大阪はまだ真夏なんよ……

9/3 ぬばたまの闇を歌って 狂気すらあなたに頭を垂れる眷属
 ポルノグラフィティの闇曲(メビウスとかFade awayとか鉄槌とか)大好きなのでもっと歌ってください、という短歌です。

9/4 ぽたぽたとこぼれる愛をあまさずにすくってほしい 鰓の蠢く
 鰓(えら)っていつも一瞬読めなくて「?!」ってなる。

9/6 晴ればれとしすぎる青の鮮やかなブルーシートに覆われた屋根
 数年前の大阪の豪雨災害の爪痕はまだ残ってるのが、電車の車窓からいつも見える。

9/6 恋にしてしまえばたぶん簡単で自分勝手な愛し方でも
 でも恋というにはあまりにも一方通行すぎるから、恋とは言えない。

9/7 やわらかい気持ちでいられますように願いを込めたでかいおにぎり
 子どもたちにお弁当を作ることがまだたびたびあるんだけど、家じゃない場所でお弁当箱のふたを開けたとき、ちょっと嬉しい気持ちになってればいいなって思う。大したものは作れないけど、おにぎりがでかいだけで気持ちが前向きになったりするじゃん。

9/8 ポルノグラフィティの23周年記念日なので、デビュー曲『アポロ』と、2人体制になって最初のリリース曲『シスター』をモチーフにした連作を詠みました。

ポルノグラフィティ史上最高のラブソングだった『アポロ』
この曲に漂う寄る辺なさがたまらなく好き
不安も期待もすべて飲み込んで漕ぎ出す決意をしているのに


9/9 唐突に終わった恋を葬って祭りのあとの町のしずけさ
 あんなに好きだったのに急に心が凪いだ瞬間があって、ああもう何もかも終わったんだなって実感した。

9/10 月よりもきみに会いたくなったからこんな明るい夜にひめごと
 ひめごと、ひらがなにするとなんてかわいいんでしょう。

9/12 首筋に瞳に胸にきみの痕こんな大きな傷つけないで
 でも傷つけられた方が嬉しいのもわかってる。

9/12 さようなら、夏 さようなら、半袖のきみと永遠みたいな恋をしたこと
 なんかめちゃくちゃ字余りだね?! おそらく意図的なんじゃなくて数え間違えたんだろうけど、これはこれ以上削ったり変えたりできないな。

9/13 ポルノグラフィティの言わずと知れた名曲『サウダージ』のリリース日なので、曲をモチーフにした連作を詠みました。

でも本当にこの曲の歌詞が完全すぎてもうどうにもならないって思った

9/15 恋人も仲間もいなくなった朝ひとりで晩夏を謳歌する蝉
 そういう蝉って長生きだったりするのかな。

9/15 平等に終わる命と知りながら真夏と同じように鳴く蝉
 子どもが通う幼稚園の近くにやたら蝉の多い木があったので、この頃まで蝉の声を聴けたんだった。

9/21 さかさまになったら夢が現実に現実が夢に(どちらも地獄)
 どっちに転んだって地獄は地獄なこと、あるよね。

9/24 しあわせに暮らしてますかあの春のハッピーエンドのずっと先まで
 わたしがいなくてもハッピーエンドを迎えたらいい。

9/24 ボルドーの花束を抱く空はもう秋の装い風の冷たく
 メイクでも服でも一年中ボルドーは好きなんだけど、改めて秋のボルドーはいいよなあと思った日。

9/24 変わりゆく景色を重ね車窓にはグラデーションの青がきらめく
 秋の夕暮れを電車の窓越しに見るのが好き。

9/24 音もなく忍び寄る秋あいかわらずきみに近づけないままの日々
 この秋みたいに忍び寄れたらよかった。

9/24 約束を果たせないから終わらない夏 夜の海だけがつめたい
 でもやっぱり昼の海にももう入れないのよ。

9/26 満たされることがなくても繋がれる糸を信じてしまう 愚かだ
 愚かだねえ~!!!!それだけ強い気持ちとも言えるし、現実を見ていないとも言える。

9/26 いくつかの正解を通り過ぎていく世界の果ては間違いだらけ
 果てにたどり着くまでに正解に行ける分岐点を通ってきたはずなんだが、振り返ってみないとわかんないもんなのかな。

9/26 良く言えば共存 互いの心臓を握り合うたび痛む喉奥
 悪く言えば依存。自作ながらたいへん好きな歌です。

9/26 運命の鎖じゃらじゃら百均で売ってるみたいな素材の音だ
 意外と近くで売ってるかもしれんよ。

9/26 わたしとは違ういきものなんだよなきみは影にも光が射して
 きみはほんとうにまぶしいひとだ。

9/27 突然の雨に降られる鈍色の街にそびえる明らかな夢
 「明らかな夢」ってなんだよ、ってちょっと笑ってしまった。雨でも晴れでも曇りでも、この町からはいつもハルカスが見える。

9/28 あれも秋だった 両手を離さずに互いの吐息だけで眠った
 甘いくせに少しつらい恋を思い出すと、だいたい秋の記憶なのなんとかならんのか。

9/29 噛み砕かれるのもいいね跡形もなくなっちゃえばだれにも知られず
 だれにも知られなければひっそりと終わりにすることもできたのにさ。

9/30 終わらないものなどなくて女郎花つめたい空に夏を弔う
 女郎花(おみなえし)、調べて初めて名前を知ったけど確かによく見る花だ。

 つい一週間ほど前には「終わらない夏」って言ってたくせに夏を弔っちゃうあたり、本当に秋ってすぐ過ぎる。





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