マガジンのカバー画像

短歌

30
運営しているクリエイター

記事一覧

心象風景(短歌)

さわさわと風吹き抜ける草原に寝転んでいて私はひとり どこまでも平和な春が続く空さえずる小鳥静かな孤独 手のひらでまぶしい光遮ぎればまぶたに満ちる心地良い闇 雨が降る心に沁みるその音に遠いあの日の涙が落ちる 自転車で長い坂を駆け下りて風になろうよ海を目指して 淋しいと泣いてた日々よさようなら誰でもいつかひとりに還る 前を向いて心の翼広げれば空に飛び立つ私は自由

相聞歌(短歌)

ふたたびの春が突然舞い降りて僕の心はにわかにざわめく いたずらに恋は心を乱すけどときめきだけが私の宝石 忘れてた恋が今さら燃え上がりどうしようもなく君が愛しい 忘れない時がどんなに流れても忘れられないあなたのことは 今もまだ僕を愛しているのならすべてを捨てて君を愛する 道ならぬ恋と知りつつ堕ちて行くこんな二人を誰が許すの? この恋を許されないと言うのなら神に背いて堕ちて行くまで もう二度と戻ることさえかなわないあなたと二人恋の地獄へ

恋する気持ちⅡ~Forget me not~(短歌)

いつまでも忘れられない恋がある何年経っても年を取っても 叶わない想いだからすがりつく幸せなんかに用はないから どうしたら伝わるかしらこの想い言葉にしても届かないのに 恋よりも愛よりも今欲しいものやさしさだけを私にください 猫のようにただぴったりと寄り添ってぬくもりだけを感じていたい 幻影だけを愛していたのごめんなさい恋に恋して酔ってた私 君に吐く呪いのように何度でも forget me not 恋の終わりに

眠れない夜のミュルミュル(短歌)

暗闇に明滅しているテレビジョン孤独な夜のためのスタンス ぽつねんと机の上のエンベロープ誰に届けるあてもないのに 冷蔵庫の独り言を聞きながらひとり眠れずにいる真夜中 恋しいと淋しいはきっと同じこと誰でもいいよ抱いてくれるなら 今日もまたパソコンの電源を入れ仮想ライフの始まり始まり 内緒だよ眠れない夜のミュルミュル淋しがり屋になれるおまじない

ふるーつせれくしょんⅡ(短歌)

さくらんぼ拒まないでね唇をキスが下手でも君が食べたい 生首のようなスイカを風呂敷で包んで帰る夏の夕暮れ 思いきりかぶりつきたいザクロの実カニバリストになったみたいに パイナップル缶詰開ける喜びよ君に出会えて僕はしあわせ! 水蜜桃舌で味わうエロティシズム甘い素肌にとろける吐息 バナナボートみたいな月に誘われて夢の水際を夜に漕ぎ出す

ふるーつせれくしょん(短歌)

しぼりたてオレンジみたいな夕焼けに明日の分の元気をもらう まだ青い林檎のような君だから紅くなるまで待つことにする 初恋は甘くて酸っぱいストロベリーそっとキスして涙の痕に 特別な果物だからメロンメロンスプーンですくって食べる幸せ 灰色の街の中に僕もひとつ檸檬爆弾置いてみようか くちびるに葡萄の房を押し当てて冷たい君の肌を懐かしむ

悲しみの季節(短歌)

くちびるから悲しみのエコーもう二度とさよならなんて言いたくないのに 金色の雨になって会いに来て閉じ込められた私はダナエ ひとしずく君の涙がこぼれたら小瓶に入れて取って置きたい 聴こえるか心の奥の潮騒が寄せては返すこの悲しみが 思い切り泣いたらきっと海になる部屋いっぱいの涙の雨で さようなら今でも耳に残ってる別れの言葉嘘だといいのに また廻る悲しみの季節に涙して空も泣いてるどしゃぶりの午後

禁じられた遊びⅡ(短歌)

今日もまた打ち捨てられたあの部屋であなたと行ういけない遊び なすがまま私はあなたのお人形何をされても動いちゃダメよ 窓ガラス映るふたりのシルエット誰にも言えない秘密の儀式 しっとりと露に濡れてるこの薔薇をあなただけに見せてあげるわ 妖精もユニコーンもどこにもいないなくしたものは他にもあるけど 森の奥駆けてく私つかまえてあなたは狼やさしい獣 暴くなら全部暴いて秘密など私の中にはありはしないの

禁じられた遊び(短歌)

屋根裏の秘密の部屋でふたりきり禁じられた遊びをしようか 動かないで君は僕のお人形着せ替え遊びをさあ始めよう 庭に咲く色とりどりの花よりも君の奥にある薔薇を見せてよ 妖精を小瓶の中に閉じ込めてみつめるだけの恋をしている ユニコーン処女のままでいられない罪深い恋を許しておくれ スカートをひるがえしては駆けて行く君の秘密を全部暴こう

黄昏遊戯Ⅴ(短歌)

遠い空に憧れていたあの頃に戻れるような気がする日暮れ 春風に誘われ辿る夕暮れはいつか来た道やさしい既視感 涙拭いてまた歩き出す夕焼けに僕は平気とうそぶいてみる ざわざわと耳をくすぐる遠い音ものがたりのような夕暮れに 夕闇の風に紛れて辿り着こうここではないどこかの場所へ あまやかな感傷を胸に誰も皆旅人になる黄昏の刻

アリスの夢(短歌)

夢の中白い兎を追いかけて落ちて行きたい私はアリス 生卵よりゆで卵大好きよハンプティ・ダンプティ覚悟はできて 縁側で寝そべるおまえはチェシャー猫?のらりくらりと私をかわす おかわりはいかがと続くお茶会はまるで帽子屋の悪夢みたいね 生意気なトゥイードルダムトゥイードルディー私もおんなじ双子の子供 誰よりも夢を見ていた少女の頃今も変わらず夢を見ている

恋する気持ち ~Love in a mist~(短歌)

冬の空星を探して歩く君触れ合う肩にとまどう私 大切な人を静かに想うとき心の奥がほんわか温い 抱き合ってキスをするたび加速する恋の温度と二人の距離と ただ甘く咬みつくようにキスをしてあなたの他は何もいらない 好きだけど憎んでもいた君のことどうしようもない恋をしていた 夢を見て一筋こぼれた涙あとせつなさだけを胸は憶えて やわらかな君の鼓動を聴きながら目覚める朝あたし恋してる 教えてよ君の心はどこにあるみつけられないlove in a mist

空いっぱいの星を巡って(短歌)

星さえも見えない夜の底にいてお願いシリウス僕を照らして 暗闇に瞳をこらせば見えて来るきらきら光る僕だけの星 流れ星どうかお願いここへ来て君のしっぽに手が届くように 君の背に乗って夜じゅう駆け抜けたい空いっぱいの星を巡って プロキオンベテルギウスにシリウスと線をつなげば冬の三角 冴え冴えと光輝くオライオン僕に勇気をくれた英雄 星屑を売ってるお店はどこですかたくさん買って夜を飾ろう

Flowers ~冬~ (短歌)

シクラメン曇りガラスの向こうから微笑み返す師走の窓辺 気づいてよヤドリギの下に立つ私キスして欲しいなんて言えない 雪の降る聖なる夜に祝福をポインセチアの火よ燃え続けて 凛とした清楚な姿友に似た水仙の花なつかしく見る 冬椿雪降る庭に鮮やかな赤いドレスの散る潔さ 降りしきる雪の野原に舞い降りたスノードロップ天使の雫 寄せ植えの小鉢に咲いたフクジュソウ幸せ招く春はもうすぐ