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ブルース名盤紹介27 The Complete Recordings/Ishman Bracey

イシュマン・ブレイシーは
1900年頃(1989年説が有力)、
ミシシッピ州バイラムに生まれた
ブルース・ギタリスト、シンガーです。

彼はティーンエイジャーの頃には
地域のイベントや、
黒人労働者が集まる酒場で
演奏をするようになっていました。

その後、1910年年代後半、
年齢としては10代の終わりに、
同じくミシシッピ州で
隣町のジャクソンへ移住。

このジャクソンという町が
イシュマンの生涯における、
主な活動場所となります。

また、そのジャクソンで出会ったのが、
3〜4歳ほど年上のトミー・ジョンソン。
彼はイシュマンの兄気分的な存在で、
共演も何度かしています。

「悪魔に魂を売った」と言われている
トミージョンソンとは対照的に、
イシュマンは1950年代、牧師への道へ進み、
それ以降、音楽を辞めてしまいました。

そんなイシュマンの初録音は1928年の事。
場所はテネシー州、
メンフィスのスタジオでした。
初のメイン録音曲は
”Saturday Blues”
”Left Alone Blues”

癖のある、小刻みに震える声。

力の抜けた、かつ深みのある、
独特な彼の個性を聴く事ができます。

ちなみにチャーリー・マッコイという
ギタリストが、サイドで演奏しています。

続いて、是非とも紹介したい、
とても印象に残る曲として挙げたいのは、
”The Four Day Blues”

これはイシュマンのソロで
録音されています。

ギターの低音が
不思議な音程で鳴らされ、
その芯のつかめない不思議な音程感は
バリ島などの民族楽器、ガムランのよう。

そこにギターの
高音弦を使用した和音によるリフが
相の手を入れます。

途方に暮れたような脱力感で
淡々と歌われる歌。

これを聴いていると、
こんな風景を思い描いてしまいます。

夏休みの、
ジリジリと熱い晴れの日。
生茂る緑の木々と、
無造作にのび散らかした草。
永遠に続きそうな昼下がり。

どことなく、
日本的な夏の風景を
思い起こさせるこの曲。
はっぴいえんどの
「夏なんです」を聴いた時と
同じような気配を感じました。

録音された曲全般に共通して、
強く主張するわけではないものの、
その他のブルースとは
明らかに違う「何か」が存在しています。

その深く、不思議な美しさ。
イシュマン・ブレイシーの音楽の魅力は、
そういう所にあるように感じるんですよね。

とにかく、私はそこがとても好きです。

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