「ハルモニア」鹿島田真希著
そうとうロマンチックな話で、登場人物も個性的きわまりなく、その小説世界は美しい。本当の音楽大学がこのようであるかのように、音楽の世界が奇抜に描かれているが、たぶん本当の世界はこんなに美しくない。しかし、そういうリアリズムというか写実の芸術論というものにも、この小説では触れられていて、主人公トンボの書く曲は、経験的に日常生活の描写というものになっていった。一方のあこがれのナジャは、トンボから見ると音楽の世界の中だけで美しさを追求したような音楽を作曲していた。二つのやり方のどち