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話題沸騰「嘘のツアー」の謎を解く?! コミュニティ主催者で集まって、人を惹きつける"おもしろい企画"発想のコツを見つけよう|コミュニティテラスvol.2 イベントレポート

 ピーティックス ( Peatix ) のイベントシリーズ「コミュニティテラス」は、イベントやコミュニティの主催者・関係者が交流できる場所づくりを目指しています。
 コミュニティテラスvol.2のテーマは「おもしろい企画」。ゲストに、SNSで話題の『嘘のツアー』を主催し、ツアーガイドとしても活動している「マニアな合同会社」松澤茂信さんをお招きしました。話題の企画を量産しているマニアな視点を持つためのコツはあるのでしょうか。

【ゲストプロフィール】

松澤茂信(まつざわ・しげのぶ)さん

マニアな合同会社 代表社員。
2011年から国内外の珍スポットを紹介する「東京別視点ガイド」を運営。1, 000ヵ所超の珍スポットをレポートしている。
マニアが勢ぞろいするイベント「マニアフェスタ」、 マニアや専門家が案内するガイドツアー「マニアなツアー」、 話す内容がほとんど嘘のガイドツアー「嘘のツアー」など、 マニアな視点を活かした企画を運営している。
【衝撃】ガイドが嘘しか言わない「嘘のツアー」浅草で開催決定 →予約殺到の大人気に

▶Peatixグループページ マニアなツアー

珍スポットツアーのガイドもされている松澤さんは、さすが、お話がおもしろい! マニアの方やツアーを魅力的にご紹介いただく語り口に、何度も笑いが起こる楽しい時間となりました。

【質疑応答】
回答の中には、今回のテーマである「おもしろい企画」について以外にも、松澤さんが考える”マニア”や”コミュニティ”の真髄に迫るお話も飛び出しました。

Q.: 初めて「マニアってすごい」と思えた人は誰ですか。

松澤: 珍スポットの店長さんも一種のマニアの人だと捉えているんです。居酒屋「かがや」の店長さんはマジですごくてリスペクトしてますね。「かがや」は、店長のこだわりが詰まりすぎていたためになかなかお客さん来なくて、それでもやり続けていて。
 それがイギリスの「Time Out」という有名な雑誌に掲載されて、まだインバウンドが多くない時代にイギリス人観光客にブームになりました。30年近くも自分の信念を貫いてやり続けてるさまに感動しまして、自分は数年で弱音吐いてちゃダメだなって、活を入れられる思いでしたね。

ーーちなみに、松澤さんが最も「これは!」と思ったマニアさんはどなたですか。

松澤: 仲の良いマニアでもあるんですけれど、道に落ちてる片手袋を19年間研究し続けている片手袋マニアの石井公二さん
 道に落ちてる手袋を必ず写真に撮って、分類をして研究しているんです。「片手袋から人間の生活、街の価値観が見えてくる」と5年程前にお話していたところから、今は手袋の落ちていない道を撮っているんです。どういうことかというと、展望台から街を見下ろしたときに、「自分の肉眼では見えていないけど、この光景の中には何万もの片手袋が確実にある。ならば、この光景自体が片手袋ではないか」「ということは、すべての道、すべてのものが片手袋だ」と(笑)。片手袋を軸に物事を捉えているから、もう手袋が無い道も片手袋なんですよ。

ーーマニアの道は仏教の悟りの道みたいですね。

松澤: まさにそうです。石井さんの『片手袋研究入門』という本が、めちゃくちゃ偉い坊さんに気づかれ始めていて。「まさに色即是空の考えだから」って、法話に使われているんですよ(笑)。

Q.: 何がきっかけでマニアの方々を集めたのですか。

松澤: 分かりづらいんですけど、私の活動はすべてコミュニティ作りだと思っているんです。アマチュアが参加するトーナメント形式の大喜利大会「大喜利天下一武道会」は、おもしろい人がおもしろいことを言える場です。「マニアフェスタ」も同様に、そういう人が集まる場を作るのが目的なんですよね。
 『東京別視点ガイド』は、変わったお店や場所を紹介するように、おもしろい人を紹介する。マニアさんにはいろんな入口があるんですが、行き着く先はかなり似てて。珍しい店という定義ならば、全国どこにでもあるコンビニエンスストアだって、それぞれのオーナーさんが今まで経てきた人生を掘り下げていけば、すべてが珍しい、マニアと言えるじゃないかと考えています。

<マニアなツアーのPeatixグループページ>

Q.: マニアの方たちの掛け算でおもしろさを作ることもしていますよね。人を巻き込んだり、ハッピーな空気を作っていくコツはあるんですか。

松澤: 「絶対に知識量とか経験量で争わない」と明言してますね。ひとつでも好きなものがあったら、もうマニアと名乗っていいというスタンス。知識や経験を争う方がいてもいいと思うんですけど、この場はそうじゃないですよっていう。
 なんなら、本当に詳しかったり突き詰めてる人ほど「自分は詳しくない」と思ってるんですよ。謙遜とかじゃなくてマジでそう思っているんです! マニアの道のりの遠いところまで見えてない方ほどマウント取るんだと思いますけどね。珍スポットの定義や片手袋の定義が広がるのと同様に、マニアの定義もやっぱりどんどん広がっています。

ーー自分はマニアだと気づいていない人は多そうですね。

松澤: その人のマニア性を見つけられないんだとしたら、こちらの問題というか。いかに引き出すかだと思っていて。たとえばお仕事されていたら、その職業においては他の方より詳しいわけじゃないですか。仕事という括りだからマニアとは呼ばれにくいけど、それはもうマニアだと思うんですよね。全人類がマニアだと思ってるんです。それを自分の中で見つけることができているか、発言しているかどうかの違いでしょうね。

Q.: ぼくだけのマニアを見つけたいと思っています。見つけるコツがあれば教えてもらえますか。

松澤: まさにそれをまとめた本を去年出しまして(笑)。『マニア流!まちを楽しむ「別視点」入門』という本です。36人のマニアの方々が、街の中からどうやっておもしろさを見つけて、どういう活動をしているか。マニアとしておもしろいものを見つける手法をまとめた本ですね。

 コツというか、街の中で自分が疑問に思ったことをスルーしないでいると、見つけやすいかなあと思いますね。変な看板のお店とか店名を見つけたときに、ちょっと店員さんに聞いてみるとかネットで調べてみるとか、それぐらいのことを積み重ねていくと、めちゃくちゃいろんなものが見えてくる。やっぱり長年お店を持ちたいと思ってやっと付けた店名だから、店長さんにとっての意味が必ずあるんですよね。そこで変な店名を付ける人は、やっぱりおもしろいんですよ。

Q.: ツアーの企画を立てて、ロケハンやリハーサル的なこともやられると思うんですけど、当日まではどんな工程が組まれているのでしょうか。

松澤: 「嘘のツアー」は、告知した時点では歩きながらアドリブで嘘をつくつもりだったんですが、図らずもものすごい数の人たちに注目されて、メディアも入る状況になってしまったので、もっと考えてやらないとマズいと(笑)。

 まず、よそから来た人が自分たちの街の歴史を巡りながら嘘をつくわけですから、浅草で商売されている人、住んでる人たちは気持ちよくないよなと思ったんですよね。なので、まず商店主の方々が集まる会に顔を出したんですよ。そこで協力店舗が2店舗できたので、ツアーに組み込みました。協力店舗の店長さんにアドリブで嘘をついてもらって、地元の人たちと一緒にやっているムードを出しています。
 嘘のレギュレーションも、浅草寺のような、地元の人が大切にしている歴史とか文化にはできるだけ触れないことにしました。
 それからマニアフェスタの出店者に、架空の活動をやってるマニアさんがけっこういるんですよ。そういうマニアの方々4名にご協力いただいて、口頭だけではなく実物の嘘を作りました。
 そのあとはテストプレイ会を一回やって、謎解きとかマーダーミステリーのような体験型のコンテンツが好きな方が参加してくれました。テストプレイ後に「こうしたらいいんじゃないか」とか「ここの整合性取れてないから」みたいな、めちゃくちゃ細かいフィードバックをもらったので、それが役に立ちましたね(笑)。

Q.: 企画をするときに心がけている思考法はあるのでしょうか。

松澤: 企画って、当てようとして当てたわけじゃないものが多いんですよね。だから、百発百中を狙わないことなのかなあ。「お客さんが一人でもいいからやる」みたいな気持ちでいると、中には当たるものがあるという感覚はあります。

 ひとつ、ギュッと一ヵ所に集めるとやっぱり価値は出ますよね。各地、各ジャンルにいるマニアを一ヵ所に集めたから、「マニアフェスタ」は人気があるんだと思います。それはかなり効果があると思いますね。

 あとはタイトル一撃みたいなところがあって。たとえば「嘘のツアー」じゃなく、「架空の町ツアー」だったら、たぶん20人ぐらいの参加で終わってたと思うんですよ。”嘘”という、あんまり良い意味だけじゃないワードが入っているからドキッとするというか。ましてや「嘘のツアー」って、告知を始めたらすぐにメディアに取り上げられたんですけど、YouTuberの方が「この企画がなぜ人気なのか」みたいな解説動画を出してたんですよ。「待ってくれ、まだ開催していないどころか何をやるかも考えてないよ!」と(笑)。
 中身がどんなにおもしろくても結局はパッケージで判断されるし、パッケージが良いと勝手に中身を想像して解説までしてくれる。人気ってこういうことなんだなって、つくづくわかったんですよね。これはイベントの本質だなと思いますね。

Q.: タイトルの発想法はあるんですか。たくさん挙げてから考えていくのでしょうか。

松澤: あとからタイトルをいろいろ考えていくパターンと、タイトルから内容を作るパターンもありますね。「嘘のツアー」は完全にタイトルが先行です。エイプリルフールにやるとしたら「嘘のツアー」かなあと考えて、内容は決めないまま告知し始めました。

 「東京別視点ガイド」は、”別視点”のところに何を入れるかでかなりいろいろアイデアを出しました。”B級”っていうと、上が”A級”で下が”B級”という感じがしちゃうから、上下ではなく、「ちょっと他とは違うもの」みたいなことを表現したくて考えました。
 「マニアフェスタ」もけっこうリスクがあるかもと当初は思っていたんですよね。”マニア”っていう型に入れられることを嫌う人が多いというか、”マニア”っていう言葉自体も、当時は良い意味でだけ使われる言葉でもなかったので。でも一番伝わりやすいだろうと思って「マニアフェスタ」にしたら、思った以上に広がって。それはたぶん、趣味を発信して仲間が集まりやすい状況になったからでしょうね。マニア的なものが好まれる流れはすごく感じていますね。

Q.: 松澤さんにとってマニアとは。

松澤: 私にとっては人間とコミュニケーションするための手段ですね。もともとコミュニケーションが苦手で、何を話していいのかわかんなかったんですけど、マニア的なものを持つようになって人と話せるようになったというか(笑)。自分から積極的に関係を作っていくタイプじゃなくて、クモの巣を張って、かかってくれる人とコミュニケーションするみたいなタイプ。だから、私にとってはイベントってクモの巣なんですよね(笑)。

今回は「嘘のツアー」にちなみ、コンビニエンスストアのおにぎりと、それと見間違えるようなおむすびケーキを軽食にご用意しました。本物のおにぎりと嘘のおにぎり、みなさんは見分けがつくでしょうか。

【終了後のアンケート】
満足度の高いご回答をたくさんいただきました。

「登壇者との距離が近くて色々な話が聞けたこと」
「講師の着眼点の独創性/スタッフの気遣い/フレンドリーな参加者」
「懇親会があったのでゲストスピーカーや参加者ともお話が出来たところ☆」 
「今まで出会ったことのないマニアックな方々と出会えて楽しかったです 」
「何気ない日常の中、こんなことに気づく人がいるんだ、というのが新鮮でした!」

【コミュニティテラスvol.2 概要】

  • 日程 2024年4月4日(木)

  • テーマ 「おもしろい企画」

  • ゲスト 松澤茂信さん(マニアな合同会社 代表社員/「東京別視点ガイド」運営)

  • 会場 LULL TECH BEACH (ラルテックビーチ)

“人も仕事も集まるビーチ”をコンセプトとした渋谷駅徒歩3分のコワーキングスペースです。

 次回のコミュニティテラスは、6月開催予定です。登壇者、参加者の方々との交流は、その場でしか味わえない醍醐味です。機会がありましたら、ぜひコミュニティテラスにご参加ください。お待ちしております。
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