お子さんのアレルギーに悩んでおられる保護者、診療に携わる医療者の方々へ。


アトピー性皮膚炎は、予防できますか?

 もし、お父さん、お母さん、ごきょうだいがアトピー性皮膚炎で苦しんだ経験があるならば、これから生まれてくるお子さんに発症するかもしれないアトピー性皮膚炎を予防したいと思いませんか?

 「新生児期から保湿剤を全身に使うと、生後32週(=約8ヶ月)までのアトピー性皮膚炎の発症を32%下げる」というエビデンス(証拠)がありますと言われるとどうでしょう。この報告は、2014年10月に日本から発表されています。

そして、今、徐々に「生まれてから早めスキンケアを開始する」という考えが、全国的に広まってきています。すでに実行されている方も多いかもしれません。

「生後すぐからスキンケアをする」という方法は、実施することは難しくありませんし、当たり前のようにも思います。しかし、今まで一般におこなわれてきたとは言えませんでした。

なぜでしょう?

それは、いままでは、証拠 (エビデンスといいます) のレベルが高い研究結果が不十分で、強く勧めることが難しかったからです。しかし、エビデンスレベルが高い研究結果が報告されると、その方法は世界中に広まっていき、検証され常識となっていくのが医療の世界です。


ある重症アトピー性皮膚炎のお子さん。

私の外来は、連日、多くのアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息に苦しんでいるお子さん方と、その保護者の方々が来院されます。

ある日、私の外来に、2歳の重症アトピー性皮膚炎の女の子がいらっしゃいました。もともとアトピー性皮膚炎に苦しんでおられたのですが、受診される半年ほど前から、ステロイドを使わない治療をおこなう医院に受診しており、大きく皮膚が悪化してあまりのかゆみで眠れなくなった、どうすれば良いかわからなくなって受診されたのです。

受診半年前に3000以下だったIgEは、3万以上、すなわち10倍以上になっていました。

アトピー性皮膚炎の治療で心配な点をお聞きすると、お母さんは、「ステロイド外用薬は、よくわからないけど漠然と怖い」という不安をかかえていることがわかりました。

私は、ステロイド外用薬が好きなわけではありません

ステロイド外用薬は使い方を十分説明しなければならない、「とても面倒な薬」であり、副作用が起こらないように十分な配慮をするべき薬と考えています

そこで、エビデンス(根拠)やこれまでの報告に基づいた説明をしました。私は、エビデンスのみにこだわっている訳ではありませんが、エビデンスに基づくこともまた、重要であると思っているからです。

そして、「私も、ステロイド外用薬が好きなわけではありません。でも、副作用を最小限にして、ステロイド外用薬の効果を引き出す方法は知っています。でも、ステロイド外用薬は、必ず、”減らす、止める”が目標です。スキンケアを毎日丁寧にしていく必要性があります。お母さんのご協力が必要です。していただけますか?今、きめなくても結構ですので、次回また相談しましょう」とお話ししました。

次の外来に、お母さんは来院されました(内心、私はほっとしました)。お母さんの目には決意が宿っていました。

そこで、さらにスキンケアの仕方を具体的にお話しし、塗るべき薬の量や頻度を紙に書いてお渡ししました。最初は1~2週間毎に診察しました。

お母さんもお子さんも、とても頑張ってくださいました

どんどん皮膚は良くなり、お子さんは笑顔を取り戻していきました。この治療は、続ける努力をした方には、何らかの光を見せてくれるのです。

そして、その光を、ご家族は自ら引き寄せてくださいました。

3万もあったIgEは半年で1万になり、1年間で5000になり、3年間でステロイドを使わない治療に入る前の値、3000を下回りました。もちろん、皮膚が悪化していたのは経過中の最初の数ヶ月のみで、それ以降はとてもきれいな状態を保っていました。そして、今はもうほとんどステロイド外用薬はつかっていませんし、副作用も認められていません。

経過中に、心配なことに関しては、「私は、こういう研究結果からこういう治療が良いと考えています。また、経験上もこの治療をお勧めします。どうしましょうか?」とお話しながら、治療を提案・選択していただきました。お母さんは、納得されて治療を続けてくださいました。

小児科医としての私がなにより嬉しいのは、お子さんの笑顔が失われず、外来に満面の笑顔で通ってくださっていることです。おそらく、小学校入学までには、私の治療は必要なくなり、病院を卒業されることでしょう。

その途中までの経緯は、新聞にも掲載されました。

もしかすると、初めて受診されたとき、お母さんはただ疲れ切っていて、「この医者のいうことをとりあえず聞いておこうか」と思われただけかもしれません。

でも、それだけではないかもしれません。

ステロイド外用薬を嫌っている患者さんは、頻繁に医療機関を変更しているという研究結果があります。

患者さんがステロイドを嫌っている理由は、「医療不信の結果である」かもしれないのです。

お母さんは、「きちんとした根拠をもった説明を一生懸命してもらえた、だったら少しだけついて行ってみようか」と思われたのではないかと考えています。

根拠をもった説明は、医療者と患者さんの懸け橋にもなるのです。


私が集め続けた医学情報。

以前、こども病院に勤務していたときは、多くの専門医が在籍していましたので、新しい情報も自然に入ってくることも多かったのですが、今は基本的に一人でアレルギー診療を行っています。そうすると、情報が自然に入ってくることが少なくなりました。

一方で、多くの全国学会で講演を行うことが増え、次々と発表される情報を自分で整理して取り込み発信していく必要がでてきていました。それまでも自分で読んだ論文の要旨をコツコツとまとめていたこともあり、情報は蓄積されていました。そして、発表をひとつずつこなすことが出来ました。


ブログの立ち上げのきっかけ。

そういった折、食物アレルギー研究の金字塔とも言える報告が2016年3月に発表されました。私は、その発表を機会にブログに立ち上げ、備忘録として記録する作業を始めました。すると、私のブログは、徐々に医師を中心に知っていただけるようになりました。

さらにTwitterでの情報発信も始めたところ、今度は、多くのアレルギーに悩む保護者さん、薬剤師さん、看護師さん、保育関係者さんにも閲覧いただけるようになりました。

2018年9月現在、Amazonで「アトピー」と入力して検索すると、科学的根拠がない書籍が多数ヒットし、良質な書籍は一部に紛れ込んでしまうといった状況になっています。

エビデンスにもとづかない、出典も明示されていないような書籍が大半を占めているのです。

医療や健康に関して出版されている多くの書籍が、出典無く不正確な情報を元に書かれている状況であり、それらの書籍は本当の健康をもたらさないという意味で「健康本」と称されています

それら「健康本」の海の中で、良質な書籍が埋もれてしまっているのです。

もちろん、今後も新しい研究結果が出てきて、新しい知識で塗り替えることになる可能性も十分にあります。しかし、そうなったとしても。

出典が明記されていることを確認し研究結果を読む技術さえあれば。

その本が「健康本」なのか、「良質な医療本」なのかを見分ける力をつけてしまえば。

ブログ、Twitter、これからまとめていく予定のnoteの記事が、何らかの形で皆さんの羅針盤の役目を果たせれば良いと考えています

ブログ記事は、これまで通りフリーで発信していきます。

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2018/9現在、700本以上の英語論文の翻訳をおこなっています。

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私は前線のイチ医師にすぎません。医療と無関係なこともままつぶやいていますが、TwitterのみにUPしている医学情報もあります。

noteの記事は、今後考えている本のための記事ですので、ご購入頂く方々のことも考え、有料とさせて頂いています。ご了承ください。それぞれの記事のみ読みたいという方もいらっしゃるかと思い、先行配信の体裁のつもりです。



#アトピー性皮膚炎 #アレルギー


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