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シン・マリオのすすめ

全ての悩みは対人関係によるもの

これは心理学者アドラーの言葉だが、なるほどそうかもしれない。

太ってきていることが最近の悩みだが、私以外の人類がデブになればこんな悩みはなくなるだろう。
私以外の人類が貧困に陥れば、私の経済的な悩みは取り払われるはずだ。

なぜなら私は人類で最も金とスリムボディを持った男になれるからだ。きっと皆からチヤホヤされることだろう。妄想するだけでウキウキだ。

とまぁ直接関係ないように思えても、私たちの悩みは人間関係が由来しているらしい。
これが直接的な悩みであれば更に深刻になることはもう説明するまでもなく、皆さん飽きるほど経験してきたことだろう。

とはいえ一人一人の悩みは複雑だ。
これを解決することはとても難しい。

だから逆を考えてみる。
悩みを解決する方法ではなく、大元の原因である人間関係から解放される術だ。

ではこの世で最も人間関係の悩みから解放されているのは誰かというと、答えはひとつしかない。

それはバカップルだ。

彼らは人間関係から解放されている。
それもほぼ完璧に。
彼らには悩みがない。怒りもない。不安も悲しみもない。人の目を気にすることもない。ただ2人で人生の喜びを享受している。
そうでなければ人目も憚らずイチャイチャしたり、首筋にキスマークをつけた状態で職場に出勤できるはずがないのだ。
嬉しい、楽しい、大好き。ドリカムの歌でもそう言っているくらいだから間違いない。

そんな無敵の彼と彼女だが、残念ながら万能ではない。
無敵時間はおそらくマリオのスター状態よりも短い。人生という巨大なステージをクリアするにはあまりにも短すぎるのだ。最初のクリボーを吹き飛ばしたくらいでもう無敵は切れてしまっている。
そして無敵が切れていることにも気づかず、次のノコノコあたりに体当たりして死んでしまうのだ。バカだから。

ではなんで無敵が切れてしまうのだろうか。
これが今回のミソと言っても過言ではない。

それは私たちのIQの変化に関係している。

私たちのIQの平均は100らしい。
でもこれは固定されているわけではなくて、上下させることができてしまう。

バカップル然り、誰しもIQを下げた経験はあるはずだ。

例えば生後間もない子供に赤ちゃん言葉で話しかるあれ。口を尖らせながら赤ちゃんのケツにキスし、その直後勢いよく息を吐き出して汚い音を響かせるあれ。
あとは飼っている犬や猫に話しかけたりするあれのことだ。

赤ちゃんに話しかけているとき、ケツに息を吹きかけているとき、犬猫に話しかけているとき、私たちは自らのIQを落としている。

IQが100の状態であれば、赤ちゃん言葉など存在しないこと、そもそも赤ちゃんに言葉が通じないこと、犬猫が言葉を理解していないことなんてわかるはずだ。人様のケツに息を吹きかけることがどれほど失礼なことかもわかる。

それなのに、だ。
私たちはわざわざIQを落としてまで、赤ちゃんや犬猫が言葉を理解しているだの、喜んでいるだのと信じ込み、非合理的な行動に及んでしまう。
やっていることは酩酊して電柱に話しかけているおっさんと変わりがない。

つまるところ、IQを落とすことは私たちにとってとても気持ちの良いことなのだ

だから私たちはIQを落とせる対象を日常生活に求めてしまう。赤ちゃんに赤ちゃん言葉で話しかけているとき、ケツに息を吹きかけているとき、犬猫に話しかけているとき、私たちの心は満たされて、このうえなく心地よい感覚になる。

ネズミのハリボテを着た人間がいる敷地を夢の国と讃えてはしゃぐとき、ドームが埋め尽くされるほどの人数で大合唱して騒音を巻き上げるとき、酒を飲んでどんちゃん騒ぎした勢いで異性としけこみ股を開くとき、私たちのIQは激減し心は満たされていくというわけだ。

では話をバカップルに戻していこう。

IQを落とし合える他者との関係というものは、更に気持ちの良いものだ。前述のとおり無敵になれる。
だが非常に高いリスクも孕んでいる。
ひとことで言うのなら、「飼い犬に手を噛まれる」だ。

これについては良い具体例があるのでご紹介しよう。

私が小学生だったときの話だ。
犬好きを自負していた私は、下校時に犬を見つけた。その犬は家の前で鎖に繋がれており、風貌はドーベルマン風のいかつい犬だった気がする。
「わんわんだ!」
私は犬に駆け寄り、犬の頭に手を伸ばした。
次の瞬間犬は唸り声をあげながら私の手に噛みついた。手に激痛が走り、見ると手には穴が空いていた。
「このクソ犬がぁ!!」
3秒前まで「わんわんだ!」とはしゃいでいた子供の心には、怒りと憎しみが満ち満ちていた。

この現象は何かというと、犬を見た私はIQを30まで下げた。だから鎖で繋がれている理由や、犬種のことなど気にもかけずに近づいて手を出してしまった。
一方の犬は賢い犬で、IQは40だったのだろう。不意の侵入者への警戒、あるいは主人への忠義心からか、侵入者の悪意を察知して噛みついた。

わざわざIQを下げてまで愛でてやろうとしていた私は、裏切られたという身勝手な怒りでIQを100に戻した。
場合によっては中距離からの投石で犬を痛めつけたり、親に泣きついて害獣を殺処分してもらう選択肢もあったことだろう。それがIQ100のやり方だ。

つまり何が言いたいのかというと、バカップルはお互いにIQを落とし合う非常に良い関係ではある。目測でIQ5まで落とすことに成功しているのではないだろうか。
だが不意に相手がIQを100に戻したときに、あなたは裏切られたと感じることだろう。トイレが汚いだの、食べ方が汚い、抜け毛が散らばってるなどは、IQ5の時は気にもしなかったはずだ。

恋愛関係ないし人間関係が破綻する瞬間はおおむねこの時だ。

恋愛の始まりに理由はないが、終わりには理由がある。

こんな格言めいた言葉があるが、要は恋愛の始まりはお互いIQが低下しているため理由なんてないが、終わる時にはお互いIQが100、なんなら180まで無理に上げて相手の粗を見つけるわけだから、理由なんていくらでも出てくる。

私の周りにもそんな人間はいくらでもいる。
嫁への悪意、殺意を口にして、いかに嫁が馬鹿であるかを他人に広め、子供が成人した暁には離婚して自由になると公言する男。
離婚調停中の夫への恨みつらみを愚痴り、いかに相手が悪者で、自分が被害者であるかを主張する女。

ちなみにこの2人には不倫相手ないし別の異性がすでにいる。
かつてIQ5の素晴らしい関係であった伴侶を、今ではIQ180で対抗して観察し続け、それでいてIQを落とせる対象を探すというある種の習性からは逃れられないでいる。
まさに人間関係の地獄である。

人間関係の地獄とは、IQの無意識の変動にある。

習性で生きている限り、人間関係の悩みからは一生逃れられないだろう。

私たちは人間関係のストレスを受けた時に反射的にIQを上げてしまう。
太陽の光を受けた時に目を細めたり、熱いものに触った時に手を引っ込めてしまうのと同じだ。これはもうどうしようもないことだ。
けれどもIQを無理くり上げてまで戦ったり、IQを上げて悩んだりすることが地獄の始まりなのである。
マウントの取り合いやら論破合戦て、何が楽しいんですか?

大切なのことはバカップルを参考にし、バカップルからバカ要素を取り除き、意識的にIQを落とすことだ。IQを上げるのは本当に必要な時だけ。年に数回が理想だ。
そして意識的にIQを変動できる相手と出会うことができれば、それは本当の意味での伴侶や親友になれる。

つまり

偶発ではなくスター状態を自分で作り出し、それを意識して長く保つ。無敵が切れれば即座に察知し、次のスターまで敵は全て回避する。無駄な巨大化や火の玉ボールは避けてひたすら前進する。

これを私はシン・マリオと名付けた。

悩みは必要ない。
怒りも必要ない。
不安も悲しみも必要ない。
人の目を気にする必要もない。
ディズニーも、ハロウィンも、LIVEも、セックスも、酒も不要。
ただ1人、あるいは2人で人生の喜びを享受するのみ。

シン・マリオは人間関係の悩みから脱却する希望の星だ。







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