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【感想】ONE.

ブランド: novamicus(PC版)
/ ARES(Switch版)
発売日:2023-12-22

原画 : 樋上いたる
シナリオ : 久弥直樹 / 麻枝准


⚠️ここからネタバレあり⚠️






◾️ネタバレ感想

「永遠は、あるよ」は儚い希望。
永遠の正体はこれだけで十分です。


★はじめに

『ONE ~輝く季節へ~』といえば、ノベルゲーマーなら一度は聞いたことのある名作のタイトル。
未プレイ勢ながらも、Keyの『AIR』が自分のノベルゲー史の始まりの一つでしたので、その存在を意識し、頭の片隅にありつつも気づけば何年も経っていました。

そして時は巡り、今回リファインという形で本作をプレイ出来た事にまず感謝をしています。
忘れていた大きな宿題にようやく取り掛かることが出来た気分でした。

今回の感想はオリジナル版との比較ではなく、あくまで作品として、コンパクトに伝えたいことだけを語らせていただきます。
批評空間には『ONE.』の項目が無く、感想を残せていないので感情の備忘録も兼ねています。
どうぞお付き合いください。



★オープニングが強すぎる

好きです。めちゃくちゃ良い。
ここ最近の作品の中では個人的にダントツのトップです。映像が美しいとか歌が良いとかだけではなく、物語を感じるムービーなんですよ。

長森の足元がフォーカスされた映像はかなり印象的で、歩む先の景色や季節が変わっていく。
そして、白い世界は反転し崩壊した後に彩をもって再構築されていく。
ここに何か大きな意味を感じるんですよ。
つまり考察が捗るわけです。
さらにfhanaさんの歌う「永遠の光」が歌詞は作品の雰囲気と完全にシンクロして尚更に。

差し込まれるヒロインや情景のカットも消えゆくような儚さがあり、作品の世界観が垣間見えるのも素敵でした。

最後、長森が歩んだ先で立ち止った場所は日常の世界。ふと足を止めたタイミングで後ろ姿がそのままタイトルロゴに重なる。
演出としても素晴らしいです。



★プレイしてみた印象

これは未完成なのかな?って印象です。
物語の余白が多いので、最後までプレイしても結局この物語の帰結は何だったのか朧げなままでした。

ただ不思議なのは、そこにマイナスな印象を抱かなかったこと。未完成で分からないことだらけなのに、それを含め完成として捉えることができてしまう。
自分の感じてるこの感覚を言語化するのが難しくて伝わりづらいかと思いますが、一番簡潔に伝えるなら雰囲気の良さがフワッとした部分を包んでくれて「難しいこと考えずに、これでいいんじゃない?」って感じというか‥‥。

かなりポジティブな捉え方をしていると自覚してますが、なんかこの不思議な世界観といたるさんの絵、音楽と演出がツボだったんですよ。
ツッコミどころも多いですし、意味不明な展開もあって何が良かったのかも朧げなのに、好きだなって感情が優先されてしまう。
もちろん具体的な良い点もあり後述しますが、作品とのシンパシーが合っていた、相性が良かったから良い作品だったという結論でした。

恐らくかなり評価が割れる作品でしょうし、ネガティブな捉え方をしても理解できるので、結局は感覚的に、そして感情的にどうだったかが全てであったと思います。

オリジナル版発売当時にプレイされた方が受けた感覚とは恐らく異なるものだと思いますが、今プレイした新規ユーザーにも、何か共通していた好きの感覚があったのではと感じています。
うーん、かなり抽象的な言い回しになってしまいましたね。すいません。



★永遠の世界について

現実ではない安寧の世界‥‥という事でいいのでしょうか。作中のヒントがあまりに少なく、いったい永遠の世界とは何だったのかは計り知れませんでした。

主人公が幼いころ、妹との死別を経て現実世界から逃避した世界があったと勝手に解釈しましたが真偽は不明です。
ただ長森との会話中にその節がありましたので、憶測とはいえ全く間違っているわけでも無いと思います。そして、その世界へ逃げ込むのを繋ぎとめていたのがこの作品で一番大事であった、恋愛での”大切な人との絆”である。
これを恋愛物語と見るならば、「永遠」の概念としての舞台装置の役目は果たされていました。

幕間に入る「永遠」の世界にいる主人公の語り。
後々のKey作品にも継承されていくような演出で、本作では完全に暈したままで余白を残しています。
これに関しては考察を必要とするわけですが、恋愛物語としてはしっかり成立しています。

さて、本作は何に重きを置くかで捉え方が変わるように感じます。あくまで本作を泣きの恋愛物語とするならば、永遠の世界自体は存外重要ではないのかもしれません。
存在を仄めかすだけでも成立します。
もしここで永遠の世界の設定を深堀りすると、魅力であった抒情的な作品世界が崩れてしまう不安もあります。
自分としては、余白を残したからこそ魅力になっていたんじゃないかなと思ってしまいますね。

永遠の世界は“あんまり気にしなくてよい”が自分の結論です。





★茜ルートが至高だった件

個人的な感情で語るなら茜ルートが期待していたものの全てでした。端的に言って最高。
恋愛物語において儚さ、切なさを何より好む自分としてはツボで、かなり分かりやすい切なさ王道展開でした。

本作オリジナルがリリースされた時代感と現在では、泣きゲーの型はある程度出尽くしていると言えます。その為に特別に新鮮な展開とは言えないかもしれませんし、あざとく感じるかもしれません。でもそこには王道だからこその良さもありますよね。
王道の定義は期待したものが期待通りに展開される事に意義があります。
本作以降で開発メンバーが独立して立ち上げたKeyに継承されたものといえば、麻枝准さんの様式美とも言える泣き展開が王道でしょう。
分かっていても泣けるんです。
個人的にはこのKey作品泣き王道を発展させたのがサマポケだと思ってますがここでは割愛。

どうやらこの茜ルートは久弥直樹さんが手がけたようですが、ここで後々のKey作品の土台のようなものが組み上げられていたように感じました。
こういう時はやはり音楽がいい仕事しています。

雨降る中をただただ待つ、ひたすら信じて待つ。

哀しい想い出の中にいじらしさが垣間見えて愛おしい。
ピンクの傘と雨の音、来ない待ち人は好きな人、その先には…と泣きゲーの雛形ともいえるポイントをしっかり押さえた展開。音楽と絵の調和も素晴らしく、まさにビジュアルノベルの美味しいところ。読後ユーザーが感じる余韻も含め、歴史資料を見ている感覚にも近い感動がありました。

他のヒロイン達との物語もどこか儚さを感じさせるもの。それぞれのルートに後の数多の作品に波及されていった泣きの美学を感じさせ、泣きゲーの原点らしさを垣間見ることができました。
「永遠」について語られることはありませんが、繋ぎ止めてくれる何かを考えながら読み進めると、考察の沼に沈んでいきますね。


★ノスタルジーとエモーショナル

結論から言えば音楽と物語の余韻です。
『それ散るリメイク』でも感じたのですが、この頃の音楽ってダイレクトに心に刺さってくるんですよ。琴線に触れるんです。

それが最大級に発揮されるのがEDへの入り。
ED曲「輝く季節へ」といたる先生の優しい一枚絵で、物語の空白は余韻へ変わります。
これは全てのルートに当てはまることで、時を重ねたからこそ成熟されたのかもしれませんね。
オリジナル未プレイなのであくまで感覚的な感想になってしまいますが、もう永遠の正体はこれでいいとさえ思います。神懸ってました。


◾️最後にまとめ

歴史的名作をクリアできた喜びに浸っています。OPムービーが良すぎてプレイ前から何度も見返してますが、恐らくあと100回見ても飽きなさそう。

主人公が永遠を見つけて還ってきたのと同様に、自分の中の永遠も確かに在りました。

今の時代にリファインで届けてくれたネクストン様と作品に関わられた全ての方に感謝を。
またこの感想にお付き合い下さなったあなたにも最大限の感謝を。
ありがとうございました。


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