記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【感想】フラテルニテ HDリマスター

ブランド : CLOCLUP
発売日 : 2014-07-25
シナリオ : 和泉万夜 / 神堂劾 / 阿久津亮 他
原画 : はましま薫夫 他
公式ジャンル : ハピネスシンドロームADV

⚠️ここからネタバレあり⚠️







◾️ネタバレ感想

人生爆裂HARDモード。
題名がフラテルニテとは皮肉が過ぎるよ‥‥。

★はじめに

さて、何を語ればいいでしょうか。
正直クリア後の感想なんて「虚無」です。
友愛とはいったい何だったのでしょう。この結末に救いなどありません。酷いラストです。

公式ジャンルはハピネスシンドロームADV。
「fraternité」は仏語、意味は「友愛」です。
倫理道徳のひとつですが、これが作品タイトルなのは皮肉が過ぎる。
ゆえに感想なんて「虚無」です。

これは人が堕ちていく姿を覗き見る悪趣味な娯楽。
でも‥‥すんごく面白かった‥‥。


この感想記事はクリア直後に批評空間へ投稿した感想をブログ用に記事化したものです。
どうぞお付き合いください。


★物語について

とてもシンプルな物語でした。
文章も読みやすく、展開の理解もしやすい。その為、かなりテンポよく読み進めました。
ただし、圧倒的な狂気に支配され、尋常ではない恐怖を覚えながらでしたが‥‥。

中盤までは複数の視点で展開するので、主人公の行動の裏でヒロイン達がどのように行動し、墜ちていったかが把握しやすい反面、後から明かされる驚きはほとんどなく淡々と物語は進みます。
でもこれには理由がありました。

©CLOCKUP

中盤以降「別視点で始める」をスタートしてその理由を理解する事になります。
愛視点のみを過去から今まで全て見せることで、主人公視点とのズレを意図的に狙たトリックだったわけです。

「人は限られた情報の中で都合良く解釈する」

愛の発言はそう言う意味ですか‥‥。
愛は穢れていない常人だと思っていたのに、狂気の元凶は愛だと知った時は呆然としてしまいました。でもこれって振り返ればある程度は予測できた事でしたが、作品の狂気に浸っていると脳が麻痺してくるのか思考が鈍るんです。まんまとしてやられました。

そこからはひたすら地獄でした。
救いという名の悲劇なんてものじゃない。


このどうしようもない狂気の中で最も救いを必要としていたのは、もしかしたら愛だったのかもしれませんね。

愛の境遇に関してはちょっと振り返るのもしんどい。目を背けたくなるような惨さです。
彼女の歪んだ過程と友愛クラブを掌握するに至る理由は勿論フィクションですが、人間の残酷さを考えるとノンフィクションのように捉えてしまいそうになるのが恐ろしい。
生々しいんですよ。実際世に知られてないだけであり得そうな現実味があるんです。

愛本人は気づいていないでしょうが、最後の「ありがとう」に友愛による救済だったのでしょうか。

©CLOCKUP

それにしても主人公があまりに無力すぎますね。
正義感の行動の全てが悪手をかましてくるのはしんどい。
とはいえ、狂気を打開する結末になればカタルシスはあれど、ここまで心が惹きつけられ無かったというのは容易に想像がつきます。
道化のように踊らされた滑稽な姿はこの作品の真価でした。

あまりに軽薄で不謹慎な事を分かったうえで評しますが、隙など微塵もない完璧な鬱物語なのは、価値観が侵された様々な救済の形を提示した素晴らしい作品だったという事です。


★本作の狂気について

本作の狂気は幸せと同義でした。
幸せなんて人それぞれです。その人が幸せならそれでいいじゃないか。そんな言葉、本作をプレイするとあまりに「虚無」で心が揺らぎます。

もう何が何だか分らない、どうしようもない。

©CLOCKUP

洗脳されているから悲惨な状況を幸せと感じているわけで、もし洗脳が解けてしまえば、また元の地獄に逆戻りしてしまう袋小路。

本作の狂気による”精神の抉り方”は、心情を理解して胃と脳を切り刻むタイプではなく、理解困難な登場人物の状況とグロテスクな表現による直接的な暴力によって心を支配するタイプです。


前者は『WHITE ALBUM2』のようなタイプ、後者は『クロノボックス』や同ブランドの『euphoria』のようなタイプでしょうか。
これは個人的見解ですが、前者の方が圧倒的に心にダメージを受ける気がします。

©CLOCKUP

ヒロイン達の背景や思いを理解したうえで悲劇が訪れ、見出した希望のフラグがひとつひとつ折られていく絶望感が精神をズタズタにします。

本作の場合は主人公がそうでしたが、彼の無力さはリアリティに溢れ、若さゆえに行動の全てが結果として全て悪い方向に進んでしまうというのは酷な話し。
可哀想ですが当然の結果と受け止めるしかないです。彼に対して同情はしましたが、悪手は自分で招いた為に擁護は出来きないので精神を抉るほどではありません。

©CLOCKUP

やはり精神を抉るなら、ヒロイン達が理不尽な状況で悲惨な目にあってこそ。

そこに思いが乗れば尚の事。実際に物語の中でかなり酷い状況に陥りましたが、正直言ってこちらも精神を深くまで抉るにはいきませんでした。
どちらの面もメンタルをズタズタに疲弊させるものではなかったと結論付けます。
(ダメージを受けなかったとは言っていない)

ではそれはなぜなのか。
最大の理由はヒロイン達のキャラ造形が緩い事でした。
愛以外のヒロイン達は救いを求める原因や、クラブと関わるきっかけこそ描かれたものの、人物背景は深く掘られていないので、とんでもなく酷い目に合っているのに俯瞰で見ている感覚でした。

しかも救済と信じて悦楽の中にいるので、可哀そう、苦しいというより怖いが感情を支配します。
つまり浅い感情移入はしますが、深くまでに至らなかったことが功を奏し、メンタルは無事でいることが出来たのだと言えます。

これは意図的に仕向けたのかは分かりませんが、もしそうであったならプレイヤーへの救済措置だったでしょう。

もし深く感情移入してしまうほどヒロインに思いを傾けていたら、とんでもないバケモノ作品となっていた事でしょう。
正直その方が期待以上で数段評価を高くしていましたが、そうならなかったのが本作の惜しいところでした。

ただそれでも恐怖体験に変わらないので心にダメージは受けます。
この鬱展開は人によってはとんでもない劇薬で危険なものです。
プレイ時のメンタルによって、狂気に染まる可能性があります。

仮に救いを求めてこの作品をプレイする人がいたとしましょう。

救い、信じちゃうんじゃない…?

まさかですが全く無いとは言えないのではないでしょうか。人間の脳なんて解明されていない事の方がほとんどなので、誰がどう感じ、どう受け止め、どう行動するかなんて分かるはずがないです。色々言いましたが、最狂の鬱作品であった事は間違いありません。
あ、痛いのだけはマジで勘弁して下さい‥‥。


★狂気と恐怖のえちシーンについて

©CLOCKUP

実用性?無いですそんなもの。
薬漬け、グロ、スカ、凌辱、猟奇など、思い至る酷い事はほぼ網羅されてるんではないでしょうか。正直二度と見たくないシーンばかりです。

まじで辛かった‥‥‥。

自分は環境設定でグロ表現などは全部ON設定でプレイしていたので、ダイレクトに脳が犯されました。

因みに危険な表現過ぎて描写できなかった画像もあるとか。クリア後のスタッフコメントで触れられています。
ちょっと、本気出し過ぎですよCLOCKUPさん。
特殊性癖の方以外はここに期待するのはやめておきましょう。


◾️最後にまとめ

誰かを救いたいという正義感が、必ずしも善であるとは限らない。
これは話題になるのも納得の作品でした。
怖いもの見たさがあっても、プレイに躊躇する方がいるのも納得。

でも敢えて言います。
プレイするなら、まじで覚悟してプレイしてください。

ネタバレ感想なので、未プレイでこの警告を読んでる方はいないと思いますが、素直にそう思うので記載しておきます。

色々な意味で忘れられない作品となりました。
脳が破壊されるほどしんどい作品を世に送り出してくれたCLOCK UPの皆さま、作品に関わられた全ての方々に感謝を。
そして、この感想にお付き合いくださったあなたにも最大限の感謝を。
ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?