見出し画像

「目は口ほどに物を言う(仮)〜遊びのツールを制作・実際に遊んでいただきました!〜

最近、遊びを膨らませるツールの制作を行なっています。その中で「目は口ほどに物を言う」をヒントにツールを制作し、昨日開催された教育系のイベントにて初披露させていただきました。今回のブログではツールの紹介と、イベントで生まれた遊びの展開についてレポートしたいと思います。

なぜ「目は口ほどに物を言う」なのか

まず、そもそもなぜこのようなツールを制作しようと思ったのかということについて。これまで私はおもちゃ売り場や放課後子ども教室、特別支援学級の支援員、学校現場、学童保育等でこどもたちと関わってきたのですが、その都度言葉だけではない表情などを介したやり取りの大切さを感じてきました。「ウザい!」「キモい!」「来ないで!」などトゲトゲした言葉を私に向ける子たちも、表情に目を向けると全く違ったメッセージが伝わって来ることがしばしば。もちろん私の一方的な読みになりますが、そのような言動の背後にある「一緒に遊んでよ〜!」「私のことをもっとよく見てよ〜!」などのメッセージを感じ取ることにより、額面通りの解釈をしてイライラ・ギスギス・ガックリしてしまうことを回避しつつ、より温かな質の関わりを生み出すことができます。

もちろん声のトーンや間、それまでの関係性の文脈などの要素も含めて関わり合いの中で重要になりますが、「ちょっと違う視点を持ってこどもたちとの関わりを楽しんでみよう!」というきっかけになればという思いから「目は口ほどに物を言う」をテーマにしてみようと思いました。

そして、出来上がったのがこちら!

そんな思いからツールを制作。カードとチップを使って表情を作ることができるようにしてみました。顔と目のイラストも私の自作です。

↑顔はライオン風、ピカソ風、ロボット風、はにわ風など、15種類(データとしては20種類)用意しました。

↑そんな顔カードに組み合わせる目は、記号や文字を用いてみました。当初は漫画のような目を描いていましたが、目自体が表情を持ってしまって遊びの膨らみが少なくなってしまうと感じたため、このような形に。また、手チップも追加することで、目だけでなく手振りを追加してより豊かに表情を表すことができるよう工夫しました。

イベント出展前に想定していた遊び方としては、次のようなもの。

・数人でプレイし、例えば「嬉しい顔って、どんな顔?」など共通のテーマについて、それぞれが表現し違いを楽しむ
・1人が事前に「こんな気持ちを表す」ということを決めて表情を作る→周りの人がそれを当てる(ノーヒントだと難しいと思うので、選択肢の中から選ぶのも良いかも)
・相手に見せないようにお互い表情を作る→「♪にらめっこしましょ、笑うと負けよ、あっぷっぷ!」で提示、笑わせたほうにポイントが入る(複数人で行う場合、最も面白い人を投票する)

あまり厳密に「マニュアル」的な遊び方を作りたくないという思いがあり、積み木などのように遊びの文脈の中で使い方が膨らんでいけばと思いつつ、初めてに近い経験なので一応「こんなふうに遊ぶことができます」という案を自分の中に持っていました。

↑試しに、事前にカードとチップを使って表情を作ってみることに。上の画像は「あらやだ!」、下の画像は「ぷぷぷ笑」と言っているようで、なんだか絶妙に?憎たらしい感じになりました笑

保護者の方の遊び〜コミュニケーションや遊び・表現の触媒としての可能性〜

さて、そんな「目は口ほどに物を言う(仮)」を携え、昨日開催された教育系のイベントに出展させていただきました。自分で制作したものを職場で接するこどもたち以外の方々に遊んでいただくことはこれまであまりなかったため、ドキドキわくわく✨

早速、ブースに来てくださった保護者の方に「今日のイベントに参加してみた今の気分を表現していただけませんか?」と勧めてみたところ、次のような表情を作っていただけました!

会場には近隣の市町村にある多様な学びの場がブース出展しており(もちろんマスクやアクリルボード、消毒液等の対策をした上で)、カードで遊んでくださった保護者の方もたくさんの驚きや発見、学びがあったのだそう。上の画像の顔は、そんな気持ちを表現したのだとお話してくださいました。目チップを眉毛として活用するアイディアがとても素敵!

遊んでいただいた後に、「言葉で表現しきれない気持ちを表すきっかけになりそう!」「『自由に遊んでいいよ』と言われると難しいけれど、間にこういうツールがあることで『自由』が苦しい子も表現できそう!」というような感想をいただくことができました。私もこどもの頃は、ついついオトナの顔色を窺いながら「正解」通りにしなければならないと思って生きていました。そんな息苦しさを少しでも和らげるきっかけとして、このツールが役立つかも…そんな可能性を感じることができました。こどもたちだけでなく、こうして大人の方に遊んでいただきツールの可能性を見つけていただけて本当に嬉しかったです✨

「目は口ほどに物を言う(仮)」の可能性①
・言語化しにくい感情を表すことができ、そこからコミュニケーションが広がる。
・自由度が高いけれど緩やかに操作方法が決まっているツールであるため、完全な「自由」からは膨らみにくい遊びが展開していく可能性がある。

こどもたちの遊び①〜既存の絵柄を越えて、「並べる」を楽しむ〜

イベントの中盤〜終盤、幼稚園生・保育園生くらいの年代のこどもたちが遊びに来てくれました。ツールの紹介をするかしないかの段階で、早速カードとチップを使った遊びがスタート!

↑会場で撮ることができた唯一の写真。あとは私自身、こどもたちとのやり取りを夢中で楽しんでいたため撮影することができませんでした笑

こちらの画像の顔を作った男の子は目チップを使ってほっぺたや口などを表現するというアプローチを発見!顔カードの上に目2つ、ほっぺ2つの計4つのチップを使い、様々な表情を作りました。予め描かれたものに囚われることなく、好奇心や探求心に基づいて次々とイメージを膨らませながら夢中になって表情を作っていく姿に感動!そして、私が作ったツールを使って夢中になって遊んでくれたことが嬉しかったです✨

男の子の遊びを見ていた女の子(男の子と同じくらいか、少し年下)は、上の画像のように「全ての顔カードに全ての目チップを乗せる」という遊び方をしていました。おそらく男の子が編み出した「目とほっぺを表現するために、4枚のチップを顔カードに乗せる」という遊びを眺めているうちに「私も同じように、カードの上にチップを4つ乗せてみよう!」と閃いたのかも知れません。どうやら「この顔には、このチップ」という思いを抱いているようで、時折チップを並べ替える姿が見られました。私は「おぉ!できたねぇ!」などの声かけをしつつ「どんな展開が生まれるかな?」とわくわくしながら女の子の様子を眺めることに。最終的にこの女の子は全てのチップを使い切り、満足そうな表情を浮かべてブースを後にしました✨

「目は口ほどに物を言う(仮)」の可能性②
・「並べる」「重ねる」という操作そのものを楽しむことができる。
・当初は冒頭に書いたように、普段関わっている小学生くらいのこどもを想定してゲーム的な遊びをイメージしていた。しかし実際に未就学くらいの年齢のお子さんたちに遊んでいただく中で、ゲーム性を抜きにして純粋にこのツールだけを提示し、遊びの触媒となるおもちゃ的な形で活用できるという可能性が見えてきた。

こどもたちの遊び②〜物語的なやり取りの展開〜

「あ、ドラキュラだ!」「これはカボチャ!」と言いながら顔カードに興味を持ってくれた男の子(仮名・ユウタくん。年中〜年長さんくらいかな?)。様々な表情を作っているうちに、やがて次のような顔を作りました。

↑ユウタくん曰く「犬」なのだそう。「なんだか眠くなってきたなぁ〜。ふわぁ〜(あくびの真似)」と、私はユウタくんが作った顔に合わせたセリフを言いました。ユウタくんもニヤリと笑顔。

↑さらに、あくびをするときの表情🥱(口に手をあてる動き)を表すべく私が手カードを添えたのですが、ここでユウタくんから「これは犬だから、手、ないよ〜(笑)」というリアクションが返ってきました!なるほど。たしかに犬は人間のような手ではないよなぁ〜!このやり取りを通して、ユウタくんとの間に流れる空気感が解れてやり取りが広がり、しばらく一緒に遊びました。

その最中、別の男の子(仮名・リョウくん。ユウタくんと同い年くらい?)がブースに遊びに来てくれました。リョウくんは、ユウタくんが既に作り上げていた様々な顔を見ると、用意していた画用紙に何やら絵を描きました。「これ、なんだと思う?」とリョウくんが私に見せてくれたのが、下の画像のような絵(写真を撮ることができなかったため、私が描いた再現イラストになります)。

「なんだろう?大きな口かなぁ??」と私が返事をすると、「そう!口!」と言ってユウタくんが作った顔を大きな口のところに動かし、「食べちゃった〜!」とニヤリ。そう、リョウくんはなんでも食べちゃう大きな口を描き、それまで私とユウタくんとの間で展開していた遊びに新たな要素を加えたのでした✨これにはユウタくんも大笑い。

私はなんとなくの即興的なアイディアでカードとチップを使って「ひげおじさん」を作り、リョウくんが加えた新たな遊びの展開に応じることに。そして、「ワシは『ひげおじさん』じゃ!ワシが、この大きな口をやっつけるぞぃ!」とセリフを言いながらカードを操作しました。

しかし、そんな「ひげおじさん」も、敢えなく大きな口に食べられてしまいます。
よし、それなら…

「このワタクシ、『イケメンさん』が相手をしよう!」と、再び即興で顔を作り、大きな口に立ち向かわせました!…けれども、やはり「イケメンさん」も瞬殺😓
すると、ユウタくんもこのやり取りに加わり、「このロボットなら、硬いから食べられないよ」「ライオンなら強いから、大きな口に勝てるんじゃない?」と、新たな顔を作りました。

結局ロボットやライオンをもってしても大きな口には敵いませんでした😓

このことから、こどもたち(と私)は「大きな口に勝つ」というシナリオ(=ゴール指向的な展開)を望んでおらず、「作る→食べられる→大笑い→作る→…」というサイクルそのものを楽しんでおり、このやり取りが続いていくことを望んでいたように思います。そして、そんなサイクルが繰り返されているうちにイベントが終了。ユウタくん・リョウくんとの遊びも自然な流れで終了し、保護者の方と一緒に帰っていきました。

「目は口ほどに物を言う(仮)」の可能性③
・静的な遊びのみならず、物語的な遊びの中で操作をしながら遊びを膨らませる動的な活用方法もできる。

まとめ〜実際に遊んでいただいたことで見えてきたもの〜

今回こうして自作のツールで遊んでいただけたことで、私自身たくさんの学びや気付きを得ることができました。とりわけ「関係性の活性化因子となるおもちゃの可能性」「『何してもいいよ』と『これをしなければダメ』の間に位置する至適な可塑性を持ち得るおもちゃとは?」という課題意識を今まで以上に強く持つことができたように思います。「より年齢層が低いこどもたちにも響くツール名を付けたいなぁ!」「目チップを透明にしたら面白そう!」「製品化できないかなぁ」など、今も妄想を膨らませながらわくわく。それくらい私にとっても貴重で楽しい時間になりました。

実は今回「目は口ほどに物を言う(仮)」の他にもいくつかツールを展示していましたが、イベント中に片付けました。私は「遊びのための導入をする」「遊ぶ前に説明をする」というのが苦手(というより、説明によって私が遊び手を操作してしまっている感を抱いてしまいモヤモヤする)。そのため、用意したツールの中で一番「細かく説明せずとも自然とこどもたち(のみならず大人も)が手を伸ばして遊びを展開させていったもの」だけを最終的に残そうと思っていました。結果、なぜ「目は口ほどに物を言う(仮)」が最も遊びが膨らんだのか、どんな要因がこどもたちの興味や関心とマッチし、遊びの展開に貢献したのか、その理由についても今後考えていきたいです。

今回の経験を通して、さらなるツール制作やワークショップなどを行なってみたいという展望を持つことができました。これからも「Unknowability-Creator」として、不確かさや予測不可能性を楽しめる機会を創造し続けます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?