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個別銘柄分析⑧ nulab(ヌーラボ)

皆さん、こんにちは。
銘柄分析を共有して少しでも皆さんの投資戦略の一助になればと思います。
個別銘柄分析の第8弾は証券コード 5033 「ヌーラボ」です。
IT業界で仕事をしている人には「ヌーラボ」という社名よりサービス名の「Backlog」の方が馴染みがあるかもしれません。

サマリー

プロジェクト管理ツール「Backlog」の一本足打法
・2023年1月の価格改定=純利益増加に直結するため利益率は向上
プロジェクト管理ツールの日本市場は年10億円程度は成長
・低解約率が続けばまだまだ成長の余地はあると予想

事業内容

コミュニケーションソフトパッケージ開発会社。チームのコラボレーションとコミュニケーションを促進するソフトの開発・販売。
中核はプロジェクト管理ツール「Backlog」、オンライン作図ツール「Cacoo」、ビジネスチャットツール「Typetalk」、組織の情報セキュリティ・ガバナンスを強化するツール「Nulab Pass」による定期定額契約サービスを提供。クラウドコンピューティングサービス「AWS」を基盤に運営。

業績推移

売上は右肩上がりで成長を続けておりますが、倍々ゲームでの増収ではなく、毎年4億円程度の増収を着実に積み上げております。2022年第三四半期決算では売上累計は19.3億(通期進捗71%)、営業利益は0.75億(通期進捗86%)、0.54億円(通期進捗70%)となっております。
決算資料にも「売上は未達の状態が継続、コストコントロールにより利益は計画を超過」と記載されているため、通期決算でも売上は未達、利益は超過となりそうです。

第三四半期決算説明資料より
第三四半期決算説明資料より

財務状況

新興企業のため、先行投資等により利益剰余金が3億円のマイナスとなっておりますが、上場により株主資本が増強されており、自己資本比率は41.7%、現預金で16.8億円を保持していることからキャッシュは十分あります。SaaS企業のため、毎月・毎年チャリンチャリンとお金が入っているビジネスのため、営業キャッシュフローは4億円のプラスとなっており、財務は問題ないと判断できます。

マネックス社の銘柄スカウターより

今後の展開

①Backlog(プロジェクト管理ツール)
Backlogはヌーラボ社の売上の93%を占めている
ため、プロジェクト管理ツールのBacklogの成長=ヌーラボの成長となっております。
プロジェクト管理ツールの市場規模ですが、株式会社富士キメラ総研が2022年に発表したレポートによると、2021年度時点で約106.5億円でパッケージ型が47億円、SaaS型が59.5億円となっています。市場規模は2026年度には約166億円、SaaS型は111億円の規模に成長すると予測されており、年間10億円程度の成長が見込まれおります。

キメラ総研の資料より

また、スマートキャンプ社が実施したアンケート(対象人数は50人と少数)によるとプロジェクト管理ツールのシェアは1位がRedmine(20%)、2位がChatwork(18%)、3位がAsana(16%)、4位がBacklog(12%)とのことです。個人的な感覚ですと、プロジェクト単位のBacklogは複数企業が関与する案件で多く使われているため、実業務ではもう少しシェアが高いと認識しております。プロジェクト管理ツール自体の市場規模は年々拡大しており、一定シェアのあるBacklogは今後も成長が見込めると予想されますが、

②料金改定による利益率の改善
2023年1月の新規顧客および1月以降の利用料金が改定
されます。第二四半期の決算説明会にてボリュームゾーンはスタンダードプランとプレミアププランと説明されているため、料金改定により約30%程度の増収が見込まれます。今回の価格改定は売上の増加=利益の増加に直結するため、利益率の改善が見込まれます。料金改定により売上が2割増が利益増に直結すると仮定すると、通期売上予測の27.7億円のうち、約2割の5億円分の利益増加につながることとなり、純利益は6億円程度になる、と予想されます。
現在の時価総額が61.1億円(4月9日現在)のため、純利益が6億円になるとPERは10倍程度となり、今後のプロジェクト管理ツールの市場拡大を考慮すると株価は上昇余地があると思います。

③海外事業・新規事業
第二四半期の決算説明で国内事業が96.6%と説明しており、海外事業は採用・マーケティング等の拠点であるため、当面、海外事業が売上・利益に貢献することはなさそうです。
新規事業のうち、Nulab Passは順調に成長しておりますが、売上に占める割合は1%未満のため、Backlog依存の体質であることは当面変わらないと予想されます。

目標株価

株価は947円(2023.4.9時点)、PERは79.3倍と割高な水準と思っております。ただ、価格改定の影響が通期で貢献する来期は利益率の改善、純利益の増加が見込まれるため、今期純利益予想の0.7億円、来期予想(四季報)の1.2億円は上回ると想定されます
仮に価格改定分=利益増と想定すると純利益を保守的に予想して5億円、今後の成長を加味するとPER20倍程度を妥当なラインと予測すると時価総額で100億円、株価で年内で最大1,500円程度まで伸びるのでは、と予想しております。

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