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アダルト動画の世界でも「アップデート主義」が広がりつつある……のか?

 俺だって志賀直哉や谷崎潤一郎や大江健三郎ばかりじゃなく石原慎太郎も村上龍も石田衣良も読むし、じゃあついでにということで、エロ本だって愛でる。

 さらについでに、どうも時代は「動画2.0」ということらしいので、妻子寝静まった丑三つどきにスケベな動画コンテンツに触れることだって、ある。

 文句あるか。

 で、某そっち系のプラットフォームなんかをざっと流し見る。マニアックな趣味はないので、ノーマルなランキングを覗く。ふむふむ、ほうほう。

 あることに気づく。

 なんというか最近、マッサージものが人気だな。

 マッサージものというのは何の比喩でもなくそのまんまで、男性ないし女性がとあるマッサージ店にご来店→どこどこが痛いんですとアンケートに答える→着替える→施術台にゴロン→異性の施術師がやってきて……

 という、なんともくだらない内容。

 くだらん。

 くだらんはずなのに、ランキング上位を占めるそれ系の動画をひととおりクリックしてる自分がいる。

 観てみると、楽しい。楽しいというのは文字どおりじゃなくて、まぁいわゆるそういうこと。

 みなまで言わすな。

 で、考えてみて、ふと思った。

「これ、アップデート主義じゃないか?」

 アップデート主義というのは幻冬舎の箕輪さんやコルク佐渡島さんが提唱する最新のコンテンツメイクスタンス。編集者で言えば「本を作って終わり」の納品型ではなく、「作った本をフックに延々とコンテンツを作り続けていく」という動き方。

 もっと厳密には、「作ったあと」だけじゃなく、企画が立ち上がる瞬間から、人を巻き込み企画を走らせていく過程、作り上げたものが拡散されていくさま、作品をフックにしたオンライン/オフラインのイベント……など一連のアクションをつぶさに公開し知らしめていくものだ。

 そうすることで、従来の納品型なら「世に出たものを買うだけ」だった購入者が、「世に出る前から作品の制作過程に大なり小なり関わる」ことで参加者となり、徐々に熱が高まって、気づけば熱狂的なファンとなる。やがてファンはファン同士つながりを持ち、コミュニティが形成されて、ネットワークはより強固になっていく。

 で、じゃあ今回自分が要するにただのエロマッサージビデオを観て、どのへんに反応したかというと、もちろん画面の向こうでアヘ施術を受けておられた女優さんとオフラインで会えるらしいなどという夢物語なぞではなく、

 「実際のスケベな本試合」に至るまでの“過程”がつぶさに公開され、しかもそこに異常なまでにバカげた労力がかけられていて、

 その結果、観ているこっちのあっち系の熱がどんどん高まっていき、「本試合」の到来が待ちきれなくなる、

 というまさに箕輪さんが日々取り組んでいるアップデート主義をみごとに体現している点だ。

 ……などと大まじめに語ってみたが、冷静に考えると妻子ある中年が夜ごとエロビデオ観ておりますと誰得にもならないつまらん告白をnoteに書き込んでしまった、というだけの話である。

 我が生涯に一片の悔いなし。

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