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44.くりいむレモン

「くりいむレモン」というアダルトビデオがあったのを知っている方は、相当なアニメのマニアだろう。「くりいむレモン」は、1984年よりフェアリーダストが制作し、創映新社が発売した、日本のアダルトアニメビデオ作品のシリーズである。これらの作品が生まれたのは、1984年に第1作『くりいむレモンパート1 媚・妹・Baby』が最初であり、その後シリーズ化された。このシリーズ以前にも中島史雄原作作品やその他のオリジナル作品などアダルトアニメが数本制作されていたが、オリコンビデオチャートに複数タイトルが同時ランクインするなどの大ヒットによりこのジャンルを初めて一般認知させた本シリーズが、「実質上」、「本格的な」の注釈付きで「日本初の商業用アダルトアニメ」とされ、後に大ヒットするようになった。また、日本ビデオ倫理協会(ビデ倫)を騒がせた問題作として当時話題になり、ロリコン物の起こりともなった。
「くりいむレモン」シリーズは第1作の『媚・妹・Baby』から海外へ輸出されている。販売したJVDによると「アメリカにおけるロリータ・ビデオは、相当なマーケットを構成しているが、それらは実写であり、アニメものはない。その点で十分差別化されている。また、正規のルートで海外に輸出されるのも初のケース」としており、『STAR TRAP』『ホワイトシャドウ』『魔人形[madol]』は北米で無修正版が発売された。このため海外でも話題になり、いわゆる「Hentai Anime」と称された。
ところで、そのビデオを私と仲の良かったO(本人の名誉のためにここはイニシャルにしておきたい)が持っていて、観賞しようということになった。場所はテレビとビデオデッキのあった化学室である。確か5人くらいでこっそり化学室に忍び込み、観賞会が開かれた。その時、数本見たような記憶があるが、私の記憶に強く印象に残っているのは、「黒猫館」(1986年1月)である。
「黒猫館」のあらすじを簡単に説明すると、昭和16年の戦争直前の日本が背景である。主人公の村上正樹はふと見つけた新聞の求人欄に不思議に引きつけられるものを感じ、山奥の「黒猫館」と呼ばれる屋敷に向かった。そこで彼は異常な体験をすることになる。「黒猫館」には鮎川冴子という女主人がおり、華族の家柄で夜は色情狂になって、メイドのあやをペットに夜な夜な淫行に及ぶというものである。
当時は青春時代の真っ最中、みんなエロには興味がある。だが、当時はヌードの載った写真雑誌を見て妄想を膨らませるのが限界であり、動くエロを見ると言うことは、当時としては画期的なことであった。
後年、Oと18年ぶりに京都で会ったとき、実際に聞いた話であるが、化学の沖田先生が、Oの持っていたそのビデオを借りに来たという。ちなみに、沖田先生は今では教頭を務めているとのことである。サングラスのようなメガネと明らかにバッハを意識した風変わりな髪型のため、昔は暴力団関係者とも思われ恐れられていたらしい。本人は大変楽しそうに授業を行っていたらしい。
ちなみに、Oの名誉のために付け加えると、Oは単なるロリコンマニアではなく、どちらかと言うと少女コミック研究家の側面をもっており、数千冊の蔵書を持っていたヤツである。私は彼から山岸凉子の『日出処の天子』や西村しのぶの『サード・ガール』を借りては寮の消灯後も懐中電灯を使って深夜まで読んだものである。特に『サード・ガール』は寮の一部でちょっとしたブームとなり、舞台が神戸であったので、関西人の私に、関西の情報誌である「京阪神エルマガジン」を借りに来た同級生も数名いる。

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