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ショートショート書いてみようと思ってnote始めました (2024年1月~)。アイコンは模索中。気軽にフォローしていただけるとうれしいです!

最近の記事

洞窟の奥はお子様ランチ #毎週ショートショートnote

洞窟の奥へ抜けると、一人の少女がいた。 浅いくぼみが等間隔に掘られており、地面全体が大きなワンプレート皿のようになっている。そのくぼみ一つひとつに農作物・家畜・酒……そして生け贄の村民を盛り付けた「お子様ランチ」を少女へ捧げるのが、この村の習わしだった。 「どうした。今日は何も持っていないのか。」 少女が問う。冒険者たちは武器を構えた。これ以上の犠牲を払えなくなった村は、冒険者を雇い少女を退治することにしたのだ。 「……そうか。ちょうど私も『お子様ランチ』に飽きてきてな、

    • 行列のできるリモコン (2) #毎週ショートショートnote

      今日はリモコンに行列ができていた。 行列の横を抜け、部室棟になっている東館へと入る。行列の先にある部屋、そこが俺たちオカルト研究会の部室だった。 「来たな研究員!」 俺が部室の扉を開けるや否や、リモコンの持ち主はこちらのことなどお構いなしに説明を始めた。 「今月のネタは思考盗聴だ! 政府の盗聴電波を改ざんして他人の思考を操作することにした! 君も見ただろうあの行列のできるリモコンを! お年玉貯金をすべて叩いて購入したホンモノだ! あれで思考を操作するというわけだ! 早速だ

      • 行列のできるリモコン (1) #毎週ショートショートnote

        俺たちの学校は全寮制だ。私物の持ち込みは原則禁止。娯楽といえばロビーにあるテレビくらいで、しかも見ていいのは夜6時から8時までの2時間だけだ。 チャンネルの決め方にもルールがある。まず、テレビを見たい人は夜6時までにリモコンの前に並ぶ。時間になったら、2時間の視聴時間を頭数で割り、先頭から順に割り当てる。もし8人並んでいたら、1人15分、チャンネルの独占権が与えられるわけだ。狙った時間帯の独占権を得るべく、俺たちは毎日情報戦を繰り広げていた。 しかし、今日は違った。 「1

        • ツノがある東館 #毎週ショートショートnote

          今日は東館からツノが生えていた。 人だかりをかき分け、部室棟になっている東館へと入る。ツノの根本にある部屋、そこが俺たちオカルト研究会の部室だった。 「来たな研究員!」 俺が部室の扉を開けるや否や、ツノを生やした張本人はこちらのことなどお構いなしに説明を始めた。 「今月のネタは鬼だ! 鬼を呼ぶことにした! 君も見ただろうあの立派なツノを! 今日の授業をすべてすっぽかして作り上げた自信作だ! あれで鬼を呼ぼうというわけだ! 早速だが君も手伝いたまえ!」 ……この調子で強引に

        洞窟の奥はお子様ランチ #毎週ショートショートnote

          先日参加させていただいた毎週ショートショートnoteの裏お題「トロンボーンの口調」で、たらはセレクションに選んでいただきました! とっても嬉しいです! https://note.com/tarahakani/n/n40469e5fd4d4

          先日参加させていただいた毎週ショートショートnoteの裏お題「トロンボーンの口調」で、たらはセレクションに選んでいただきました! とっても嬉しいです! https://note.com/tarahakani/n/n40469e5fd4d4

          アメリカ製保健室 (2) #毎週ショートショートnote

          新しい保健室ができた。最新の設備を備えたアメリカ製だ。保健室の先生には新任の若い女の人が就いた。 はじめは目新しさから保健室へ通っていただけだった。けれども通ううちに先生のことが好きになり、その思いをついに先生に伝えた。 「私も好き。先生になったばかりで不安だったから、話し相手ができて嬉しかった。でも君の気持ちには応えられない。私は先生で、君は生徒だから」 わかっていた。でも気持ちは収まらなかった。先生が先生なのも、僕が生徒なのも、ここが学校だからだ。学校なんてなくなれ

          アメリカ製保健室 (2) #毎週ショートショートnote

          アメリカ製保健室 (1) #毎週ショートショートnote

          日本には保健室というものがある。生徒の健康を心身両面からサポートする場所で、身体面のサポートに重きを置くアメリカのナースオフィスとは対照的だ。アメリカの我が校にも生徒を精神的に支える場所が必要だろうという話になり、日本の保健室を作ることになった。 まず立地を決める。日本の保健室は風通しや採光の良い静かな場所に作るらしい。校舎から少し離れたところに離れを建てることにした。近くに花壇があるので景観も良い。 次に什器を決める。日本の保健室にはベッドがあるのだが、そのせいで生徒が

          アメリカ製保健室 (1) #毎週ショートショートnote

          トロンボーンの口調 #毎週ショートショートnote

          トロンボーンの口調が荒い。徴税人が来たのだ。 私たちの村では昔から大麦を育ててきた。大麦は痩せた土地でもよく育つ。その大麦で作った酒は村の貴重な収入源であり、何より私たちの生き甲斐だった。しかし、隣国と合併してから国は酒に重い税を課すようになった。もとよりギリギリの生活だったのだ。税を払う余裕などない。私たちは酒を密造するようになった。 酒は作るそばから樽に詰めて隠し場所へ移しているため問題ないが、密造小屋の蒸留釜は取り締まりに合わせて隠さなければならない。その時間を稼ぐ

          トロンボーンの口調 #毎週ショートショートnote

          ドローンの課長 #毎週ショートショートnote

          部下から連絡が入る。荷物を無事に届け終えたようだ。配送拠点に戻り次の荷物を届けるよう伝える。この調子なら、彼は今日中に配達を終えるだろう。 別の部下から連絡が入る。風に煽られて身動きが取れないらしい。天気予報を確認すると、風は1時間後には収まるようだ。これなら、彼を回収するより風が収まるのを待つほうが早い。風が収まるまでその場で待機するよう伝える。 さらに別の部下から連絡が入る。荷物を壊してしまったかもしれないという。どうやら、床にそっと置くつもりが、距離感を掴み損ねて高

          ドローンの課長 #毎週ショートショートnote