モノトーンの心になった私

先日、私の父が緊急搬送されて、なんとか退院してから、私の心は何を見ても「楽しい」「面白い」と心の底から思えるモノが消えました。以前から興味があった漫画などには反応はするけれど、心が動かない。

SNSをたまには見るけれど、働き方やお金の話がほとんどで、心惹かれるものは、きれいなイラストぐらい。特に沖縄の青い海には反応する。

先日の夕方、たまたま実家で娘と両親と夕飯を食べている最中に、父の様子がおかしくなった。症状としては、

・ろれつが回らない
・手が震え始めて、お箸を落とす
・口にしたお水や味噌汁をこぼす
・何か言いたそうだけれど、ぼんやりし始めた

これらが出たので、脳に何か異変が出たと母と気づいて、神戸に住む兄に連絡を入れて「すぐに救急車呼べ!俺もそっちいくから、誰か携帯は持っていけ!」と言われ、救急車を呼んだ。

救急車は連絡している間に到着して、救急隊員2名が父を運んでくれた。母と私が一緒にいくことにし、母は救急隊員から持ってきて欲しいものを聞き、私はスマホを持って、娘に留守番を頼んで救急車に乗った。

「脳専門の病院へ直行しますね」と、りんくう総合医療センターへ直行。救急車から、兄と主人に連絡を入れて、搬送先を連絡した。病院に着くと、スタッフの人が待機していて、付き添いの私達は、別室に案内されて、書類の記入と健康保険証の提示をして、2時間ほど待った。

父がICUに運ばれてから、当直医から説明を受けた。「一過性脳虚血症発作、もしくは脳梗塞」という曖昧な診断であった。なぜなら、搬送中に最高血圧が190から150まで落ちたことと、CT検査とMRI検査で、脳内の血栓などの詰まりが見つからなかったこと。

原因としては、前立腺がんを患い、ホルモン療法を受けている薬が一番の悪さをしていた。血栓ができやすく、水分をよく取ることと運動することを指導されていた。

しかし、手術を受けてから尿もれがひどいからと、水分を控えるようになり、運動量も減っていたというのが原因である。同時に78歳という高齢者で、気温差が体に影響したのも含まれる。

検査結果から、血液をサラサラにして血栓を溶かす薬を点滴として、機械で少しずつ体内に入れる処置が行われ、ICUで経過観察になった。

一晩で一過性脳虚血症発作か脳梗塞で障害が残るかどちらも言えないと言われ、どうなるのかと私の中で不安な気持ちが回り始めた。

私や娘と母といつも通りにもぐもぐ食事を取っていて、午前中は新しくできたスーパーへ出かけていた父。「なぜ?どうしてこうなるんや?」と泣きそうなのに、泣くこともなかった。

兄と主人が来てくれて、私と母が聞いた説明を聞いてくれて、「今日はとにかく帰ろう」と主人が車できてくれたので、みんなで乗って帰った。

2日後に異常が特に見られないので、一旦退院して、後日再検査をして診察を行うとなった。血液検査上、血栓は見られないけれど、今後は血栓を作らせない薬の服用となった。その代わり、出血しやすいのと血がとまりにくいので、歯磨きの力の入れ具合など諸注意は受けた。

帰ってきてから、普通に生活を再開した父だが、また発作を起こす可能性は非常に高い。だから、家には必ずひとりぼっちにしないことにしている。いつも通りの生活に戻ろうとしているのに、私の体が動かない。心が動かない。何を見ても虚しく感じる。生活から色が抜けた。

目の前で、発作を起こした父の姿にショックを受けたこと、病院での説明で生きるか死ぬかの説明を受け、不安でたまらないのを押し殺したことが今も心が動かないことになっている。

看護師さんと担当医さんが私の様子に気づいてくれて、母が私の病気を話してくれた。「辛かったね、ごめんね。で、よく耐えて聞いてくれた」と言ってくれたから、少しはマシかもしれない。

日にち薬だからどうしようもなく、心が辛い時は寝るようにして、動ける時に動くようにしている。娘や主人も助けてくれるから助かっている。

義姉が乳がんでなくなった時、涙は出たし胸の痛みもあった。父が今回生きるか死ぬかの瀬戸際にたったときは、涙も何も出なかった。冷静に説明を聞いて、飲んでいる薬や既往症の質問にも答えて、乗り切ったはず。

退院して元の生活に戻ったのに、何もかもがモノトーンの世界で、何か言っていることや書いていることが、何もかも虚しくて何もかも流してしまう。

唯一心を動かしてくれるのは「きれいな海」「きれいな絵」それだけ。

今は、あまりいろいろと見たくないし、頭にも入ってこない。とにかく、父が何事もなく過ごして、私の心が徐々に戻るしかない。

いつ心がモノトーンの世界から、色のある世界に戻るかわからないけれど、時間は相当かかると思う。人の生死に関わる体験をしたのだから、心の健康が戻るには時間はかかる。

このnote自体、今何を書いているか整理がついていないかもしれない。しかし、自分の大切な人や自分自身がいつ何時どうなるかわからない、「明日は必ずやってくる保証はない」ということだけは、知っていて欲しいと思う。

参考に、奥様が脳梗塞になられた方の手記がたまたまあったので、紹介しておく。父自体、対応が遅ければ、同じ立場だったと思う。

ろれつが回らない、いきなりの失神など、普段おき得ないことがあれば、それは遠慮なく救急車を呼んで欲しい。特に脳に関することは、対応が早ければ後遺症は残らないから。

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