国境廃止<第一章> 第六話 「月を壊した女」

一週間空いてすみません!今の忙しさがエグいので六話は短いです。
前回までのあらすじ
十年前、第三次世界大戦が起こり国境がなくなった地球。元日本である「J-17地点に住む国子だったが、国子が高校生の時に、第四次世界対戦が起こる。第四次世界対戦で母親を亡くした国子だったが、母親の残す「『α地点』を目指せ」という言葉を頼りに旅を続ける。
その中で、世界と「ココロ使い」の高市という男と出会い、旅を続けることが決定しかけたが、実はこの二人は、宗教上の関係で、対立関係にあった。この二人が殺し合いになってしまい、高市が死亡。世界は狂ったような状態になってしまう。
三人はばらばらになってしまったが、三人はそれぞれの思いを抱え、「α地点」を目指す。
そんな中、国子は「ココロ」に目覚め…

もう夜になった頃だろうに、空はまだ明るい。私の心とは正反対だ。
「はあ…」
弱々しく出るため息。やはり一人じゃ少し心細い。
『おいおい、大丈夫かよお前』
「大丈夫じゃないよあんなの見せられて」
『そんなんでアルファにつけんのか?』
「うるっさいなあ…私だって…」
そうやって言っときながら私は不安だった。たった一人で、場所もほとんどわからないような「α地点」に着けるのだろうか?と言うかそもそも私はどうやってたどり着くつもりなんだ?宛もなくたださまよい続ける?やっぱり私は計画性がない。
『本当にそうだな』
今も「ココロ」には言い返せない。泣き出したい気分だ。
『そんなそこらへんにアルファのこと知ってるやつなんていないしな…』
「そもそも人が出歩いているのかな?」
私はその場に座り込む。不安に押しつぶされるように。
『お前は不安不安って、ちったあ策を練ったらどうだ?』
「ココロ」はなぜかこういうグサッてくる言葉ばかりを発する。
「………」
私は途方に暮れていた。策?そんなものそう簡単に思いつくわけがない。ほとんどあてのない旅。まるで答えのない計算式を解いているようだ。
「…とりあえず歩こう」
『そんな事して何になる?』
「何もしないよりかはマシでしょ」
私は立ち上がって歩き出そうとしたが、誰かに呼び止められた。
「ねえねえちょっと待って!」
小さい女の子の声。振り返ると、白いワンピースを着た女の子がいた。なんでこんな子がここに?
「こんなところで何してるの?寒いし、危ないよ」
私の言葉を無視して続ける女の子。
「私はね、リンっていうの!あのねおねえちゃん」
女の子の体は、心なしか青白いように見える。何にせよ怪しい。
「おねえちゃん、あのね、私ね、お月さまを壊したの!
急に突拍子もない事を言われて呆然とする。月を壊した?本当に何を言っているんだこの子は?
「何言ってるの…?」
「お空明るいでしょ?あれ、私がお月さまを壊したから、ずっと明るいままなんだよ!もう夜は来ないんだ!すごいでしょ!」
まるで自分の書いた絵を自慢するように女の子は話す。
たしかにもう夜になった頃なのに、空は明るい。でも、だからといって、こんな小さい子が…
『国子、今すぐ逃げろっ!!』
「ココロ」が叫んだ。
「えっ!?」
「察しが良いね」
女の子の声はどす黒く低い声になった。その途端に、私の意識は飛んだ。

「さて、こいつを運ばなければ」
どす黒い声でリンは言う。すると、「お嬢様!」という声とともに、黒服の男が集まる。
「すぐに船を手配します」
「お願い。こいつも乗せて」
「了解」
「さてと、じゃあ私も乗ろうか。

『α地点』行きの船に

第一章「捜索編」完結。
第一章「完結編」開幕。

To be continued…


参考↓
漫画
「約束のネバーランド」集英社 白井カイウ 出水ぽすか
「セキセイインコ」講談社 和久井健
小説
「さよならの言い方なんて知らない。」新潮社 河野裕
この小説は、以上の作品から影響を受けています。

第一章も完結へ!七話ではついに、現在の「α地点」が舞台になります!お楽しみに!

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