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短編 「面白さ90%」

※これは最近始めたランニング後のシャワーを浴びているときに思いついたクッソしょうもないネタです。
展開、結末にくれぐれも期待はしないでください。

本編

1.友人①

「なあなあ、『不安の種』って漫画知ってるか?」
「え?知らん」
「中山昌亮さんって人が書いた漫画なんだけどさ、すげえ怖いのよ」
「ほお」
「で、その漫画のキャッチフレーズっていうのがさ、『この物語は、8割がフィクションです。』っていうのでさ、ソレがめっちゃ怖いわけよ。だって残りの2割はフィクションじゃねえってことだろ?」
「確かに、ホラーでそのキャッチフレーズは怖えな」
「だろ?あ、店員さん、ホットコーヒーおかわりください」
「あ、おれも同じのお願いします」

「おいお前何やってるんだよ」
「何って、砂糖入れてるだけだけど」
「にしても6個って入れすぎだろ」
「だってにげえからさ」
「じゃあコーヒー飲むなよw」
「砂糖入れたコーヒーがめちゃくちゃ美味いわけ」
「わからんわ……。てかさ、その『不安の種』の話で思い出したんだけどさ」
「おん」
「前本屋行って見つけた小説なんだけど、ソレのキャッチフレーズが『面白さ90%』っていうやつで」
「ほお」
「かなり薄い本だったから買おうか悩んでるんだけどさ…その残りの10%が気になって…」
「そういや西岡がその小説の話してたぞ。おれは読んだことねえけど…西岡は結構面白かったって言ってたぞ。まああいつの話ってわかりにくから---」
「そうか?」
「え?そう思ってんのおれだけかな?…まあいいや。とりあえず西岡に話聞いてみ?ちょうど明日とかあいつ昼から講義ないから開いてるんじゃね?」
「そうだな。聞いてみる」

2.友人②

「おお、お前が小説読むなんて珍しいじゃん」
「はは、おれは基本漫画しか読まねえからな」
「まあいいや。んで、あれだろ?『殺人者は何を思う?』の話だろ?」
「そうそう。あの『面白さ90%』っていうのが気になってさ」
「ああ、あれな。あれはまさに『面白さ90%』だったなあ……」
「え?なになにどういうこと?あ、店員さんおれコーラフロートお願いします」
「おれはパンケーキセットで。ドリンクはホットコーヒーでいいです」
「…で?どういうことだよ甘党西岡」
「そのあだ名やめろよ…。…まあこれはなぁ〜」
「おいおいさっさと言えや溜めるな」
「これはなぁ〜…言えないんだなぁ……」
「ネタバレできねえってこと?」
「そうそう。これは紹介すんの結構むずいからな…。まあとりあえず、読んでみ?読んだら『うわ!これは面白さ90%だわ』ってなるぞ」
「へえ〜…」

3.某通販サイトレビュー(抜粋)

「殺人者は何を思う?」 十日武石(著)
評価2.5
単行本 1540円(税込)
文庫  650円(税込)
発売日 2020年10月24日(単行本)2023年4月23日
ページ数 205ページ

★★☆☆☆ これは…
2023年5月5日に日本でレビュー済み
これはちょっとひどい。買わなきゃよかった。
内容は良かったが流石に…
一応ネタバレは避けるが、買わないことを勧める。

★★★★★ 良かった。
2022年7月21日に日本でレビュー済み
これは結構良かった。紙の本で読むことをおすすめします。
どんでん返し系かな?

★☆☆☆☆ よくわかんなかった
2020年12月10日に日本でレビュー済み
よくわかんなかった

★☆☆☆☆ 面白い
2023年5月4日に日本でレビュー済み
面白い。この作家はてんさいだ。

★★★☆☆ まあそうなるわな
2020年10月26日に日本でレビュー済み
まあこれは賛否両論なるわな。
最後の方とか正直拍子抜けだった。中盤?にしては長いか…
ともかく、文字が書いてある部分は面白かった。

★★★★☆ 作者の作品は
2021年1月1日に日本でレビュー済み
作者の作品はデビューした頃から大好きだった。(もちろん現在進行形で大好き)
これもかなりいい作品だ。これは映像化不可能。小説でしか体験できないな。
でもやっぱり最後の展開は納得できない。本当に面白い小説だったのに…。その点で☆−1かな。

4.文庫本の裏表紙掲載のあらすじ

友人の裕美が殺人鬼だったことに気づいたミステリー作家 雄二は、彼女と結婚することに決める。雄二はスランプ真っ只中であった。担当編集からは「犯人にリアリティがない」と言われる毎日。書いた原稿は没、没、没。そんな中現れた彼女は神のような存在だったのだ---。著者初のサイコスリラー。面白さ90%の傑作長編。

5.主人公

おれは今日、本屋に行って例の「殺人者は何を思う?」を買うことに決めた。
友人の話、レビュー、掲示板、あらすじなどいろいろな意見を聞いた結果、それでもやっぱり気になったため、今日、購入しに行くことにした。
今、おれはかなりワクワクしている。なぜならおれは今までの人生23年、一度も自分から読書に触れた記憶がなかったからである。本を読む奴らは全員バカだとか時間の無駄だとかひねくれたことを思っていた。それでもやっぱり気になってしまう。読みたい。この俺が、本を読みたいと思っている。自分で言うのもなんだが、この気持ちは大切にしたい。買おう。買って読んでみよう。
本屋についた俺は迷わず小説の棚に向かい、本を手にとった。やはり最近文庫化されたからか、かなり話題らしく、大々的に宣伝されていた。
「賛否両論の話題作!」か。やっぱり気になる。
おれは文庫本を一冊レジに持って行き、きっちり650円を払い本を購入した。

はっきり言って、この小説はかなり面白かった。
あらすじにも書いている通り、作家の男と殺人鬼の女が結婚生活を始める話だ。
物語が進んでいくにつれ、殺人鬼の女が男の目的に気づき、殺意を夫である雄二に向け始めていく。
本編は200ページしかなく、かなり読みやすかった。
そして終盤、なんやかんやスリリングな展開を挟み、ついに裕美が雄二を殺害しようとするシーンが始まる。それ書かれたのが180ページの最後の行だった。
ドキドキしながら次のページをめくると、

次のページは真っ白で、何も書かれていなかった。

乱丁か?と思ったが、ページの下の方にはページ数が書かれているため、そういうわけではなさそうだ。
まさか、と思いながらページをパラパラとめくると、

案の定、199ページまで全て白紙だった。

200ページの左下には、<完>と書いてある。

なるほどな。なるほどな。
200ページ中180ページが面白いから、200ページの90%の量にあたる180ページまでしか面白く書くことができなかったから、面白さ90%と言うわけか。
なるほどな…………

……

6.作者による雑誌インタビュー(抜粋)

十日「『殺人者は何を思う?』だけど、あれは失敗作だな。うん。あれは俺の生み出した失敗作だ。風呂敷を畳めることができなかった俺の責任だ。黒歴史だなあれは(笑)。面白さ90%って言うのは、あんとき(執筆当時)金があんまなかったわけよ。なかなか新作出せてなかったからな。だからとにかく売れることを目標にして、ダ〜ッって書いて話題性を出すためにつけたキャッチコピーだったわけだ。(以下略)」

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