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「展示会集客の手法」を話す「3種の専門家」/その違いは?

東京ビッグサイトなどで開催されている展示会。
その「展示会」において「どのようにして結果が出る出展にするか」、このテーマについてお話している方、についてお話しようと思います。
現在、「展示会集客に関する書籍」は他の分野に比べて決して多いとは言えませんが、それでもいくつかは出版されています。
また、書籍こそ出ていませんが、いくつかの分野の方が、展示会集客について日常的にお話をされています。
今回は、その展示会集客の語り手の方に焦点を当ててお話してみましょう。


展示会集客を話す3種の専門家

展示会業界では、主に3種のカテゴリー(の専門家)の方が、展示会での「集客方法」についてお話をしています。
1つ目はマーケティングを軸に展示会集客の話をする「展示会コンサルタント」の方々。主にセミナーや個別コンサルティング、といった場面で、展示会での成果の出し方について話をされています。切り口は「マーケティング」「販売促進」「企業のブランディング」など専門家の特徴によって様々です。

2つ目は、展示会の設営を担うブース「設営会社」または「広告代理店」の方々。ブースのデザイン・設営を依頼された際に、どのようなブースだと集客できるのか、デザイン案を提案しながら、出展者に集客方法についてお話しされています。ここでは「設営会社」と「広告代理店」を同じカテゴリーとして括っています。これは、出展社からのブース設営の依頼を設営会社が出展社から直接受けることもあるものの、代理店が受けた場合でも、それを結果的に設営会社に依頼する、というケースが多いため、ここでは同列のものとして扱っています。

そして最後に、デザインを主な業務として行う「デザイン会社」となります。こちらも2つ目の設営会社と同じように、ブースのデザインを依頼された際に、どんなデザインであれば集客できるのか、説明をしていきます。
このように書くと、設営会社とデザイン会社は一見同じものではないか、と感じるかもしれません。しかし、「業務を行う立場の違い」から、その基本スタンスは微妙に異なっています。ですので、ここでは敢えて異なる分類として解説を行いたいと思います。
展示会での集客方法を出展社に伝えるこれらの3つのカテゴリー(職種)とそのお話の内容はどのように違うのでしょうか。本稿では、それぞれの特徴とその違いについてお話ししていきましょう。

「展示会コンサルタント」が話す展示会集客

まず、展示会集客について集客方法を話している1つ目のカテゴリー、展示会コンサルタントの方々。
マーケティングの概念を軸に展示会での集客についてお話しされている方々は比較的大勢います。細かな分類を行うと多種多様な分け方になりますので、その方々を一括りに「展示会コンサルタント」と言ってしまうのは、少々強引に感じますが、ここではこのような説明の仕方をさせてください。展示会コンサルタントの方々がお伝えされていることは、大きくは展示会出展の概要やメリット・デメリットを解説するものと、集客手法にフォーカスしてお話しされている方々がいらっしゃいます。元々がマーケティング視点ですので、その集客の解説は、展示会前の準備から、展示会会期中の運営方法の話、そして展示会後の追客(フォロー)の話まで、展示会出展に関わる全般を網羅してお話しされています。
展示会コンサルタントの方々の説明は基本的に展示会出展に関わる全体を網羅されているので、是非一度様々な方々の話をお聞きいただければと思います。
一方で、展示会コンサルタントの方々に不足している点は、当社のような「ブースの具体的な考え方」についての解説です。実際に図面を描いているわけではないので、当然と言えば当然なのですが、どのコンサルタントの方々の話も、集客するブースをどのように考えるか、という点についてはどうしても抽象的になってしまいます。
例えば、キャッチコピーについて、多くの方は「会社名よりも何が特徴なのかを掲示する」とご説明されています。もちろんそれは私もお伝えしているのですが、具体的にどこに掲示すればいいのか、という点にはとても抽象的な場合が多くなってしまいます。
当社では、日頃のブースデザイン業務の経験上、小間位置を詳細に検討してキャッチコピーの掲示位置を決めます。通常、「通路際、そして、人の頭より上に設けた方がよい」とお伝えしています。「頭より上」という意味は、自社ブースの前に「人だかり」が出来た際に「隠れて見えなくならないように」という配慮となります。
この例のように、当社のようなブースのデザインを専門に行う立場は、ブースの施策についてかなり具体的にお伝えすることができます。展示会コンサルタントの方々が、不得手としているブースの具体的な作り方について詳細に説明していますので、この観点から、デザイン担当者と展示会コンサルタントの方々との相性はとてもよいと言えます。

「設営会社」が話す展示会集客

では、ブースづくりを担っている設営会社はどんな集客手法を出展社に伝えているのでしょうか。もっとも多いものは「目立つようにして集客する」という手法です。「インパクトがあるように」「気を引くように」といった言葉で、ブースをにぎやかに、目立つように計画を行います。もちろん、動線など、来場者の動きも踏まえながら計画は行いますが、集客するための考えとしては基本的に、「目立つようにして集める」になります。この方法は、特に展示会業界に長く携わってきた方ほど顕著で、「長年の慣習」のようになっているようです。
もちろんこの手法でも来場者を集めることは可能ですし、実際にこの手法である程度の成果は出してきたのだと思います。しかし、私はこの手法は間違いではないまでも、集客手法としては限界がある、と感じています。
理由は大きく2点。1点目は、来場者を集めるに当たって、その根拠が抽象的で、見込み通りの来場者が寄って来るとは限らない、という点です。会場にいる全ての来場者がターゲットとなっている場合には、とにかく歩いている人を手当たり次第に捕まえればいい、ということになりますが、ターゲットが絞られている場合、単に「目立つだけ」で寄ってきた来場者が常に見込み客とは限りません。もっとも、目立つようにするために、「扱っている商品」を巨大にして設置するなど、何を扱っているか、が結果的に伝わるようになっていればその手法は正しい、と言えます。
次に理由の2つ目は、目立つようにするあまりに外観が派手になり、企業としての第一印象が悪くなってしまう可能性がある、という点です。すっきりとした商品を扱っているのに、形状が派手なブースを作ったり、やたらとごちゃごちゃしているブースを作ってしまうと、その商品の価値や企業としての印象を損なってしまうことになりかねません。例えば、シンプルで清楚な印象を持つ化粧品を扱っている企業のブースが、集客を実現するために派手な形状と目立つ色、大きな文字のブースを持つ、というのは間違っている、と誰もが感じるのではないでしょうか。
このように、単に「目立つようにする」「形状的な工夫を行う」といった手法で集客を考えた場合、見込み客に届きにくい抽象的なものになりがちで、しかも場合によっては展示している商品やサービスの価値も歪めてしまうとなると、結果的に集客に失敗してしまう可能性が高くなってしまうのです。
では、どんな手法だと、的を得た集客ができ、高い成果が得られるのでしょうか。それが本書お伝えしている内容となり、「空間デザイン」の手法を活用したブース構築の考え方となります。空間デザインとは、その場にいる人の心理を形にしたもので、この手法でブースを作った場合、「目立つこと」によってブースをつくって集客を考えた場合に比べて圧倒的に高い集客の結果を出すことができます。多くの設営会社・代理店が話している集客の手法が、現在のものではなく、より空間デザイン的な思考で語られるようになった時、より多くの出展社が成功しやすくなるブースが増えてくることと思います。この「空間デザイン」の考え方については、この後第4章で詳しくお話をいたしましょう。

「デザイン会社」が話す展示会集客

次に、「デザイン会社」が話す集客のポイントについてお伝えしましょう。
「デザイン会社」と言っても実際には様々な種類があります。チラシや誌面などをデザインする「グラフィックデザイン」の会社や、商品などをデザインするプロダクトデザインの会社。箱などのパッケージをデザインするパッケージデザインの会社もあります。その他にも、ファッション、テキスタイル、WEBなど様々なデザイン会社があることでしょう。その中でも本書でお伝えする「デザイン会社」とは、「空間デザイン会社」のことを指しています。空間デザイン会社とは一般的には建築設計事務所やインテリアデザイン事務所のことを指しますが、本書では特に補足がない限り「展示会ブースのデザインも行う空間デザイン会社」という定義としてお話しいたします。
さて、その「空間デザイン会社」は、出展社にブースデザインの内容をお伝えする際には、どのようなデザインにするか、と同時にどのようなデザインで集客を実現させるのかについてもお伝えしています。このことだけだと、設営会社、代理店が話している内容と変わらないではないか、と思われるのではないでしょうか。実際その通りなのですが、違いは、デザインを行う立場のものと設営(工事)を行うものが別会社ということと、かつ、立場的に設営会社よりもデザイン会社の方が「上」であることです。つまり、出展社と直接やりとりを行うのはデザイン会社であり、デザインを固め、そのデザインの設営(工事)に関わる詳細指示をデザイン会社から設営会社に行う、という流れを持っている、という形式です。
同じ「空間デザイン会社」でも「設営会社が依頼して連れてきたデザイナー」である場合、デザインの主導権はどうしても設営会社になってしまい、設営会社の指示でデザイナーがデザインを描き、その作りや細かなデザインは設営会社の「作りやすさ」や「コスト」に影響されてしまい、デザイナーのこだわりが発揮できない場合が多くあります。このような状況を空間デザインの業界では「施工の論理が優先されてしまう」というのですが、そのような場合、設営会社の姿勢によっては、デザインや集客力が弱くなってしまう可能性が出てきます。空間デザイン会社の立ち位置が、設営会社と切り離されていて、かつ、立ち位置が上の場合、デザイナーは「出展社の立場」に立つことができ、出展者側と設営会社側、双方のバランスを取りながらデザインを進めることができるようになるのです。
ただ、デザイナーへ依頼する場合は、そのデザイナーがしっかりと集客などの結果を見据えてデザインを行っているかが重要になります。多くの設営会社の皆様も、このことを常に気にしておられています。「作品性優先のデザイナー」が上に立ち、出展者の出展結果を重要視せず、ただデザインだけが優先された場合、コストが掛かるだけでなく結果も出ないブースとなってしまいます。その観点からも空間デザイン会社の選定は慎重に選ぶべき、と言えます。
とは言うものの、現在の展示会業界において展示会ブースを専門に手掛ける「空間デザイン会社」はほとんどありません。しかし、店舗設計事務所などでも「デザインの結果」「集客」に注力している「空間デザイン会社」は多くいらっしゃいますので、今後、展示会業界にも、このような展示会集客を得意とする空間デザイン会社が増えてくることを期待したいと思います。

いかがでしょうか。
本稿は、現在展示会業界で語られている「展示会集客」に関わる立場を少しだけ整理してみました。現状では、あまり体系化されているとは言えず、それぞれが自由に話している状況ですが、それぞれがそれぞれの立場を活かした話をし、かつ、協調しあいながら話をすることができれば、今よりさらに出展者の方々を成功へと導くことができる、と言えるのではないでしょうか。


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