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東京ディズニーシーと旗の話

 「冒険とイマジネーションの海」東京ディズニーシー。パークに入ったら一直線に向かうテーマポート「アメリカンウォーターフロント」は、20世紀初頭のニューヨークという設定だけあって旗好きにとってはパラダイスのような場所です。


星の数が違う!?アメリカ国旗

 まずはこちら、誰もが知っているアメリカ合衆国の国旗(星条旗)。レストラン櫻をはじめ、ポートのあちこちに掲げられています。

46州時代のStars and Stripes

 実はこの星条旗、現行のものとは違う46州時代のアメリカ国旗なんです。
 アメリカは構成する州が増えるとカントンに配置されている白色の星が増えていきます。「アメリカンウォーターフロント」で見ることができる星条旗はオクラホマが準州から州に昇格した1908年7月4日から、アリゾナとニューメキシコが加入する前日の1912年7月3日まで使われました。
 4年間という短い期間なので、停泊している「S.S. COLOMBIA(コロンビア)」(2万3920総トン)がいつ頃の船かというのが、だいたいわかるかと思います。
 ちなみに現在のアメリカ国旗に描かれている星の数は51個。ハワイ州の加入に伴い1960年7月4日に制定されました。


さらなる高みへ。ニューヨーク州旗

 こっちはニューヨーク州旗。このデザインのものは1901年4月2日に制定されました。

 紋章中央のエスカッシャンの上に描かれているのはハドソン川と船。上部のクレストにはアメリカの国鳥であるハクトウワシと大西洋が配置されています。左側にいるのは自由の女神、右側にいるのは正義の女神です。
 下に書かれているラテン語「EXCELSIOR」はニューヨーク州のモットーで「さらなる高みへ」という意味になります。
 ちなみに2020年4月からアメリカのモットー「E PLURIBUS UNUM(多数から一つへ)」が付け加えられた新しい州旗と紋章が使用されています。

 さて、ここまでは20世紀初頭に間違いなく使われていた旗です。しかしディズニーシーとはいえ、全て昔のデザインの旗を使っているわけではありません。よく見ると時代設定にそぐわない、わりと新しい旗も登場しているのです。


20世紀初頭の街に1977年以降の旗が翻る。ニューヨーク市旗

 タワー・オブ・テラーとトイ・ストーリー・マニアの間にあるニューヨーク市水道局に掲げられている旗は、ニューヨーク市旗です。オランダのプリンスの旗を由来とした青、白、オレンジをベースに中央に市章が入っています。

左にニューヨークを象徴するビーバーがいる

 ニューヨーク市旗は1915年に制定された後、1977年に一部デザインが変更され今に至ります。ディズニーシーに掲げられている旗を見ると、1977年以後に使われ始めたものであることがわかります。
 見分けるポイントは一か所、中央の紋章の部分です。旧ニューヨーク市旗はイングランド王国が占領しニューヨークとなった年「1966」が書かれていますが、現行のニューヨーク市旗はオランダ時代にニューアムステルダムがニューネーデルラントの首都になった年「1625」が書かれています。
 この辺りの由来を調べるのも面白いです。

旧ニューヨーク市旗

 ちなみに現在のニューヨーク市の水道事業は、ニューヨーク市環境保全局(Department of Environment Protection)が担っています。


ディズニーシーのオープン当時を伝えるパラグアイ国旗

 もう一つ注目したいのが停泊中の汽船「ST. ELMO(セント・エルモ)」。この船の船籍港は「ASUNCION(アスンシオン)」で、パラグアイ船籍であることがわかります。

 この船尾に掲げられているパラグアイ国旗ですが、実は1990年から2013年にかけて使われていたデザインのものです。見分け方は中央に配置されているシンボルのデザイン。赤い帯に黄色い文字で「REPUBLICA DEL PARAGUAY」と書かれているのが、この時期のパラグアイ国旗の特徴です。

地味に珍しい1990年から2013年までのパラグアイ国旗
1842年から1954年にかけてのパラグアイ国旗

 船籍港としてアスンシオンが表示され、ひとつ前のパラグアイ国旗が掲げられている船を見られるのは日本だとディズニーシーぐらいではないでしょうか。「セント・エルモ」にはロストリバーデルタからの出土品が積まれているので、パラグアイ周辺でジョーンズ博士が活躍していたのかもしれません。
 ちなみにディズニーシーが開園したのは2001年9月4日のこと。この時のパラグアイ国旗は1代前の旗でした。開園した時の様子を伝える貴重なものの一つです。

オリジナル社旗とか

 このほか、オリジナルの社旗もディズニーシーでは見かけます。
 わかりやすいのは、「U.S.スチーム・シップ」の旗。ドックサイドダイナーの上に翻っています。

 「S.S. COLOMBIA(コロンビア)」周辺には社章があちこちに掲げられているのでとても目立ちます。 自社こそアメリカを代表する船社だという誇りともいえるようなデザインがいいですね。

 メディテレーニアンハーバーからアメリカンウォーターフロントに向かって歩いていると真正面に見えてくる「マクダックス・デパートメントストア」にも社旗が掲げられています。

 ドル記号にアヒルの羽毛やくちばしを加えたようなデザインに、スクルーズ・マクダックスのこだわりが見えます。最初からこのデザインにしていたのか、成り上がってから家紋も兼ねてこのデザインにしたのか気になりますね。

 トランジットスチーマーラインの船尾に掲げられている旗には、アトラクション名である「DISNEYSEA TRANSIT STEAMER LINE」と書かれています。

 メディテレーニアンハーバー、アメリカンウォーターフロント、ロストリバーデルタの3カ所に乗船場を持っているため、単一の国旗はさすがに難しかったのかもしれません。厳密にやろうとすると、日本国旗になってしまいますからね。
 とはいえデザインはU.S.スチーム・シップに似通っているので、子会社の社旗という可能性もあります。

 いろいろ突っ込みながら見えてくる旗の歴史。ディズニーシーに行ったらぜひ旗にも注目してみてはいかがでしょうか。


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