「独身中年男性 come 亜人」

ギリギリまで迷ったあげく、件の飲血パーティーとやらに参加することにしたおれ。会場が房総半島南端だったので、平日の昼間から内房線で2時間あまり揺られて駅からバスを乗り継ぎ、よく知らない漁師町に辿りついた。 

漁船が数隻とまってる小さな港の近くに公民館があり、駐車場に仮設のステージが作られてサルサっぽいバンドが演奏してる。まばらなテーブルと簡単なビュッフェ、中央には大きなまな板が二台。

「おーすおす!来てくれたんだ~」前回の主催者の女性が声かけてきた。今日はゴス風メイドの格好。「まだ始まったばっかだけど、まったり楽しんでって~」 

会場を見回すと、主催者側の女の子7~8名がめいめいゴス風の衣装。地元のイケメン漁師と料理人は、なんと言うか、、、戦国BASARAコス的な格好。早速水揚げされたばかりであろう鮮魚が、見事な手際でどんどん捌かれている。その横で抜かれたばかりの魚の血で作った様々なカクテルが、恐ろしい勢いで消費されていく。 

おれもとりあえず飲んでみる。鰹の血をビールで割ったレッドアイ、鰯の血と骨とライム入りのジンロック、秋刀魚の血と内臓入りの清酒、ETC、、、 

けっこうなペースで飲んだが、思ったより酔いが回らない。度数が抑え目で作ってあるのか、それとも魚の血にはアルコールを分解する作用でもあるのか。ようやく回りを見渡す余裕も出てきた。参加者は40人強といったところか。女性が半分以上で見たとこ30~40代、恐らくおれと同じ独身中年男性っぽい方々が7~8名。あとは地元のお年寄りとかフリーのレイヤーっぽい人とか。 

音楽がいつの間にかトランス系に変わっていた。特にショーやゲストのスピーチも無いのに会場全体がずっと熱を帯びている。日没する地平線を眺めるあたりで、会場は更に熱くなったよう。新鮮な魚料理と魚の血のカクテルは、いくらお腹にいれても満腹にならず、更に飢えを引き起こすかのよう。 

会場外れのトイレに行った帰り、離れた一角にテントがあるのに気が付いた。入口にはいかにもなミニスカナースが大きな注射器持って立ってる。 

「こんばんわ~」思わず話しかけたおれ。「おねーさんここは何やってるんですか~?怪しい~」 

ミニスカナースが意味ありげに微笑んだ。 

「興味あるの?ここはもっと強烈な奴よ。」いつの間にかおれの背後に、主催者の女性が立っていた。「さー、夜はまだこれからだよ。楽しんでこ。」 

女性にしては強い力で手首を掴まれ、テントに入ったおれ。中は薄暗くてよく分からない。 

次の瞬間。 

首筋と手首に刺すような痛みがあって、その先の記憶 

やっぱり

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