「CATRIX」

NYのとある路地裏。
 大都会の深夜を連想させる、サイレンや雑踏のSE。やがてどこからか聞こえてくる、「It’s a small world」的な音楽。
 舞台センターに小さく明かりが灯る。寄り添うように立つ、ミッキィとミニィ。

ミニィ「ああ神様!ここは何て暗くて寒いのかしら!
ミッキィ「本当だねミニィ!僕達の仲間が住む世界に比べたら、ここはまるでラビリンス。きっと神様の恵みの光も天使の息吹も、こんな大都会の片隅には届きやしないんだよ。
ミニィ「ふふ、、、淋しい事言うのねミッキィ。あたし、こんな所も嫌いじゃなくってよ。都会の暗がりって、ちょっとセクシーでキザで危険で、何ていうか、大人の恋を連想させるっていうか、、、。
ミッキィ「どうしたのミニィ!?そんな事口にするなんて、、、。ドナルドや白雪姫が聞いたら腰を抜かすよ?
ミニィ「あたしをここに連れ出したのはミッキィ、あなたじゃない。ううん、責めてるわけじゃないのよ。あたしだって、あの“It’s a small world”にはちょっと飽き飽きしてたんだから、、、。
ミッキィ「ミニィ、、、
ミニィ「ほらミッキィ!あたし、こんなステップだって踊れるのよ!

 どこからともなく流れてくる、「フラッシュダンス」っぽい音楽。80年代のMTVのクリップみたいに踊りだすミッキィとミニィ。

ミニィ「どうミッキィ?あたし輝いてる?
ミッキィ「最高だよミニィ!今の君、、、シンデレラも目じゃないくらいセクシーだよ!

 気味の悪いSEと共に不意に途切れる音楽。つんのめって倒れて、重なり合うミッキィとミニィ。

ミッキィ「!!、、、どうしたんだ、急に?
ミニィ「(黙ってミッキィの口に手を当てる)

 見つめ合うミッキィとミニィ。次第にお互いの吐息の音が大きくなり、舞台が暗闇に包まれる。


声「、、、クンクン、、、クンクン、、、、、臭う、臭うゼェ、、、、。

ミニィ「ヒィッ!!
ミッキィ「、、、何だ!?誰かいるのか?

声「、、、臭う、臭うゼェ、、、、。発情しきった薄汚ねぇドブネズミの臭いがプンプンするぜぇ、、、、、。ニャー!!!!、、、、

ミニィ「怖い!ミッキィあたし怖いよぉ、、、、、
ミッキィ「心配いらないよミニィ、僕がついてるよ。
おい!ネズミの恋路を邪魔する出歯亀め!暗がりに隠れてないで姿を見せろ!
ふん、怖気ついて出て来られないのか。だったらこっちから行くぞ!(暗がりに姿消す)
ミニィ「待ってミッキィ!置いて行かないでぇ!
怖いよぉ、、、ミッキィ、、、、、

 暗がりから足音。猫の目だけが無数に爛々と輝く。

声「ニャー!!!!!!
ミニィ「キャァーー!!!!近寄らないで!このケダモノ!出歯亀!
声「ケケケ、、、この俺様を捕まえて出歯亀とはよく言ったもんだニャー、、、、。
そのデカイ耳かっぽじってよく聞きなハリネズミ!俺様は、NYオフブロードウェイで最もセクシーなファスタープッシーキャット、Twiggy(ツィギー)!!
ミニィ「(驚きやらピンとこないやらで、すっかり参った表情)

ツィギー「(山本kid風に)今のオレ、ヤバイ、、、。だってオレ、神の猫、、、、


 主題歌「ファスタープッシーキャット、、、キル!切る!斬る!(仮)」

 I hate ジーザスクライストスーパースター だってオレNo.1ファスタープッシーキャット
 全米の猫の憧れ 最高の哺乳類 キングオブアニマル
 ジョージブッシュhate me だってオレの美しさが即ちテロ
 「アンチクライストスーパーキャット」 マイケルムーアの新作のタイトル 主演オレ

体が熱くて眠れない奴は誰だ?オレだ!

 Cats in the city 53番通りの路地裏を抜けたら
 Cats in the city オマエBeauty オレBeast

曲のイントロで、激しい踊りと共に現れるメイド猫うらん、ビッチ猫コートニー、DQ猫オナン。
4猫によるキャッツ張りの激しいアンサンブルダンス。ツィギーの美声とラップに、次第にメロメロになるミニィ。それを見て歯軋りしながらも、つられて踊ってしまうミッキィ。

ミニィ「ツィギー様!ビバラッサ!アミーゴ!

 思わずツィギーに抱きつこうとするミッキィ。しかしコートニーに突き飛ばされる。

ミニィ「ぎゃふん!、、、ファック、、、クレイジーキャッツ!
コートニー「ツィギー、、、、あんたってやっぱり、アタイが見込んだ通りのNo.1ファスタープッシーキャットだわ、、、。
ツィギー「何気取った口聞いてんだよコートニー。俺の前では猫かぶる必要なんて無いんだぜ。
コートニー「フフ、、、あんたの前じゃ、いつもは強がってるアタシもただのメス猫。黙って尻尾を振るだけのプッシーキャット、、、。
うらん「コートニー様、目がマジですぅ、、、。
ツィギー「うらん、オマエこそ少しは素ニャオになれよ。(ケンシロウ風に)ニャァ!、、、オマエはもうオレに、、、惚れている。
うらん「べ、別に私、ツィギー様の事なんて、全然好きじゃないんだから、、、、きゅん!ツィギー様!ギザホレス!テラ萌えるであります!
オナン「全く、、、今夜のあんたは、何かいつもにも増してビリビリくるね。ダンスも歌も怖いくらいにキレてるし、あんた見てると、このまま永遠に朝が来ないんじゃないかって思えてくるよ、、、。
ツィギー「たまにはいい事いうじゃねえかオナン。おれも、この夜はいつまでも明けないで欲しいと思ってたとこなんだ。(ミッキィとミニィに)おいネズミども!とっととねぐらに帰って、お城の時計と鐘を壊しとけ。
コートニー「そりゃいい。シンデレラの姉ちゃんもさぞ喜ぶだろうねぇ、、、。
ミッキィ「、、ああ、わかったよ。NYの路地裏は、ネズミにはちょっと刺激が強すぎたみたいだな。
ミニィ「ツィギー様、あたしあなたの為だったら、種族の壁だって越えてみせるよ、、、。
ミッキィ「ちょっと!本当にお呼びで無い感プンプンだから!僕が悪かったからもう帰るよ!

 そそくさと退散するミッキィ、ミニィ。

うらん「ツィギー様、ギザヤバスでありますぅ、、、。
オナン「ツィギーあんた、自分がいつまでこうして踊り続けていられるんだろうって、不安になったりした事は無いのかい、、、?
ツィギー「ハァッ!?ビタ1文無え。おれはロックに魂を売った神の猫として、屈折する星屑のように踊り続け、マークボランやジミヘンやジャニスのように、華々しくステージで砕けてやるのさ、、、(とかしゃべりながら、スナップでリズムを取りはじめる)。
うらん・コートニー「ニャー!!!!

 もう我慢出来ないと言わんばかりに始まる、うらんとコートニーの歌とダンス。

 「あたしの彼は、、、アキバ系でありますた」

 上着の裾をジーンズに入れて リュックサックを背負ってるあなた
 昭和通りを腕組んで ご主人様と歩きたい

 恥ずかしながら ベトベトした手で 抱きしめて欲しいのであります

 私の彼はアキバ系 自慢のA-Boy
 あなたの好きなキャラクター 2次元のあの娘に(綾波レイ) 近づきたい

 SCENE2 =reloaded=

 ダンスが終わると、ふと訪れようとする一瞬の静寂を遮るかのような鐘の音。

コートニー「ハハ、、、どうやらあのハツカネズミども、お城の鐘は壊しそこなったみたいだねぇ、、、。
うらん「ツィギー様、ちょっと一息つくでありますぅ。
コートニー「、、、そうだねうらん。ツィギー、今夜のあんた最初から飛ばし過ぎだよ。何か、生き急いでいるっていうか、本当に朝が来る前に燃え尽きちまいそうだよ、、、。

 タオルで汗を拭こうと、ツィギーに近づくうらん。

うらん「!、、、熱い、、、!ツィギー様の体が熱いですぅ、、、!
ツィギー「いらん事するんじゃねえよ!ただでさえ毎日熱くて死にそうなのに、この上自分から熱くなろうとしてんだ、正気なわけあるか!
コートニー「言葉の意味は分かんないけど、とにかく凄い自信だ、、、。
うらん「これってもしかして(客席後方を指差し)、あの満月のせいかな?
ツィギー「何だっていいよ。(倒れ込みながら)オナン!マタタビくれよ。
オナン「こりゃぁ驚いた!アタシが持ってるの何で知ってんだい?
ツィギー「おれは鼻だけはハウンドドッグでね(マタタビを受け取り、鼻から吸引する)、、、キタぁ、、、まだまだ熱くなってきたぜ、、、、たまんねぇな、、、、
うらん・コートニー「ツィギー様、、、

オナン「アッハッハッハッ、、、、、!!!全く、、、今夜のアンタときたら、こっちまでどうかしちまったみたいだよ。、、、もうとっくに死んだアイツの事を思い出すなんてさ。
コートニー「どうしたんだいオナン!?あんたの昔話なんて初めてだよ。
オナン「アイツが逝っちまったのも、こんな暑い夜だったね。というか燃えてたんだよ、、、、文字通り、、、、何もかも、、、
うらん「それっていつ頃の話でありますか、、、?
オナン「もう400年も昔の事さ。
うらん「オナン様って一体何歳?

 =reloadedされた過去 その1=

オナン「西暦1582年、本能寺の境内。その晩疲れ果ててぐっすり寝ていたアタシを起こしたのは、刀の斬りあう音、そして枕元まで迫った燃え盛る炎だった、、、、

 炎と怒号、刀の斬りあう音。いつしか舞台は真っ赤に染まり、まさに本能寺の変の真っ最中。
オナン「、、、信長様!信長様、、、ご無事ですか、、、、?お返事を!信長様、、、、

 と、立ちはだかる明智軍の手勢2人。
雑兵1「へへ、、、この火の海の中、どこに逃げようってんだ子猫ちゃん?
雑兵2「おい、ちょっと待てよ、、、たまげたな。この面ぁよく見ろ、織田信長様お気に入りの小姓、森ニャン丸だぜ!
雑兵1「本当だぁ!こいつぁ大した手柄だな、、、。おい、信長の居場所は何処だぁ?
オナン=森ニャン丸「下郎!このインディーズ兵隊共、、、、。例え知っていたとしても教えるものかぁっ、、、!
雑兵1「あーら?言うに事欠いて下郎でインディーズで小劇場?ひでぇ言われようだなぁ!
雑兵2「その細首手土産に、成り上がらせてもらうゼェ!
雑兵1・2「覚悟!
森ニャン丸「ちょ、ちょっと待って!暴力反対!(両腕で×の字を作って)マルコムX!

 森ニャン丸の両側から斬りかかる雑兵1・2。しかしその刃はすんでのところで止められる。
ツィギー=織田信長「どうしたぎゃニャン丸!こんなこわっぱ共に手こずるなんて、おみゃーらしくねーがやー。
雑兵1・2「、、、、ののの信長ぁぁ!!!(気圧され後ずさる)
森ニャン丸「信長様!ご無事でおられたのですね、、、、。
信長「全くわしとしたことが、最後の最後でしくじったぎゃ。光秀がこのタイミングで裏切るとは予想外だったぎゃ、、、、。
森ニャン丸「まさか本能寺に火を放つとは、、、アナーキスト光秀。信長様、火の手がこれ以上激しくなる前に裏門へ!急ぎましょう!

 ゆっくりかぶりを振る信長。
森ニャン丸「信長様?どうなさいました!
信長「ニャン丸、、、この炎を見てたら思い出したぎゃ、、、尾張のうつけ者から始まり、美濃甲斐信濃越後出雲とインディーズ戦国時代を斬り抜け、京都メジャーシーンに躍り出ようとしていたわしじゃった、、、
森ニャン丸「あと一歩、あと一歩のところでありましたのに、、、、
信長「勘違いするでにゃーぞニャン丸。わしはちっとも後悔なんぞしとらんぎゃ。(辺りを見回し)この、ライブハウス武道館こと本能寺の境内、最高のステージで星屑のように燃え尽きる事が出来るんだからにゃー。
森ニャン丸「信長様、、、、
信長「今夜が、この織田信長、メジャーデビューライブにして伝説のラストライブの幕開きぎゃ、、、ニャン丸!堤を持つぎゃ!
森ニャン丸、、、ははっ!ここに(小太鼓を信長に渡す)。
信長「おみゃーは生き延びるがやニャン丸、、、どこまでも生き延びて、この信長の伝説のステージを皆に語り告ぐぎゃ、、、ネットに動画を投稿するぎゃ、、、、

雑兵1「信長覚悟ぅ!
信長「1・2・3・4!

 「人生50年、、、AND JUSTICE FOR ALL」

 人生わずか50年 And Justice For All 下天のうちにくらぶれば Holy Wars
 足利将軍 Kill ‘em All 鉄砲衆が Rest In Peace

 下天は夢幻の如くなり 夢幻の如くなり

 これも幻かい?(Kill信長) Are You Dreaming? 
それとも現実かい?(Kill信長) Am I Insane?


 小太鼓でビートを刻みながら、華麗に舞い踊り、明智軍をなぎ倒す信長。いつしか回想は現実と入り交ざり、信長=ツィギーだけが踊り続ける。

オナン「(アイパッチを外し)この潰れた左目には、信長様の最後の姿だけが映ってるのさ。400年前のあの日から、心はとっくに燃えカスになってたと思ってたんだけどね、、、
うらん「言うなれば、第十四使徒ゼルエルとの交戦中にエヴァ初号機が覚醒、暴走した末殲滅。後に使徒を捕食し自ら拘束具を引きちぎったみたいな感じ?
コートニー「何言ってるかさっぱり分かんないし多分例えになってない。
うらん「来週もサービスサービスぅ!
コートニー「うるせえ!
オナン「ハハ、、、こんなアタシの心の燃えカスをまた燃やしちまうんだから、ツィギー、今夜のあんたってやっぱ神懸かってるよ、、、。

ツィギー「オナン、、、、世界一美しいおれの毛並みに賭けて、オマエの勘は間違っちゃいねえぜ、、、、
オナン「、、、?どういう事だい、、、
ツィギー「ロックに魂を売ったその時から、100万回生きることを運命づけられたおれさ。思い出したぜ、、、記念すべき1000回目の転生の時だよ、おれが第六天魔王織田信長って呼ばれてたのは、、、
オナン「ツィギー、、、、本当かいあんた、、、
ツィギー「さすがにちょっと疲れたぎゃ!もう一服するがや、、、。

 軽くふらつく足取りで舞台脇にもたれかかろうとするツィギー。腰を下ろそうとしたまさにその瞬間、幽鬼のような雑兵1が倒れこみ、ちょうど雑兵1に腰掛けるような格好になる。

ツィギー「どぅわぁぁぁっっ!!!!
コートニー「何だい急に変な声出して!?
ツィギー「何だオマエ!?手の込んだことをしやがって!
うらん「えぇ、、、?何か私が悪い事したでありますか?
ツィギー「確かに昔の事を思い出したけど、こういうのはお呼びじゃないんだよ!消えうせろ!
オナン「誰と話してんだいツィギー、、、、?(心配そうに覗き込むオナンの後ろから、さらに覗き込もうとする雑兵2現れる)
ツィギー「わーーーー!!!何なんだお前ら!おれがリアルに思い出し過ぎたってか?失せろよ!
オナン「誰もいやしないよ、、、。
コートニー「踊りすぎで疲れてんじゃないかい?
ツィギー「だ・か・ら!後ろ後ろ!
 
オナン・コートニー・うらんの周りをこれでもかとワザとらしく動く雑兵1・2。ひとしきりしてワザとらしく死んだ風装い、立ち去る。

ツィギー「今確かにいただろ?お前ら見えねえのか、、、!?何だってんだよ、、、

 今にも倒れそうなツィギーを、支えるように抱きしめるコートニー。

コートニー「しっかりしなよツィギー!、、、あんた立派に戦ったよ、、、、
うらん「!コートニー様、それはフライングであります!
オナン「あんたちょっと黙ってな。
コートニー「アタシの為にこんなに傷ついて、ボロボロになって、いつもそうさ、、、アンタって男は、、、、
うらん「誰の事を言ってるでありますか?
コートニー「アンタとアタシが出会った頃のNYは、もっと今より寒かったんだ、、、。お互いまだ何者でもなくて、貧しいけど夢だけを追って生きてたね、、、。

 =reloadedされた過去 その2=

 大ジョッキに山ほどの生卵を飲み干しながら現れるツィギー=ロッキー。

ロッキー「ぶはぁ!よっしゃぁ今日のノルマ100個クリア!
コートニー=エイドリアン「すごーいロッキー!明日の試合に向けて準備万端って感じね!
ロッキー「何言ってんだよエイドリアン。まだまだこれからが本番だぜ!
エイドリアン「、、、え?試合前日なんだし、少しは体を休めたら?
ロッキー「(ぶら下がった冷凍肉的な物を叩きながら)試合が始まる直前まで、1秒たりとも気を抜きたくないんだよ。何てったって、相手は世界チャンピオンなんだぜ、、、(と、ありえないぐらいの激しいトレーニングに、思わず膝をつく)。
エイドリアン「ロッキー、、、!もう止めて!死んじゃうよ!
ロッキー「(エイドリアン抱きしめ)正直言うよ、俺怖くて仕方が無いんだ、、、。
エイドリアン「、、、どうしたのロッキー?あんたらしくないよ。
ロッキー「現役世界ヘビー級チャンピオンのパンチだぜ。下手したら死んじまうかもしれないんだ、、、
エイドリアン「ロッキー、、、、
ロッキー「こんな試合そもそも無理だったんだよ、、、俺なんかに勝てる相手じゃねえんだよ、、、

エイドリアン、思いつめた表情でロッキーに張り手。
ロッキー「!?エイドリアン?
エイドリアン「戦う前から負ける事を考える奴がいるかバカヤロウ!(ロッキーの胸板に女の子パンチしながら)しっかりしなよロッキー、、、情けない姿見せるんじゃないよ、、、
リングアナ「プロボクシング、ワールドへヴィウェイトチャンピオン、アポロ・クリィィィィドゥ!!!!!(巻き舌で)

いつの間にか舞台は試合会場に。舞台中央にリング、満員の観客。そして赤コーナーには、セコンドと美女2人を従えた、世界チャンピオンアポロ。

リングアナ=レフリー「ファイッ!!(ゴング)

セコンド「格下相手に時間かけるなよ、チャンピオン。とっとと終わらせな。
アポロ「ハハ、、、格の違いを見せてやるよ。

 アポロ、軽やかなフットワークで、棒立ちのロッキーに雨あられのようなパンチ。
ロッキー「決めたんだ俺、、、何があろうとこの試合、、、最後まで絶対倒れない、、、立ち続けてやる、、、そして、、、自分がただの野良猫じゃないって、、、、証明するんだ、、、(ものすごいパンチに耐えに耐えながら)
エイドリアン「ロッキー!

 ロッキーのセリフ中でゴング音、レフリー「ファイッ!」。ラウンドが進み、アポロはコーナーに戻ってはまたロッキーをひたすら殴りを繰り返す。
セコンド「どうした?何遊んでるんだチャンピオン?
アポロ「何故だ、、?どうして奴は立ってられるんだ、、、?
美女1・2「チャンピオン頑張って!
レフリー「ラウンドフィフティィィン!ファイッ!

 アポロ、セコンド&美女1・2加わりひたすらタコ殴りにする中、ついに最後まで立ち続けたロッキー。試合終了のゴングと共に崩れ落ちそうになる。驚き混じりの歓声。
エイドリアン「(観客を押しのけ抱きつく)ロッキー!!!!
ロッキー「エイドリアン、、、見てたかい、、、俺最後まで立ってられたんだぜ、、、
エイドリアン「ロッキー、、、あんた本当に格好良かったよ、、、あんた、ただの野良猫なんかじゃない、、、最高のNo.1ファスタープッシーキャットだよ、、、、

 いつしか観客もリングも消えて、舞台はふたたびバックストリートに戻っている。

コートニー「試合の次の日、アタシたちはすぐ結婚したんだ。、、、でもね、試合のダメージがよっぽど酷かったんだろうね。ちょうど1週間後に急に倒れて、そのまま死んじまったのさ、、、
うらん「、、、コートニー様カワイソス、、、
コートニー「リングで完全に燃え尽きて、真っ白な灰になっちまったんだよ。ツィギー、ちょうど今のアンタみたいにね、、、
ツィギー「、、、ああ。思い出したぜ。2万回目ぐらいの転生だったな、、、。(突然ガッツポーズ作り)エイドリアーン!!
コートニー「、、、ツィギー?まさか本当にロッキーなの?
オナン「アーッハッハッハッ!!ツィギー、全くアンタって猫は、、、どれだけ神懸ってんだい!?
ツィギー「(シャドーしながら)生憎今夜のおれは、ちっとも燃え尽きちゃいないんだけどな。今ならタイソンだって摩裟斗にだって負ける気がしねぇよ、、、、

 =reloaded:error=

 突然ゴングが鳴り響く。アポロ、セコンド、美女1、美女2=うらん現れ、ツィギーをひとしきりぼっこぼっこにする。
ツィギー「ちょ、ちょっと待って!タンマタンマ!!(アポロ、セコンド、美女1去る。)
コートニー「、、、ツィギー?
オナン「どうしたんだい急に?
ツィギー「止めろ!触んな、、、お願いだから止めて下さい、、、、やめてぇ、、、、
コートニー「しっかりしなよツィギー!?
ツィギー「やめてよお願い、、、僕が何したっていうんだよ、、、
オナン「ちょっと?ツィギー?

 セリフを遮るように、再び鳴り響くゴング。いつの間にか場面は駅員室になっている。

うらん=ギャル「てか、マジ何言ってんのか聞き取れないんだけど。キモ過ぎ。
ホスト「お前コイツの事触ったんだろ?正直に“自分は痴漢です”って言えよ!コラ?
駅員「ちょっと!止めなさい!、、、君もねえ、もっとはっきりしゃべってくれないと、こっちも困るんだよ。
ツィギー「(消え入りそうな声で)知りません、、、僕は何もやってません、、、、
ホスト「いい加減はっきりしゃべれよキモヤロー!!
駅員「(保険証を見ながら)、、、石井健一さん、27歳ね、、、とりあえず警察呼ぶからね。
ツィギー「、、、すみません、ちょっとバイト先に連絡したいんで、電話貸してもらってもいいですか、、、、?
駅員「やっとあなた何言ってるか聞き取れたよ。はい、(電話指差し)どうぞ。

ツィギー=石井健一「、、、もしもし、、、、はい、石井です。今ちょっとですね、電車が遅れてしまって、2時間ぐらい遅刻しそうなんですが、、、
ギャル「(電話口に割り込み)もしもし店長さん?アタシこの人に痴漢されたんだけどー?
ホスト「テメーん所は従業員にどんな教育してんだよ!
石井「、、、やめて、、、やめろよ、、、、!!

 電話の切れる音が、必要以上に大きく鳴り響く。
場面は再びバックストリート。しかし次第にここがどこなのかは曖昧になっていく。

ツィギー「何だよ今の、、、知らねえよ!!こんな場面は覚えが無えよ!
コートニー「ツィギー、、、しっかりしなよ!オナン、マタタビちょうだい。
オナン「ああ、、、ツィギーほら、一服して落ち着きなよ、、、、
ツィギー「オレにしか見えないのか、、、?何なんだあれは、、、、幽霊、、、、?
オナン「何を怯えてるんだい?あんた、クロスロードで悪魔に魂を売った、No.1ファスタープッシーキャットのツィギーだろ?
コートニー「踊り疲れたんだよツィギー、、、、ちょっと横になりなよ、、、

 SCENE3 =revolution No.9LIVES=
 
ゴングの音、これまでに無く大きく鳴り響く。ガス音、足音や銃器がぶつかる音とともに、CTU強行班ジャック、チェイスが突入してくる。

ジャック「(%全員おとなしくしろ!)
チェイス「(%武器を離して、両手を壁につけ!)
ツィギー「、、、!何だ!誰だお前ら?また幽霊なのか、、、、?

 全員固まる中、ふらふらと歩き始めるツィギー。一瞬空気が止まり、不意にオナン、銃を取り出しツィギーを人質に。

ツィギー「!!!!???オナン?どういう事?
オナン「(%コイツの命を助けたかったら、おとなしく道を開けな!)
うらん「(オナンの背後から銃を突きつけ)今更無駄だよオナン。麻薬不法所持、拉致監禁、テロ集団に対する幇助行為、インターネット上での違法動画の流出及びダウンロード、その他23項目の国際的犯罪容疑により、お前達の身柄を拘束する。
コートニー「(%まさかお前が、潜入捜査官だったなんてね、、、ビッチ!)
ツィギー「?何だよ?何が起こってるのかちゃんと説明しろよ!

チェイス「石井サン、我々はあなたの敵ではあリマせん。監禁されていたあナタを助けにヤッテ来たのデス。
ツィギー=石井健一「?監禁?何の事だよそれ、、、、?
うらん「あなたの本名は石井健一。都内在住の27歳フリーター。2週間前にこの、サイバーテロ集団に拉致され麻薬漬けにされたあげく、インターネット上でさらし者になっていたの。
チェイス「アナタハ、仮想現実“CATRIX”ノ中で、様々な作家ガ書イタ台本を、自分自身の人格と誤解サセラレタママ、強制的に演技サセラレテいたのデス。
うらん「麻薬漬けにされ、調子に乗らされて浮かれてカッコつけて演技してる動画を、世界中の変態的演劇愛好者に覗かれ、サイトやblogに無星!だのツマンネ!だの書きたい放題書かれる、世界中の慰み者にさせられていたの。
石井「???!!!ぐぅえ?
チェイス「しょっくヲ受けるのも無理アリマセーン。自分ガ舞台上で悦ニ入ってる様ヲ、インターネット上で好き放題に書カレルなんて屈辱、ワタシには耐エラレまセン、、、。
うらん「もう大丈夫です石井さん。あなたは、都内在住の27歳年収200万円のフリーターとして、再び平和な日常に戻れるんですよ。
チェイス「ワレワレの調査では、アナタはあるばいと先を無断欠勤1週間続いたタメ解雇とナッテイマス。アナタハ立派な被害者デスカラ、今後の社会復帰ノ手助けにも、我々は協力ヲ惜しみマセン(鞄から、フロムAなど様々な就職情報誌取り出す)。
石井「、、、、ぐぉっほ、、、、そんな、、、、、嘘だぁ、、、!!!!!!
オナン「(%コイツ!暴れるな!)

 ジャック、一瞬の隙を逃さず、オナンとコートニーを射殺する。
コートニー「(%CATRIX、、、万歳!!!)
うらん「こいつらの正体は、ウォシャウスキー兄弟。詳細はまだ不明だが、元ハリウッドの映画関係者らしい。
チェイス「(2人の腕をまくる。そこにはモナーのタトゥー)ヤハリ、、、CATRIXメンバーの動カヌ証拠デス。
うらん「こいつら、こう見えて二人とも男ですよ。ハリウッドの映画関係者なんて、みんなこんなもんです。
ジャック「(%この捜査は、一体シーズンいくつまで続くのか?)

 口々に語るCTUを尻目に、石井奇妙に痙攣しながら客席に近づく。その様はまるで暗黒舞踏のよう。

石井「、、、嘘だ、、、この僕がただのイケてないフリーターだなんて嘘だ、、、そんな現実になんて戻りたくないよ、、、、、
(最前列のお客さんに向かって)自分、、、何でもしますから、、、自分面白いっすから、、、今日の自分に点数つけて下さい、、、ネットに好きなように書いて下さい、、、、お願いです、、、、


 SCENE4

 石井、ふと客席後方に視線をやる。そこにはライオンの格好をした男が見える。
石井「、、、へへへ、、、あんた誰ですか、、、、?また幻覚ですか、、、、もう自分何が現実かもよく分かんないんすよ、、、、
ライオンキング「おいカスヤロー。お前が望むならおれが、他人が何点付けようがblogに何を書こうが、ビクともしない舞台に連れてってやるよ。どうするカスヤロー?
石井「、、、えぇ、、、?いきなりそう言われても、、、自分もう眠くて、、、

 ライオンキング話を聞いてない。石井に切符を投げつける。
石井「(切符拾って)、、、え?
ライオンキング「望みは叶ったぜカスヤロー。今から五反田に向かうぞこのヤロー!

 うっとりするような曲がかかり、石井とライオンキング、スローモーション。電車に乗って、目的地五反田キャッツシアターに到着する。
 舞台上には、モナーのお面を被ったダンサー達が、スローモーションでキャッツの世界を繰り広げている。
笑いながらそこに加わっていく石井、ライオンキング。

 (終)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?