「ガラスの幕末」

幕臣勝海舟を斬りに出向いた坂本竜馬。竜馬はしかし勝に説得され、佐幕派に寝返ったとの専らの噂だった。

竜馬の変心に戸惑う長州藩邸に、当の竜馬が一人乗り込んできた、、、。

照明点く。

胡坐をかいている高杉晋作。

高杉「、、、何、坂本が一人でやってきたと、、、?、、、構わん、通せ。(独白)何を考えている坂本竜馬、、、。返事次第じゃ生きてはここを出られんのだぜ。買いかぶっていたか、、、やはり見た目通りの本物のバカか、それとも、、、

声「おまんら邪魔するぜよ!!

悠々とした様子で坂本竜馬登場。長州藩士の殺気をものとも感じていない様子。

坂本「手ぶらで突然押しかけてすまんがのう!久しぶりじゃき高杉さん。

高杉「人を食った所は相変わらずだね坂本くん。

坂本「ハハハ!小さいこと言っちょらんで高杉さん!しかめっ面は好かんき。ついでにここにいる同士の面々にも、そうピリピリするなと言ってくれんかのう?

高杉「フフ、、、ピリピリするにも理由があるさ。胸に手を当てて考えて見ろ。

坂本「、、、何を言っちょる!?

高杉刀に手をかけゆっくり立ち上がる。

高杉「しらばっくれるならそれでいいさ。聞くところによるとあんたは、幕府の開国派の筆頭、大奸物の勝海舟を殴り殺すと息巻いていたじゃないか。

坂本「ハハン。

高杉「ところが蓋を開けてみれば君は、すっかり勝に丸め込まれたあげく弟子になると言い出し、挙句は勝の用心棒まで勤めているという、、、。

坂本「ハッハッハ!!まあ聞いちくれ高杉さん。

高杉「笑い事ではないぞ坂本!尊王攘夷の立役者として今や名を知らない者はいないあんたが、勝海舟に骨抜きにされたと江戸中、いや京まで噂している!坂本、、、あんた本当に幕府の犬に成り下がったってのか?返事次第じゃ生きてはここを出られんよ、、、

坂本「そういきり立たんでくれ高杉さん!!

感極まった表情で長州藩士の気勢を削ぎ、熱弁ふるう坂本。

竜馬「聞いちくれ高杉さん!わしが急に裏切ったかに見えたんなら誤るき。しかし、勝海舟は日本の為に絶対殺してはならない人物じゃと分かったがじゃ。勝先生は誤解されちょる!あの黒船を作り出した西欧列強は、海すらも自分たちの領土として他国に進出して、どんどん利益を吸い上げちょる。おまんら攘夷、攘夷言うとるが、拳で異人をバッタバッタ殴り倒したところで彼らには敵わんがじゃ。日本が清国のように植民地にされず不平等条約を撤廃していくにはどうしたらええか?海軍を強大にして、何十隻、何百隻もの黒船を作る!そいでそれを日本中の港という港に浮かべるがじゃ!じゃがその為には金がいる。幕府にも各藩大名にも金はないがじゃ。どうするか?開国じゃ!開国して異国と今までには考え付きもしない新しい商売を考えて、外貨を稼ぐしかないんじゃ!

高杉「、、、それはやはり、尊皇攘夷の志を捨てたと取っていいのか?

竜馬「小さいのう高杉さん!わしは幕府だ尊王だと飛び越えたところで、もっと大きい事を考え、、、

高杉「(周りの同士に向かって)逸るな山県!伊藤!、、、坂本さん、おれはあんたの事を認めてる。悔しいが、正直おれ達には捉えきれない大きい器の持ち主だろうさ。

坂本「ハハン。

高杉「しかしやはり、一晩で尊王攘夷から佐幕に心変わりするような奴はね、大きい器の一言では飲み込めないのさ。只の日和見、コウモリ野郎、、、反吐が出るね。

坂本「ハッハッハ!面白いこと言うのう高杉さん!

高杉「皆は手を出すな!今おれが確かめられる事と言ったら、これだけしかあるまい、、、(殴りかかる)

坂本「止めちょくれ!今は争っているときじゃないんじゃ!

高杉「どうした!?北辰一刀流の塾頭の腕はこんなものか?

坂本「(飛びずさり)どうしてもやるっちゅうんか高杉さん、、

高杉「見損なったぞ坂本!貴様本当に勝の飼い犬に成り下がったか!?

坂本「口のきき方には気いつけいや高杉さん、、、

高杉「黙れ!藩も身分も違えど俺はお前を、志を同じくする同士だと信じてきた!言え坂本、お前は本当に変わってしまったのか!?異人どもにかぶれてしまったのか?答えろ坂本竜馬!!

不敵な笑みと共に着物に手をかける坂本。

坂本「言葉でも拳でも分かり合えんのなら仕方ないき、、、。見とくれ!これが真の開国を成し遂げた男の姿じゃ!!!!

大河ドラマ的な音楽がかかり、着物脱ぎ捨てる坂本。その下に現れたのはメッチャアキバ系男子な姿。

高杉「、、、な、何なんだそれは!!

坂本「ちゃっすちゃっす!!!西欧列強が真に狙っているのは領土でも資源でもなくてアニメとマンガとコスプレなのであります!長州も薩摩もその辺が分かってないのですー。

高杉「その気味の悪い言葉使いを即刻止めろ、坂本!!

坂本「Jアニメが異人に一通り受け入れられた今、高杉タンみたいな幕末コスプレに萌える層はフランスあたりには着実に育っているでありまぷ。高杉タンも「銀魂」よろしくツンデレ志士キャラをもっと突き詰めるであります!これぞ真の開国であります!

高杉「何を言ってるのかさっぱり分からん!!

言い争ううちにもつれ合い、頭を打ちあう両者(スローモーション?)。

坂本「、、、くっ、不覚をとった、、、ん?この身体は、坂本竜馬?、、、まさかこれは噂に聞く「おれがあいつであいつがおれで」という奴か、、、?つまり「転校生」?て事は俺の身体の中には高杉晋作の演技をしている坂本竜馬が入っているということに、、、

高杉「、、、

坂本「騙されるな皆!この男は見た目は高杉晋作だが中身は、、、

高杉「いい加減にしろ!

坂本「お前こそいい加減にしろ!

坂本・高杉「おい!俺の真似してんじゃねーよ!?(周囲に向かって)違う違う!俺が!本物の!高杉晋作だって!!

高杉「そこまで言うんだったら、本物だって証明してみろ!

坂本「いいだろう!(徳川の家紋が描かれた紙を取り出して踏みながら)倒幕!打倒徳川!!

高杉「(ボンジョビの写真取り出して踏んで)攘夷決行!打倒異人!!

坂本@勝「尊王攘夷とかけまして!ジャングル大帝と解きます。その心は!どちらもシシが活躍します!

高杉「今度京都御所に火をつけて慶喜と松平容保を暗殺しようと企んでます!

坂本「それはやり過ぎであります高杉タン!

高杉「ふはははは!ボロを出したな坂本!さあ神妙にしろ!(刀を突きつける)

坂本「ウフフフ、、、もうオープンフィンガーーグローブで殴りあうのは時代遅れなのであります。これからは(懐から拳銃を取り出し)コレなのです!

高杉「、、、それは、、、拳銃!?おのれ、、、

坂本「おっと!それ以上動いたら撃つでありますよ!(今度は懐からデスノートを取り出し)よいしょ!『高杉晋作は28歳で結核で死ぬ。辞世の句が“おもしろきこともなき世をおもしろく”!』

高杉「!!何を書いている!?(飛び掛ってノートを奪おうとする)、、、何だコイツは!?死神?

坂本「デスノートに名前を書かれた人間は書かれた内容通りに死ぬのであります。それとノートに手を触れた者には死神リュークの姿が、、、

高杉「『坂本竜馬は慶応3年に近江屋の二階で暗殺される』

坂本「ちょっとちょっとちょっと!!!(高杉からデスノートむしり取って)何書くんでありますか高杉タン!!、、、むっきー!!!き、消えないであります、、、。た、高杉タン!!これは由々しき事態でありますよ!!この坂本竜馬には、薩長連合を成し遂げた後に大政奉還で江戸を無血開城をさせるっていう!ギガント萌ゆる大仕事が待っているっていうのに!?

高杉「、、、

坂本「、、、高杉タン、自分が今何をしたのか分かっているでありますか?アナタはこの坂本竜馬だけでなく、日本中のオタクとレイヤーの未来を奪ったのでありますよ!!分かりやすく言えばバルスとか使徒がセントラルドグマに到達したレベルっす!!!何すか!自分は渚カヲルっすか!?『僕にとって生と死は等価なんだ。』でしたっけ?、、、何で黙ってるでありますか!?『目が、目がぁ、、、!!!』くらい言ったらどうですか!?、、、(泣き崩れる)

 しばらく間。高杉ふっと優しい表情になり、坂本の肩に手をかける。

高杉「坂本さん、いいんですよこれで、、、

坂本「、、、ど、どういう意味でありますか高杉タン、、、?

高杉「己の限界を分かってこそ、成し遂げられる天命がある。デスノートに触れた瞬間、自分には全てが分かりました、、、。日本の行く末が、そしてこの高杉晋作がせねばならぬ事が、、、

坂本「、、、高杉タン、、、

高杉「この高杉晋作が成さねばならぬ事、それは身分にとらわれず才能のあるものを藩内から見いだし!総選挙で1位から48位まで選抜し!“KHT48”としてデビューさせることであります!!!(最敬礼)

坂本「、、、KHT、、、“奇兵隊”!!た、高杉タンさすがっすさすがっす!!

高杉「おおっと大事な事を忘れているでありますよ坂本タン!!オヌシには薩長連合の前に、土佐藩や他藩の軍艦オタクを48人集めてデビューさせるっていう、ギガントヤバスなプロジェクトが待っているんでやんす!!

坂本「、、、“KET48”!!!『人は悲しみが多いほど人には優しくなれる』とはよく言ったものであります!!

高杉「、、、これが、真の、開国でありますね!!!

坂本「日本の!未来は!ギザ明るいぜよ!

いつの間にか「ヘビーローテーション」が鳴っている。日本のオタクの先駆けとして、メッチャ力入れてヲタ芸に興じる二人。
(終)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?