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私の映画鑑賞録2024(ネタバレ感想文)

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ただの私の映画鑑賞備忘録です。2024年バージョン。基本、ネタバレ。駄文。
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記事一覧

映画『水深ゼロメートルから』 JKめんどくせー(ネタバレ感想文 )

『水のないプール』(1982年)という若松孝二の映画がありますが、全然関係ありません。シェケナベイベー。 関係あるのは(?)『アルプススタンドのはしの方』(2020年)。 高校演劇リブート映画化企画第2弾だそうで、どこの商売人が金脈を掘り当てたんだか。 この2作に共通したテーマは、演劇やってる高校生の野球部に対する憎悪です(<嘘です)。 甲子園のアルプススタンド感がゼロの『アルプススタンド~』と大違いで、山下敦弘は冒頭数カットで田舎の高校の夏休みのグラウンド感を見事に描き

映画『プリシラ』 ソフィア作品に特殊な人は出てこない(ネタバレ感想文 )

「セレブ女子の孤独」を描いたら世界で一番巧いソフィア・コッポラ。 彼女の映画で貧乏臭い話を見たことない。 もっとも、世の中に「セレブ女子の孤独」が刺さる層はあんまりいないと思うんですけどね。 なぜか私は刺さるんですよ。庶民の中年男性ですけどね。ソフィア大好き。 今回初めて気付いたんですが、ソフィアの映画って、登場人物が意外と「普通」なんです。 エルビス・プレスリーという「特殊な人」を登場させながら、人間としては「特殊な人」扱いをしていない。 実は変な人とか、悪い人とか、変態

映画『ゴールド・ボーイ』 コッテリ香港映画の盛り。盛り過ぎ(ネタバレ感想文 )

金子修介なら観に行かなきゃという謎の使命感で映画館に。 ま、そんなに金子修介作品を真面目に追ってるわけじゃないんですけどね。なんなら観てない作品の方が多いんですけど、時折律義に『プライド』(2008年)とか『神の左手 悪魔の右手』(06年)とか観てるんですよ。 私は金子修介を、実に腕の良い職人だと思っています。 本当にこの人の演出は丁寧で破綻がない。 この映画も絶妙で、変ないい方ですけど、主人公の少年少女の絶妙な拙さが妙にリアルなんですよね。あんまり「プロ」感が漂っちゃった

映画『12日の殺人』 ミステリーというより刑事の人間ドラマ。(ネタバレ感想文 )

ドミニク・モルという監督は、初めて観た『悪なき殺人』(2019年)が面白かったんです。 本作は一転、奇をてらった事が一切ない作品です。 ストーリーは時系列通りに進行し、事件の発生以外はほぼ警察側の視点で描かれる。 実に丁寧な映画で、遺体からスマホを取り出すシーンで私はグッときたんです。証拠品として収めるビニール袋のリアル。細かい描写がリアルなのって重要。神は細部に宿る。 私は、この映画の面白さはミステリーや謎解き的なことよりも、人間ドラマとしての面白さだと思うんです。 実

映画『落下の解剖学』 映画の解剖学(ネタバレ感想文 )

何の前情報も持たずに鑑賞しましてね。 女性監督だということも、カンヌ映画祭のパルム・ドール受賞作ということも、素晴らしい犬の演技にパルム・ドッグなる賞が授与されたこともとんと知らず、ただ予告を見て「面白そう」と思って映画館へ足を運びました。 結論から言うと、ミステリーとして見ちゃうと、お話自体はそう目新しくもないんです。 今時この手の話は大概、芥川龍之介を引き合いに出すまでもなく「真相は藪の中」なんですよ。結局『羅生門』(1950年)。やっぱり黒澤すげえな。 ましてや「大ド

映画『エル・スール』 良質な短編小説のような映画……だったけど(ネタバレ感想文 )

ビクトル・エリセ11年ぶり、長編としては31年ぶり、いや、長編ドラマとしては実に41年ぶりの新作『瞳をとじて』公開の便乗企画で上映していたので、いそいそと映画館へ。 2009年以来の再鑑賞。おそらく映画館で観るのは5度目。DVDも持ってるんですけどね。 この映画は、娘視点で「父親が理解できなくなる」物語と、父親が「娘を理解できなくなる」物語が交錯します。 (ナレーションでもあるように母親は印象に残る物語への絡み方はなく、娘の彼氏に至っては姿さえ登場しない。徹底的に「父と娘

映画『ジャン=リュック・ゴダール 遺言 奇妙な戦争』 ジジイいい加減にしろよ(ネタバレ感想文 )

私はかれこれ30年以上「ゴダール嫌い」を掲げております。 じゃあ何で観に行ったんだ?って話なんですが、やっぱりねえ、偉大な監督なんですよ。 ゴダールは多作で、なんだかんだで長編映画だけでも50本くらい、細かいのを入れると100本くらい作品があるのかな? まあ、私が観てるのはせいぜい10本程度ではあるのですが、滅多に付けない私の「★1」評価作品が最多の監督(笑)。偉大だ。 単なるツマラナイ映画って「★2」なんですよ。 「★1」に至るには、ひど過ぎて腹が立つとか、ひど過ぎて逆

映画『テルマ&ルイーズ』 水蒸気を砂埃に変えて(ネタバレ感想文 )

4Kレストア版にて、2024年になって恥ずかしながら初鑑賞。 『エイリアン』(1979年)と『ブレードランナー』(82年)は傑作だと思っていますが、実はリドスコ作品ってあんまり観ていないんです。 弟トニスコはもっと観てないけどね。リドスコ トニスコ ラブ注入。 リドスコって、水蒸気が好きですよね。 『ブラック・レイン』(89年)なんか大阪がニューヨークみたいだもの。 『エイリアン』の宇宙船なんて蒸気機関で動いてるのかっ! この映画は(そういうシーンもあるけど)水蒸気を砂埃に

映画『一月の声に歓びを刻め』 カルーセル麻紀に賞を!男優賞か女優賞か知らんけど(ネタバレ感想文 )

普段はあまり観ないジャンルの作品なんですが、実は映画女優・前田敦子が好きなんですよ。秋元康が嫌いなのでAKBにはビタイチ興味なかったんですけどね。 結論を先に言うと、前田あっちゃんも悪くなかったんですが、カルーセル麻紀が抜群に良かった。 ぜひカルーセル麻紀に賞を! 主演賞なのか助演賞なのか、男優賞なのか女優賞なのか知らんけど。 三島有紀子監督作品は実は初鑑賞。 彼女がチーフ演出を務めたというNHKドラマ『半径5メートル』(2021年)は偶然観てたんだけどな。 ただまあ、

映画『瞳をとじて』 ビクトル・エリセの遺作(予定)(ネタバレ感想文 )

以前、『ミツバチのささやき』(1973年)を「最愛の映画」と書きましたが、それ以来ビクトル・エリセのファンです。大ファンです。 ただ、このスペイン人監督、寡作なんだ。 10年に1本しか撮ってくれない。 『ミツバチのささやき』(73年) 『エル・スール』(82年) 以上が劇場用映画。 そこから10年待ったら、まさかのドキュメンタリー。 『マルメロの陽光』(92年) そこから10年待って、やっと撮ってくれたのが、たった10分の短編。オムニバス『10ミニッツ・オールダー 人生の

映画『快盗ルビイ』 和田誠の映画愛。本人は楽しかったろうな(ネタバレ感想文 )

京橋の国立映画アーカイブまで足を運んで、35年ぶりの再鑑賞。 私は公開当時に観ているんですが、ウチのヨメが「歌うけど観たことない」と言い出したんで・・・ あれ?このフレーズ、原田知世の『愛情物語』(1984年)でも書いてるぞ。 さすが国立映画アーカイブ、36mmフィルムでの上映でした。 しかも公開当時と同じく『怪盗ジゴマ 音楽篇』を同時上映してくれた。 これ、寺山修司脚本・和田誠監督のミュージカルアニメーションなんです。てゆーか、なんだその組み合わせ? 今回このアニメを観て

映画『レオノールの脳内ヒプナゴジア』 イカれ具合が足りない(ネタバレ感想文 )

横浜聡子がコメントを寄せていたので興味を持ったのですが、フィリピンの映画って観たことなかったんで、映画館に足を運びました。 たまに珍しい国の映画を観に行く癖があるんですよね。 結論から言うと、常識的な映画でした。 「もっと変な映画」「もっとクダラナイ話」を期待したんですけど。 監督は31歳女性。 名前はマルティカ・ラミレス・エスコバル。 んー、名前、覚えられない。 とりあえず「ラミレス」だな。 ラミちゃんの才気は買います。 でも、メタフィクションにする必要があったん

映画『哀れなるものたち』 18禁哲学映画(ネタバレ感想文 )

ド「フィクション」で世の中の「本質」を描く。私が理想とするタイプの映画です。 実話を元にした話って嫌いなんですよね、逆に綺麗ごと過ぎて。 ドフィクションで真実を射抜くのがいいんだよ! ただ、このギリシャ人監督ヨルゴス・ランティモスの監督作品は、これまで『ロブスター』(2015年)と『女王陛下のお気に入り』(18年)を観ていますが、今回の映画が一番分かりやすい。 正直、分かりやすすぎて物足りない。 なんか、世界の本質を突いた点では『逆転のトライアングル』(22年)に近い気もし

映画『サン・セバスチャンへ、ようこそ』 ひとり映画祭。高度な自虐ネタ(ネタバレ感想文 )

ウディ・アレンが好きだと言うと、高尚な趣味を鼻にかけた嫌な奴と思われがちですが、ええ、ええ、そうですとも、私はウディ・アレンが大好きです。 自分でもビックリしますが、『カイロの紫のバラ』(1985年)以降の長編監督作品(たぶん36本)は全部劇場公開時に映画館に足を運んでいます。 いろいろ観返したいんですよね。特に初期作品。 毎度毎度同じような話を手を変え品を変え作るウディ・アレンですが、40年近く付き合っていると、プライベートの好調/不調と、作品の出来/不出来がリンクしてる