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神様神ゲー

「神様なんているわけがないじゃないか」
俺は道端の空き缶を蹴っ飛ばし、大学から帰っていた。
はたと足が止まった。右はまっすぐ下宿へ向かう道。左は天国(ヘヴン)へ向かう道。
俺に迷いはなかった。

天国(ヘヴン)に着いた。
そこはまさしく天国だった。
ズラリと神(ゲー)が並んでいた。

そう、ここはゲーセン『天国(ヘヴン)』。
裏路地にあるためか客は少ないが、その代わり、ありとあらゆるアーケードゲームが揃っていた。
まさに天国(ヘヴン)!
そして、俺はゲーム達に導かれ、あるコーナーに辿り着いた。

音ゲーだ。
何百万とも何千万とも知らぬ音ゲーの猛者達。彼らに勝つために、俺は日夜特訓に励んできた。戦った敵は数知れず、いつの間にかこの地方に敵はいなくなった。

さて、今日も今日とて音ゲーをしようと思ったが、いつも座る筐体の席に珍しく先客がいた。仕方ないので隣の筐体に座りコインを入れた。

やっぱり、音ゲーは神ゲーだな!
一曲目が終わって、俺はじんわりと汗をかいていた。手を少しほぐして、次の曲をプレイしようとする。
ピコーン。
これは、対戦相手が現れた音だ。
このゲーセンにこの音ゲーの筐体は二つしかないので、必然的に対戦相手は隣の客だ。
客は「神様」という名前でプレイしているらしい。なかなか痛い名前だ。ここはいっちょ、俺が狩ってやりますか!

…ボロボロだった。
「神様」は俺より上の難易度を選び、しかもその上で俺より高い点数を叩き出していた。
なんなんだ、アイツ!
俺は隣の席のやつを見た。
「やあ、君はすごいね」
…フランクに話しかけられて、少し戸惑った。
「この神様に勝とうなんて百年早い…と言いたいところだが、十年後くらいには抜かされてるかもしれないな」
「す、すごいですね。音ゲー得意なんですか?」
「まあね。ところでさ、君」
「はい?」
「世界を救う手伝いをしてくれないか」

【続く】

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