タスマニア・サヴァイバル4

「キッシー!!」
僕と高橋は同時に叫んだ。

キッシーとは、僕らの友達ガー子ちゃんの家の湖(と言っても、実際には池くらいのサイズだ)に住んでいる緑のネッ○ーみたいな恐竜だ。大昔にその湖に嵌ってしまい、未だに抜け出せなくなっている…はずだった。
なのに、眼の前には広い川を悠々と泳ぐキッシーがいた。
初めて見る光景だった。

僕らはキッシーの背中に乗せてもらった。
「なんかね、湖の底が痛いな、ガサガサするなって思ってバタバタさせてたら、すうって湖の底に吸い込まれたんだ」キッシーはここに来た経緯を説明してくれるが、何だかよくわからない。僕も高橋も話半分で聞いていた。残り半分は、オトリちゃんを探さなければならないなという気持ちだった。
「しかし、これからどうするの?」
キッシーに聞かれて、僕らは困ったように顔を見合わせた。だって、こんな永遠と続くようなジャングルでどうしていいかわかるわけない。出口すら、いや、どうやって僕らがここに来たのかすらわからない。
「まあまあ気長にいこうよ」自由に泳げて楽しいのか、キッシーはいつもより饒舌だった。湖に嵌まるというアイデンティティを失って、ただの緑の恐竜に成り下がったというのに、だ。
「オトリちゃんが行きそうな場所とかないかな。ほら、食べ物がいっぱいある場所とか」
確かに高橋の言う通り、オトリちゃんは食べ物に目ざとい。とにかく1日の食事量が半端じゃない。しかも、僕らがここに迷い込んでからそれなりの時間が経っている。生きているとすれば、そんな所しかない。
「死んでたりしないよね…」僕の言葉に高橋とキッシーはハッと息を飲んだ。「オトリちゃんに限ってそんなことあるわけないか」僕はそう言って笑ってごまかした。
「そうだよ」「それに関しては僕、高橋ぺぺが保証する。オトリちゃんはそんなことで死なない」
「…うん、そうだよね」あんな探偵気取りで、食欲旺盛で、掴みどころがなくて、いつも偉そうにしている、のくせに大したことないと思われるオトリちゃんが死ぬはずない。
大体、今回の話で出番が無さすぎるじゃないか。
「よし、食料が確保できそうなところを探そう! そしたら、ついでにオトリちゃんもみつかるかもしれない」
僕の言葉に残りの二人も賛成した。
「それなら、この川の先に洞窟があるらしいからそこに行ってみようよ。何か発見があるかもしれないよ」
キッシーの助言で、僕ら一行は川の上流の洞窟を目指した。

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