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THE VOYAGE 5周年カウントダウン企画『有人宇宙の未来を考える -日本の有人宇宙活動30周年を迎えて』[斉藤良佳]

5周年企画第二弾!

みなさんは、去年の9月から日本の有人宇宙活動30周年イヤーが始まっているのをご存知でしょうか?そこで今回は有人宇宙の未来を担う若手との対談ということで、コロラド大学ボルダー校博士課程の江島彩夢さんとお話ししてきました!
江島さんは日本での有人宇宙教育と若手のネットワーク形成を目指すプロジェクトHomer Spaceflight Projectの創設者で、有人宇宙の底上げを図るべく教材作成など様々な活動を行われています。また、宇宙メルマガTHE VOYAGEのSpace Seedlingsメンバーとしてもお馴染みですね。
今日はそんな江島さんに、ご自身について、またアメリカの有人宇宙の現状、日本の有人宇宙開発の未来について語ってもらいます。(頑張って5に関する質問を入れたので、そこもご覧ください。笑)


対談の様子(左:江島さん 右:斉藤)

斉藤(以下「斉」):今日はよろしくお願いします!
早速ですが、江島さんが現在やってらっしゃることについて教えてください。
江島(以下「江」):コロラド大学の博士課程で、有人宇宙滞在技術の一つである生命維持装置(ECLSS)*の研究をしています。具体的には機械学習を使った不具合探知のための、センサー群最適化に関する研究をしています。
 
斉:大気圧の維持や水の供給など、全てを研究しているのですか?ECLSSって、とても幅広いイメージがあるのですが…
江:そうですね。基本的に一人が全てをやるのではありません。僕がやっているのもECLSSのCO2回収が中心です。研究機関も棲み分けのようなものがあって、基礎研究を大学、実用に近い研究をNASAがメインでやっているイメージです。
また、ECLSSと一口に言っても、短期飛行と長期滞在でシステムが全く違います。短期だと酸素等の必要物資を積み込んでそれを消費するイメージですが、長期だと一度使ったものを再生して再利用するようになります。ミッションの目的と期間でシステムを決めていく感じです。
 
斉:なるほど。低軌道周回飛行では前者、ISSでは後者のイメージですね。そう考えると、種類はめちゃくちゃ多いですね…
ちなみに、未来のECLSSはどうなるんですか?例えば、今から5年後、2028年頃に完成予定のゲートウェイではどうなるんでしょうか?
江:詳しいことは分かりませんが、技術そのものに大きな変化はないと思います。
ただ、通信にタイムラグもありますし、自律的に運用できるようなシステムが増えるのではないでしょうか。
斉:かっこいいですね!

*ECLSS(Environmental Control and Life Support System)
宇宙で生物が生きるための、環境制御および生命維持システム。
機能的には消費型(リソースを全て地上から補給する)、再生型(空気や水を再生する)、自立型(食糧生産の機能を有する)に分けられる。
例えば、ISSでは大気(酸素・二酸化炭素等)、火災の検出と抑制、廃棄物管理、および給水を制御する。
参考:宇宙機における生命維持システムについて(桜井誠人)
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9612/9612_tokushu_1.pdf

アメリカの有人宇宙開発

斉:やはり、アメリカではECLSSの研究は盛んなのですか?
江:意外とそうではないかもしれません。笑
有人宇宙×工学でしっかりとしたコースがある大学は、コロラド大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)くらいでしょうか。研究室単位だともう少し多いです。
ただ、それに比べても日本は非常に少ないですね…先生が数人いるかくらいのレベルなので…
 
斉:意外でした。実際のところ、アメリカでは有人宇宙に対する雰囲気はどんな感じですか?日本ではまだまだマイナーで珍しがられますが、もう少し当たり前になっているのでしょうか?
江:やはり、有人宇宙に対する理解は進んでいて、珍しがられることはないですし、受け皿は広い印象です。ECLSSのエンジニアに関して言えば、人手不足ですし。さまざまな企業が募集しているので。
斉:いいですね。医学の方はアメリカですらまだ枠が少なくて、しかも人気で倍率も高いので羨ましいです。笑
江:医師は特殊かもしれませんが、human factor(人間工学)とかはポジションが多くあります。
斉:もっといろんなところにチャンスが増えると良いなと思います!

日本の有人宇宙開発

 斉:それでは、続いて日本の話に移りますが、日本独自で有人宇宙開発を進める必要があると思いますか?
今までアメリカや他の国と連携してやってきて、日本人の宇宙飛行士も何人も宇宙に行っています。有人宇宙開発よりも、他の分野に力を割くべきとの意見もあると思いますが…
江:個人としては進めてほしいと思いますが、予算の配分もあるでしょうし、国が決めることだと思います。ただ、最近は宇宙飛行士選抜試験等を通して有人宇宙活動の注目度を上げる活動も活発化しているようです。もしそうなら、真剣にその道を志す人の受け皿を広げる責任はあるのではないでしょうか。現在は受け皿が狭すぎると感じています。子どもながらに夢を持っても、大人になって有人宇宙活動に携われないのであればただ酷なだけです。僕が現在アメリカにいるのは、日本で有人が学べないと気づいたときの挫折がきっかけでもあります。では日本の有人宇宙開発、何から発展させていくかというと、自分はECLSSからだと思っています。ECLSSを制するものが有人宇宙を制すると思っているので。笑
 
斉:そうなんですね!笑
確かに、ECLSSは生きるための基盤ですもんね。
国の予算が厳しいなら、民間主体でやればいいんじゃないでしょうか?
江:アメリカでも、基本的には国からの予算に頼っている企業が多いです。まずは国がしっかり支援しないと、民間も発展していかないと思います。NASAや民間企業が有する技術も冷戦の宇宙開発競争時代からの積み重ねで成熟してきたものなので、コツコツやっていくしかないと思います。
 
斉:なるほど。国がしっかりするというのは大切なんですね。
宇宙ステーションは厳しいとしても、それよりは規模の小さいもの、例えば、有人宇宙飛行船を日本だけで作ることはどう思いますか?
江:そうするには人手が必要ですが、有人宇宙業界に人を巻き込むのは大変だと思います。有人宇宙開発の特殊性や制約を理解するのが大変です。日本にはこれらに関してアドバイスできる人が限られているので、まずは有人宇宙開発の正しい知識を持った人を増やさないといけないと思っています。Homer Spaceflight Project(HoSP)では教材を通して、有人宇宙に参入する上で何を学ばねばならないか、をまず知ってもらおうとしています。
 
斉:なるほど。有人宇宙の入り口を示すような感じですね!
では、HoSPに関して言えば5年後どうなっていたいですか?
江:もう少し手を動かす活動ができたらと思います。例えばですけど、有人宇宙の企業とコラボレーションして教育の機会を作るとか。
大学院の授業で感心したことがあって。ある企業が設計している月面着陸船の居住モジュールがあったのですが、その企業出資の元、学生達がモジュールのモックアップを作って、人間工学的な評価試験を行う授業があったんですよね。企業側は人件費をかけずにいいデータが取れますし、学生も勉強になるだけではなく、企業とのつながりを作ることもできます。

斉:それは、すごいですね!そういった、企業が学生教育のバックアップをしていくような仕組みがアメリカでは非常に盛んなイメージがあります。
私が行った国際学会でも、学生企画のセッションに企業が協賛していたりしました。
そんな江島さん自身は今後どうされるんですか?
江:卒業後もしばらくはアメリカに残れればと思っています。もう少し経験を積んでから、日本に帰って還元したいなと思っています。
斉:是非、還元していただきたいです!

未来の有人宇宙に向けて

斉:それでは、教育という言葉が出たことですし、将来有人宇宙を目指す人に向けての話題に移りたいのですが、有人宇宙がしたい!となったら、どういうキャリアを積むのがいいと思いますか?
江:アメリカの大学で学んでそのまま働くのは、それが可能なら良いと思います。視野が広がりますし、学べる量も、できることも違います。NASAにいい意味で慣れたというか、実際を知ることができました。
しかし、永住権が得られないと宇宙分野への就職は厳しいので、全ての人に勧めるわけではありません…
いずれにせよある程度自分で道を切り拓いていく必要があると思います。僕も日本の大学の時は、有人宇宙とは関係のない研究室にいましたが、ECLSSに関連した研究がしたいと教授に頼み込んでさせてもらいました。
 
斉:開拓者精神、ですよね。有人宇宙をやる上では欠かせないというのは同感です!
それでは最後に有人宇宙への道を考えている後輩に向けてアドバイスをお願いします。
江:有人宇宙開発は自分の専門の他にも様々な分野を知らないといけませんが、逆にそこが魅力です。また、規模が大きいぶん、達成感が大きいのも良いと思います。
懸命に取り組んでいても、有人宇宙について正しい知識を有していないが故に成果が出ない人もいるので、まずは論文などで勉強してほしいです。
HoSPの教材も使ってもらって、何を学ばなければならないか、知って欲しいです。
斉:そうですよね!ありがとうございました。

有人宇宙を取り上げたい!ということで、日本の有人宇宙活動30周年だ!(5の倍数だ!)と企画した今回。
江島さんから、日本の有人宇宙開発を進めるには、他ではない、これからを担う我々の世代が、協力しながら地道に頑張っていかなければ、とやる気をもらいました。
次はデブリ25年ルールにちなみ、宇宙デブリ特集!都村さんがアツく語ってくれるに違いありません!

江島 彩夢(えしま さむ)
米コロラド大学ボルダー校 Bioastronautics 博士課程4年
【専門・研究・興味】
環境制御/生命維持装置(ECLSS)の自律化に関する研究
【活動】
Homer Spaceflight Project
Space Generation Advisory Council (SGAC)


斉藤良佳(さいとうよしか)
京都大学医学部5年。一般社団法人Space Medical Accelerator理事。宇宙医学を学ぶ学生団体Space Medicine Japan Youth Community運営。宇宙医学を学び、その可能性を模索する傍ら、宇宙ビジネスにも興味を持ち、一般社団法人SPACETIDEでプロボノとして活動。

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