見出し画像

【香川・高知 旅記録】③香川2日目〜高知へ編

こんにちは。

前回はこちらから。


7月中旬、旅程3日目。
高松からスタートし東の方に行って、その後高知まで移動する日。あと石を見る日。記録としては文章量でいうと一番ボリュームがある日になると思う。私の気が済むまで書く!ゆけっ!

この日まわったのはざっとこんなところ。

OpenStreetMap より作成

香川県庁舎

この日は土曜日の朝7時半。青空も見えてる。

レンタカーを予約していない日なので、ことでん瓦町駅から少し歩き、香川県庁にやってきた。
閉庁日の朝に、旅行者が、県庁に何の用?って感じにも思えるが、今日ここに、この庁舎を見に来たのだ。

この建物は建築好きなら一度は見ておくべき名建築と名高い、設計者 丹下健三の代表作であり最高傑作とも言われている。竣工は1958年。
国の重要文化財に指定されており、数々の名建築リストに入っていたりする。

専門知識を持たない人間によるフィーリング全開の感想。↓

これだ〜!
こちら議会棟
議会棟の下はピロティ

お散歩がてら、道路からふらっと入ってしまえるくらい開放的。敷地の境界が曖昧な感じっていうのかな。
実際、ベンチでゆったりするおばあちゃまがいらっしゃったし。
こうした市民に開かれた庁舎というのは当時は斬新なコンセプトだったそうだ。
階段を見てうっとりする。ルーバーもいい!香川の木材が使われているみたい。

ピロティの床も凄かった。香川産の2種類の石が敷き詰められているそう。現役引退して暇人になったら、ひとつひとつ眺めてお気に入りを探したい。

太鼓橋も灯篭も築山もある立派なお庭

高級石材の庵治石(あじいし)と呼ばれる花崗岩が用いられている。この石は香川県北東部の一部でしか産出されない石。この庵治石というワード、あとでまた出てくる。

シャッとしててかっこいい

簗の感じとか、なんていうかこう…ひとつの層が幾重にも重なって全体をつくっている感じとか、木造っぽいのに実はコンクリートなのだ。

いいね、すごくいいよ

興奮のあまり、アイドルの撮影会ですか?ってくらいに山ほど写真を撮ってきた。

コンクリートに木枠の木目とか木の節が移っていたりして綺麗。こういうフローリングっぽいコンクリートの集合体が、木造建築っぽいでっかい鉄筋コンクリートの建物をかたち作っているっていいね。 


この庁舎の設計を丹下健三に依頼したのは、当時の香川県知事だった金子正則氏。
彼は建築や美術に理解があり、後で出てくるイサムノグチとも関わりがあった。
ちなみに丹下健三とイサムノグチも繋がりがある。
香川県をうどん県はもちろんのこと、建築アート県へと押し上げた金子知事、ありがとうございます。おかげさまで何十年後の今、わたしすごく楽しめています。

この日は閉庁日だったのでもちろん建物の中に入ることはできなかった。まあそれを承知の上で行ったのだが。ロビーをはじめとした建物の中も、家具や壁画などそれはもうこだわりにつまっているというので、また今度は平日に来よう!そして近くのさか枝うどんにも行こう。

この目で実際に見て、自分の足で床の上に立って、空間ごと建物を感じることができて良かった。たくさんの人が精魂こめて丁寧に作り上げた作品…
早起きして時間作って行って良かったね。
インドアな私を外へ連れ出してくれる、建築探訪っていう趣味はやはり最高かもしれない。

うどん❸こだわり麺や 高松店

朝ごはんを食べずに歩き、元気にはしゃいだのでお腹が空いてしゃーない。もう一番最初に目についた営業中のうどん屋に入っちゃお。休日でも朝からうどん屋が開いてるんだ。
こだわり麺や 高松店。

はらぺこだったので写真撮り忘れちゃった。つるつる喉に入っていくものだからあっという間に食べてしまった。食い気を前にするとにんげんは無力。
このお店はうどん県内とマレーシアに複数店舗を展開するうどんチェーン店らしい。マレーシア!?
周りに居たのはいかにも地元の人って感じかな。
観光客が集う有名店もあるし、こうやって気軽に入れる大衆向けチェーン店もあって、ほんとに色々なタイプのうどん屋さんがあるんだね。


イサム・ノグチ庭園美術館

再び瓦町駅に戻り、ことでんに乗って次の目的地へ向かう。

かわいいね

7、8駅ほど乗り八栗駅というところで降車。
ここからはタクシーで移動する。
炎天下でなければ歩いて行けたかも、ぐらいの距離かな。
このあたりの牟礼(むれ)は庵治石が採れる場所だ。
県庁でも出てきた庵治石がまたここで出てくる。まさにこのあたりの山から切り出したんだね…
道中、石材屋があちこちに並び、石がそこらに山積みになっていたりしてなんとも独特な雰囲気が漂っている。


まず超簡単にこの美術館の概要と、私がこの日のために読んできた本の紹介。

彫刻家、イサム・ノグチがアトリエを構えた土地のひとつ、牟礼。彼は晩年の20年あまりニューヨークと牟礼を行き来しながら制作を行った。
この牟礼にある庭園美術館では、アトリエに置かれたたくさんの石彫と、イサムが暮らした家などを見学できる。

開館日は火・木・土で、10時〜、13時〜、15時〜の一日3回、ガイドさんがついて園内を1時間程度見学する。
今回私が参加したのは10時の回。
今でこそメールやFAXでの予約が可能だが数年前までは往復はがきでのみ受付を行っていた。
ちなみに館内(庭園内)はほぼ撮影禁止で、ガイドさんのOKが出た場所でのみ撮影が許される。
そんな感じなので色々と謎に包まれている部分もあり、訪れた人のブログなどを読んで少ない写真から色々と想像を膨らませていた。
あれこれ読んでいるとイサムノグチのことをもっと詳しく知りたくなったので、来訪前にこちらを読みました。

上下巻で読み応えたっぷりにもかかわらず、ずっと面白く読んでいられた。美術に詳しくない私が読んでも面白かった。
イサムノグチの激動の人生が、イサムノグチをはじめとした数々の言葉の引用や著者の解釈も加えつつ綴られている。
印象的な言葉にたくさんあったな。
これだけの文章を書き上げ、本にまとめる。想像できないくらいとんでもない取材量だと思う…
著者のイサムノグチへの尊敬の念が伝わってきた。単に話として面白いが、これがひとりの人間が生きた軌跡なのだからすごい。

訪れた後に改めて思い返すと、この本を読んで知識を深めてから行ってすごく良かったなと思う。おかげで色々なことを考えるきっかけになった。
何の前知識も入れずに、ただ自分の中に元来からある感性でまっすぐに作品と向き合うこともひとつの鑑賞方法だと思うし、実際そうすることもあるけれど。
まあ作品の受け取り方はその人それぞれ、その時それぞれで良いのだと思う。

だいぶ寄り道しちゃったけど本題に入ります。

えーっと、美術館に着いたところからだったね。
受付の建物で10時まで待機。石を叩く音がどこからともなく聞こえてくる。このあたりでは日常にありふれた音なんだ。
外は日が照りつけている。今からこの外に出るのか…庭園美術館というくらいなので見学はほぼ屋外。

まずアトリエ内に並べられた彫刻を見て回る。
配置にも彼のこだわりがあるようだ。
地面の砂が綺麗にならされていて美しい。
石を掘ったり削ったり磨いたり、割れた断面をそのまま像に残していたり、石の色々な表情がみられる。
彼が作品づくりに用いた道具もそのまま並べられている。へえ、こういうのを用いて、ひとつひとつ...ひたすらに彫り出していったのか...と作品に残された無数のノミの跡を見て思いを馳せる。
アトリエの中にいると、ついさっきまでそこにイサムが居たかのような、そんな風に錯覚してしまった。

作品には世界各地の石が使用されている。この牟礼は庵治石の産地だけれど、この庭園美術館の作品の中で庵治石を使った作品はそれほど多くないそう。
石以上に牟礼の土地、そしてそこに住む石工をはじめとした人間たちを気に入ったのかな。


順路があるわけでもないので、好きな作品の前で30分ずっと過ごしてもいいし、あちらこちらに並ぶ作品一つ一つに注目して周ってもいい。
作品名も作品の説明もそこにはない。
写真で見るのと、実物を見るのはまた違う。360°から立体的に自由に見ることで、角度によって表情を変える作品があったり、知らなかった凹凸やねじれが発見できたり、素材の質感、サイズ感、醸し出すオーラ、温度感を感じ取ることができる。

蔵の中に置かれた作品もあるが、屋外に置かれた彫刻たちを見ていて思ったことがある。
屋内の美術館で温度や湿度など管理され一定の光源の下で作品を鑑賞することはもちろんひとつの作品を味わう方法だけど(劣化を防ぎ完成品を完成品のまま長く保存するということも)、こうして外で陽を受け、その時間帯によって天気によって表情を変える彫刻っていうのもすごくいいなと思った。
今回は真夏の日差しが真上から降り注いでいる中での鑑賞だったけど、今度は陽が傾いてきた時間にも見てみたいな。きっとまた違う発見があるんじゃないか。

なんだかもう既にここだけで彼がのこした作品、そこに息づいた精神みたいなものに圧倒されていた。

後半はイサムが牟礼にいる間に住んでいた家と、その裏にある彼が整備した築山ほどの山を見学。この山全体が作品なのだ。
お家が素敵だったな...中に直接入れる訳ではなく、戸口や窓から覗き見る感じだったけど、お庭も家の中も、そこに置いてある作品がなんとも最高で、ほの暗い部屋の中に置かれているほんのり明るい「AKARI」(岐阜提灯から生まれたイサムノグチの照明作品シリーズ)も良かった。ここでの彼の過ごし方をあれこれ想像してしまった。
私の家にもひとつAKARIが置いてある。どんな部屋においても光の彫刻としてあたたかい光で満たしてくれる。
サカナクション山口一郎さんもたくさんお持ちで、そのコレクションは圧巻なので是非見てほしい。あかりだけじゃなく家具も。

家の裏山には立ち入って上ることができ、頂上にはひとつ卵形の石の作品が置かれていて、ガイドさんからこの作品には手を触れてもいいですよ、と説明を受ける。
石は硬くひんやりしているけれど柔らかく、どこか温かみも感じる。
その作品は穏やかに牟礼のまちと、石と、瀬戸内の海を見ている気がした。

1時間どっぷりとイサムノグチに触れ、もうありがとう、ありがとうございます。来られてよかった、自分の目で見ることができて良かった…という充実感にあふれていた。

ここは撮影可。石垣の中はアトリエ、後ろには五剣山


このパート最後に、せっかくなので私がイサムノグチと石を好きな理由についても書いておきたい。


札幌にイサムノグチがデザインしたモエレ沼公園がある。元々ゴミの埋立地だった公園全体を、ゴミの上の大地まるごと彫刻する、アートで再生するというすごいプロジェクトだ。
元々私の母が彼の作品のファンだったこともあり、私はそのモエレ沼に子供の頃よく遊びに連れて行ってもらった。
彼がデザインした公園で日が暮れるまで駆け回り遊び呆けていたわけだが、もちろん私はその当時、これがイサムノグチの彫刻で、これは何を表していて…とか知るはずがない。けれどモエレ沼は思い出の場所だった。
その後は特に彫刻や絵画など美術に対し強い興味を示すこともなく成長したが、ある時からふと、建築や家具などに好きだなぁと思う機会が多くなった。
彼がデザインした照明器具「AKARI」やコーヒーテーブルなんかを見ているうちに、あれ、このイサムノグチって私がさんざん遊んだモエレ沼の人では!?...ここがきっかけで彼の半生や数々の作品を辿っていった。
彼は様々な素材を彫刻に用いたが、その中でも特に石に関しては、

『自然石と向き合っていると、石が話をはじめるのですよ。その声が聞こえたら、ちょっとだけ手助けしてあげるんです』

こういった言葉を残していて、私はこの考え方、向き合い方にとても感銘を受けた。
こんなにも石(自然)に対し、やさしさと愛と尊敬の念を持って接した人がいるだろうか。

私は子どもの頃から、外に出ると下ばかり見てお気に入りの石を探しているような子だった。
「お気に入りのキャラクター」「お気に入りのぬいぐるみ」「お気に入りの歌」このへんと同列に「お気に入りの石」が位置しているくらいには好きだった。
綺麗なお菓子の缶が空になった後、ぎっちりお気に入りの石を詰め、手にとって眺めるのが好きだった。

私は石に触れているとき、その石が今ここに至るまでの途方もない時間と歴史を強く感じる。きみはどんな旅をしてここにやってきたのかな。
石は私がこの世に生まれるずっと前から、ひいてはヒトが誕生するずっとずっと前から存在しているのだ。あらゆる変化の中で石自身も姿かたちを変え、そして今、私の手の中に静かに収まっている。石はまさに手の中の宇宙だと思う。
基本的に石は冷たくて硬いけど、それまでの年月の重みの分だけ、どこか温かさや穏やかさを感じてしまう。

石について書いていて、あまりにも手が止まらないものだから、自分がこんなにも石のことを好きだったんだってちょっと驚いている。
今、猛烈に地学を勉強したい欲が高まっている。好きなものをもっと深く知りたい。
高校の理科選択では地学をとれなかったけど、大人になった今はもう自由。受験でどうのこうのとか言う大人はもういない。やろうと思えば何でもできるんだよ。



うどん❹ざいごうどん 本家 わら家

美術館を出ると時刻は昼前。これが今回香川最後のご飯になりそう。ならうどんだね!またタクシー乗ってお店まで行っちゃお。

ざいごうどん 本家 わら家
限定品だという鱧(ハモ)の天ぷら。おいしすぐる君…

ちょっとこれはもう、あまりにも美味しすぎた。衝撃。天ぷら部門、間違いなく優勝。

この時汗だくだったので釜揚げはつらく、ざるにした。冷たいこっしこしのうどんが最高だ。おいし〜元気でる!つやんつやんできれいだね。

ここはレジで注文と会計をし、席に案内され座って待っていると、店員さんがうどんを運んできてくれるスタイルだった。

屋島神社と裏ミッション

讃岐東照宮 屋島神社 葵の紋だね

うどん屋から出てすぐに神社があったので行ってみる。
行くというか行かざるをえなかった。
この旅行中、途中から私の中で、石段を見つけた場合必ず上らなくてはならないという謎の裏ミッションが発生していたので…
こうして旅行にゲーム性を見出すと、行動が限定されないし思わぬ出会いがあったり予期せぬ方向に進んだりするので楽しい。帰れマンデーぐらいハードなのはキツイけど。

上ったかいあっていい景色、山々が綺麗だね

石段が2段構えになっていたので思ったより辛かったけど頑張ったよ。
お参りし、御朱印をいただいて下りる。

このあたりの屋島は源平合戦の舞台となった場所らしく、数々の観光スポットの案内が出ていた。
なるほどね、ここで戦ったんだ...那須与一の扇の的もこのへん!?

この後は、再びことでんに乗って瓦町まで戻り、ホテルで荷物を回収、香川のお土産をちょっと買って、高知を目指す。
約27時間の香川滞在でうどんを4回食べた。まだまだ行ってみたいところがたくさんあるし、食べたいうどんもたくさんある。島にも行ってみたい!し、もう一回行きたい場所もできた。また来させて〜!


高知へ 〜鰹を食らう〜

高松駅から丸亀駅で乗り換え、特急「南風」で高知まで向かう。
ちなみに南風は岡山から出ているよ。
アンパンマン列車だった。(やなせたかし先生は高知県出身)

琴平駅を通る。ほ〜ここが、男子剣道部と女子薙刀部が熱い勝負を繰り広げるという異種武道大会を開いている琴平高校か〜〜
今度はこんぴらさんも行きたい。足腰鍛えておきます。頂上まで行くのに千段以上上るからね。

この先は四国山地を越えていく。

吉野川が流れる景勝地 大歩危・小歩危のあたり

ここを過ぎると高知県だ。

スマソスマソ!わからないんだけどなぜ阪神?

※高知県安芸市が阪神のキャンプ地になっているらしい。

土佐くろしお鉄道の「ごめん・なはり線(後免・奈半利)」ってすごい名前じゃないですか?口に出して唱えたくなる。地名って面白いね。

アンパンマン列車(赤)

2時間くらいで高知駅に到着。まじで高知に来ちゃったじゃん〜〜!!

この木を見ると南にやってきた感ある

なんだかんだしていると18時。
もうはらぺこだ〜鰹食べよ〜かつおかつお!そんな深酒するつもりはないけどちょっと飲んじゃおうかな、あとお土産も色々見たいな、もう高知は帰るだけなのでこの先荷物になること気にしなくていいし、いろいろ予習もしてきたし。
予習というのはこれ!かつて旅行に対してこんなに本気だったことがあるか。

とさのさと、というなんか色々いい感じの複合施設に来た。
ショップが19時までだったのでとりあえず買い物を済ませる。
鰹節と、のり、鰹のダシ醤油、柚子酢、柚子胡椒、ぬた、日本酒、四万十栗のお菓子など。たのし〜!

カツオ定食 またしてもおいしすぐる君…

あたしもう、本場で鰹食べちゃったのでもうそんじょそこらの鰹のタタキとか食べられなくなっちゃうかも、ってぐらい美味しかったな〜
マジの旬の選び抜かれた鰹はそれはもうもっともっと、とんでもなく美味しいらしいが。
鰹を塩で食べるって初めての経験だった。おいしい!
あとこれ、生のにんにくスライスが添えてあるのも高知では定番みたい。生のにんにく初めて食べたけど、ちょっと辛くておとなの味だった。
ねぎものりもたっぷりで、鰹に負けじと薬味が山盛りになっている。

完食した後は「久礼」という日本酒を飲んで上機嫌になり、酔い覚ましで近くにあった蔦屋書店の中をお散歩してからホテルに戻った。

この日も朝からたくさん活動したのでそれはもうぎゅんっぎゅん寝た。いい日だ、最高の一日だ...

4日目は丸一日高知の日。今回の高知は朝ドラらんまん植物旅にする予定だったので、桂浜の後、牧野植物園、その隣の竹林寺へ行き、佐川町へ移動、仁淀川を眺めるなどする。

追記:続きはこちらから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?